“ 初恋の 少女少年 金木犀 ” 甲田夏湖
季節の移ろいに合わせた香りは色々あるが、深まりゆく秋を象徴するのにこれ以上の香りはない。
それが金木犀という、あの金色をした小さな花であろう。
茂った葉の陰にひっそりと咲き始める。よく見ないとどれが花かわかりにくいほど小さいのに、その香りは天下一品。遠くからでもその存在を感じさせてくれる。
秋深しを鼻で感じさせる金木犀。その芳香を思いっきり振りまき、目に見えないところで人々の関心を惹きつける。
そのあとであの小さな花が集団をなして姿を表わし、木全体が金色に包まれる。今度は人の目を奪う。
咲き始めは先ず匂いで関心を集め、次いで花のあでやかさで注目を集める。なかなかやり手の花である。
幼くして芳香を放ち、時を経てその姿を世にアピールする。
そのような、ある意味理想とする生き方のように思える金木犀に、自らの来し方を重ねてみる。
遠く及ばないことを改めて知る。ならばどうする?どうもしない!このままでいい!と開き直る。
そうはいっても何か自分との共通点はないか探っていると花言葉を見つけた。
「謙遜」 「真実」 「陶酔」 「初恋」 とある。
オー、当たっている!という部分もある。はずれ!の部分もある。
そこで持ち合わせの薄いセンスで金木犀を一句。
“ 長旅の 一里塚なる 金木犀 ” お粗末!!
秋二つ、ここにも小さい秋を見つけた。