夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

多島斗志之著「不思議島」創元推理文庫

2006-06-20 13:42:36 | 本と雑誌

少女の頃 誘拐され島に置き去りにされた娘は 生まれ育った島の中学で数学を教えている 彼女は島へ戻るフェリーの中で 声をかけられる 里見は島へ来た医者で 彼女の祖母を診てくれたことがあったのだ 遠い昔 霧を抜けた船は 鏡の国へ渡るように 確かに通り抜けた筈の景色の中へ戻っていたという

過去に何があったのか 誘拐事件の犯人は 彼女の身内がしたこと―という噂もあったらしい

浮かび上がった真実は 彼女を逆上させた

しんどさが読後に残ります

下世話に言えば ある登場人物へ そんな目的があるなら 手をだすんじゃねぇ!

いま一人には ところかまわず許すものじゃないでしょう(笑)と 男と女の生臭い部分 それは作品に必要であっただろうか

そんなものは かえって不要 邪魔で 不快に思ったのでした

誰も幸福になれず 意味なく終わります


山本周五郎著「寝ぼけ署長」新潮文庫

2006-06-20 08:01:47 | 本と雑誌

博識 溢れる正義感 法を越えた暖かさ 優しさ 心の広さ 本当の強さ 五道三省は 風采の上がらぬ 寝てばかりいる警察署長であったが 上に媚びず 弱い位置にある人間を庇い 必要以上の犯罪者を 作らない

十の連作短編には いずれも 手柄など考えぬ 人の幸福に重きをおく その為なら いっぷう変わった しかし断固とした手段もとるのだ 「中央銀行三十万円紛失事件」行方不明の金か犯人か?選択させる署長 さてさて その理由とは

「海南氏恐喝事件」殺人を防ぎ 恋人達を護る署長の体をはった活躍

「一粒の真珠」誰が首飾りを盗んだのか? 主人の恋の為 責められても 口を閉ざす健気な娘 人を犠牲にさたままはいけない 驕りを指摘するのだ

「新生座事件」恐ろしい事が―手紙を出した おみつ の 正体は? 気付かぬフりしてみせる署長だけれど

「眼の中の砂」貧乏長屋を取り壊し 我欲の為なら何をしても平気な男 犠牲にされた人間達の為 署長は大胆なテを使う

「夜毎十二時」毒を入れにくる人間がいる

そう言った人間が殺されたらしい 胸に秘めし恋情を見抜く慧眼

「毛骨屋親分」搾取し乱暴な 土地の親分

弱い人間の生きる権利を守るべく 署長は非常手段を

「十日十指」畑のものを盗んだ そう責められ 悪い評判たてられる夫婦

実際は・・・

「我が歌終る」ドリアン・グレイの肖像を小道具に 悲恋が浮かび上がる

その死は他殺か 自殺なのか

「最後の挨拶」行方不明の男は 殺された?! 楽しい暗号も出てきます 署長の人柄が よく出た話でもあります