夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

伊坂幸太郎著「終末のフール」集英社

2006-06-21 17:03:39 | 本と雑誌

おそらくは小惑星が衝突し みんな死んじゃう―そんな世界を 舞台にした連作短編集

表題作「終末のフール」では 成績の良い妹と比較し いつも「馬鹿」と言い ついには―失敗作―そう言ってしまった長男が自殺し 馬鹿っていう人間が馬鹿なんだから

そう怒った娘は出ていった その娘が あと数年で世界が滅亡する 今になって 会いに来るのだと 妻が言う

「太陽のシール」子供はできない―と思っていたら 妻が妊娠 地球が滅ぶ三年前になって 産むべきや否や 優柔不断が得意な男は悩む その時にならなきゃ 本当に世界が滅ぶか どうか判らないし・・・ね

「籠城のビール」兄弟の妹は事件の人質とされ 解放後は マスコミにつきまとわれ 悪意にみちた捕らえ方 記事 テレビでの揶揄

それらに疲れ果て 死んだ 妹の死から間もなく兄弟の母も風呂場で自殺

三年後一緒に死なせるなんて 許してたまるか! 兄弟は 引退したアナウンサー杉田に 怒りを向ける 杉田は自宅で家族と豪勢な食事をとるところだった

「冬眠のガール」死んだ父の書斎の本を読破する 目標を達成した美智は スーパーでの会話から 次の目標を ボ―イフレンドを作ることにする

「鋼鉄のウール」 憧れのキックボクサー苗場 小学生だった僕は 苗場のいるジムに通っていたが 地球滅亡パニックや暴動で 五年ほど 来られなかった

少し世間が落ち着き いや諦めたのか やや安全になる

世間が どうあろうとも できることしかできない

やるべきことを やるんだ

「天体のヨール」二十年ぶりに会う二ノ宮 彼は変わらなかった 相変わらず天体が好きで 話し方も同じ 矢部は 妻を殺され その犯人に出会い報復を果たし 死のうとしていた 首吊りのロープが切れて落ちたところに 二ノ宮から電話がかかったのだ

死ぬ前に会ってみるのも 悪くはないだろう・・・

「演劇のオール」役者になり損ね 故郷へ帰れば 地球滅亡のニュース

それぞれ家族が欠けた人間と その代理を 役者を気取って演じてみる

そんなふうに 助け合って 肩寄せ合って 一緒に暮らしてみてもいいじゃない

「深海のポール」レンタルビデオ店の店長 渡辺の父親は 暮らすマンションの屋上に櫓を建てている

小惑星が近付き洪水が来たら 高い所から みんなが死ぬのを見て 最後に死んでやる―などという変わり者

その時がきたら きっとみんな ジタバタするだろう

でも それまでは 生きて いくのだ

あわよくば みんな生き残れるかも しれないじゃないか

前向きに生きるのだ

各短編の人間が それぞれに絡み合い 登場し 明るい明日を 結構夢見ている

くじけちゃいらんないのさ


山本周五郎著「風雲海南記」新潮文庫

2006-06-21 08:49:33 | 本と雑誌

乙貝英三郎は 己の出生を知らぬ

江戸の月心寺に住まう和尚の鉄山に育てられた そこへ預けた男は 今度会う時に その子細を 教えてくれるはずだったが

身許の証しの品が入る箱は 火事で焼け 実の両親について 教えてくれるはずだった男は斬り殺された

英三郎を慕う商家の娘 お通にも魔手が迫る 奇しき因縁か 彼女を救ったのは 悪人右京により 怪しき病気にとりつかれた英三郎の双子の兄であった

藩は右京とその父の企みで お取り潰しになる

英三郎は 父の元家臣達に出会い 自分の出生を知る

藩士達の恨みを晴らし 悪人右京を斬り いっそ海外で 己が運命を切り拓くのだ

しぶとい右京も海外へと逃亡 国を売る策謀を 更に ひと足違いで また日本へ

追う英三郎

そして―

惜しむらくは 最後近く やや展開が とおりいっぺん 雑な気がします

ただ作品を書かれた作者の年齢を思えば

凄い!と感嘆するしかありません

新聞連載 大衆娯楽小説の 約束 型という 書き手にとっての 制約もあったのでしょうし