玄冬時代

日常の中で思いつくことを気の向くままに書いてみました。

市井の近現代史(5)

2023-05-29 14:53:33 | 近現代史

―敗けることが解っている戦争をなぜやったのか?―

元明治大学教授の入江隆則は「負けることが確実に予想される場合でも、政治的判断として戦わねばならないことがある。ナポレオン戦争と第二次世界大戦は似ている。フランス革命が欧州の伝統を破壊したように、日本が撒いた種子はアジアを西洋の植民地から解放した。」と言う。彼の言う、「政治的判断」「日本が蒔いた種子」という二つの言葉な頭に残る。

「日本が蒔いた種子」と言うのは、手前勝手な詭弁としか思えない。せいぜい反射的な利益としか見れない。実際に日本が占領したアジアの国々に具体に何をしたのか、2000万人の命が失われたことにふれていない。入江は本来は比較文学・文化の専攻の学者なので、歴史史料の見方が違うような気がする。

「政治的な判断」と言うのは、概念が広すぎてよく解らないが、当時の天皇側近の政治家は日米開戦をどう振り返ったのであろうか。

木戸幸一内大臣は、「開戦前の日本は世界の五大国に列し、又三大海軍国の一つであった。それが…ハル・ノートを突きつけられ、これを受け入れたら日本はいったいどのようになったであろうか。」と言う。

東郷茂徳外相は「ハル・ノートを受諾すれば、…一国の名誉も権威も忘れた考え方である」と言った。

【参考文献:入江隆則『敗者の戦後』中公叢書、木戸幸一『木戸日記・東京裁判期』東大出版会、東郷茂徳『時代の一面』中公文庫】

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