畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

連載195「友人の消息」(その3)

2019-05-20 05:00:55 | 暮らし

 (50年前は学校の周りは水田がほとんど。今は水田など影さえ見えない)

       友人の消息(その3)

 通学途中にある普通高校の文化祭があると、従妹から聞き、途中下車をして見物に行った事が有る。

その時、廊下ですれ違いざまに、いきなり殴りかかられ友達は唇を切ってしまった。

あまりにも突然の事で、反撃するタイミングも無く、殴った男には逃げられてしまった。

二人でその高校を出たけれど、腹の虫がおさまらず、市内を探し回ったが、見つける糸口さえ無かった。


 そんな小さな事件なども経験しつつ、彼は無事に卒業し、私も低空飛行ながら留年することも無く一緒に卒業。

私は無難な職場と思った国鉄に職を求め、彼はその後の進学なども考えたのか、東京に職場を求めた。

その会社は旧日本海軍の出身者が創立メンバーだと言う事も彼らしい選択だと思ったのだが。


 彼に誘われて何回も上京した。

銀座の歩行者天国が始まったころで、二人で見物に出かけ、地上の喧騒を避けて地下の、ライオン堂ビアホールに、

逃げ込んで、その地上の世界とは全く違う静寂な世界に驚いたなどと言う事も鮮明に思い出される。 


 その頃、五反田で居酒屋を経営していた叔母がいて、彼に話をするとすぐに探し当て常連になっていた。

ある時、上京し、夜になって飲みに出かけることになった。

居酒屋の暖簾をくぐる前に、彼は私に自分の眼鏡をはずして掛けさせ、私は不審に思いつつ暖簾を共にくぐる。

「あらっ、〇〇!」と叫ばれたが、その時はすでに彼の悪戯に気付き、わざと返事はしなかった。


 「すみません、あまりに田舎の甥に似ていたもので」なんて謝る叔母。

そこで、やおら眼鏡をはずし名乗ってみんなで大笑いしたものだ。

         (続く)

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