
灼熱の炎天下で、秋野菜用の畝立てをしているとふと、視野にカマキリの姿。

「蟷螂の斧」である、腕を振りかざし威嚇している。
いやいや、ご苦労なことだ。どうして、こんなに暑い灼熱の土の上で突っ張るのだ。
額の汗をぬぐいつつ、思わず我が姿に重ねて思いを巡らせてしまう。
若い時から、ちっぽけな正義感を振りかざして生きてきたけれど、私のそれも「蟷螂の斧」だったのか。

カメラを向けると顔を回して睨みつける。

位置を変えてもなおも顔を回して睨む。
いやはやご苦労な事と、つまんで草むらに投げると、途端に羽を伸ばして飛び立つ。

でも、なんと再び草むらから飛び立って再び灼熱の畑の土の上。
前方に小柄なカマキリがもう一匹。お、お前は大柄だから、雌であり繁殖相手の雄を探していたのか。
ゆさゆさと身体をゆすり、威嚇するように歩く姿に再びわが身を重ねてしまう。
私も知らず知らずのうちに、周囲を威嚇するような生き方をして来てはいなかっただろうか。
カマキリの雌は案に相違して、雄を無視して反対側の草むらに取り着いた。
なんだか彼女の意思、思惑は私の想像するものとは遥かに違ったようだった。
でもな、カマキリよ肩肘張った生き方は、もう止めようよ。
他人は他人、自分は自分だよ。自分自身の終息、終焉のために力を抜いて歩こうじゃないか。