筒井清忠の『戦前日本のポピュリズム』中公新書を昨晩やっと読み終えた。但し一旦読み終えたのである。かれこれ買ってから一年以上かかってしまった。
彼の本は二冊目だが、前に『昭和期日本の構造』講談社学術文庫を読んだ。彼は日米戦争の原因を陸軍官僚制の軍内結社に焦点をあてていた。私はほぼ10年前にこの本と出逢いかなり読み込んだが、結果は彼の云う「軍内結社による軍部暴走説」は、実社会を知らない、組織の人事のルールを知らない学者の仮説として退けたのである。
今度の彼の本は、前の本から約20年余経っているが、戦争は「ポピュリズム」だと言いたいらしい。
近代の戦争は、政治や軍政だけでなく、それを支える民衆、そして、民衆の動きを左右するマス・メディアの存在があることは自明であるが、彼の論考は、読んでいると、いくつかの個所に原典との相違や意識的な曲解に気付いてしまう。そこで、読書が止まってしまうのである。
しかし、彼の些か皮肉な、または別角度からの見方にも魅せられることがある。だから、読むのを止めたり、又読んでみたりで、結局、読み終わるのに一年もかかってしまったのだ。
これからも、付箋の個所を吟味していくのがまた次の楽しみである。一粒で二度美味しい本になるのか、何度もおいしい本になるのか、再読に期待している。