千鳥破風(その2)
その奥が板張りの台所で私の記憶が残っている中で、釣瓶井戸から打ち込みの鉄管が打ち込まれ、
手もみのポンプが取り付けられた。
その鉄管を打ち込むのに天井を破って櫓を組み「もんけん」と呼ばれる鉄製の重りを、
綱で上下して打ち込んでいた事を覚えている。台所は風呂場も兼ねていて、片隅に風呂桶が据えられていた。
さて、厩を過ぎると左手に一部障子の引戸が有り開けると居間だ。
入ってすぐ右は「火焚き尻」と呼ばれる背丈の低い板で囲まれて、当座の焚き物薪を入れておく設備で、
薪が無くなると厩から持ち込むことになる。
さてその「火焚き尻」に続いてあるのが、「囲炉裏」だ。囲炉裏は家族の集いの場で赤々と火が燃えている。
時には「かぎ付け」に鍋が吊り下げられ、煮物などが煮立っている。
囲炉裏の脇には灰の中に「火渡し」と呼ばれる弓上の金具などがあり、餅を焼く際には出番となる。
囲炉裏の脇には「火つぼ」と呼ばれる黒い水を張った甕があり、燃え残った薪は、
赤々としているうちに火箸で掴んで水に浸す。
ジューっと音がして水蒸気が立ち上り、簡便な炭が出来上がるのだった。
(続く)