千鳥破風(その3終わり)
囲炉裏の周りに敷いたムシロを剥ぐと下は板張りで、板を外すとそこはさつま芋などを格納する穴倉になっている。
土を掘っただけの貧相な穴ではあるけれど、囲炉裏の温度が幸いし、さつま芋は腐ることも無く、保存できるのだ。
ただし、その地下の穴倉も体積は小さく、そこに仕舞ったさつま芋が無くなると、
山の中腹に掘った「芋穴」までカンジキを履いて出かけ、叺に入ったさつま芋を背負ってきて、地下の穴に入れる。
一冬に何回かそんな仕事を繰り返していると春になるのだが、地下の穴倉には餌を求めた鼠が入り込み悩みの種。
そのために「パッチン」と呼ばれた、バネの力で鼠を捕まえる仕掛けが入れられていた。
家族団らんを楽しんでいるうちに、お尻の下で「バッチーン」と大きな音がすると、一匹捕獲と言う事になる。
吹雪の下でもそんな貧しい暮らしながらも、寒さに耐えながら春を待っていたのだった。
(終わり)