夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「客暦」-2- 詩音

2013-09-05 21:20:07 | 自作の小説

ちょっと寂しかったバス停前に嬉しいお店ができた

「お茶碗屋さん」女主人なので何故だか入りやすい

朝 少し早めに出てモーニング食べて お昼用のサンドイッチまで作ってもらったりする

持ち帰りランチ回数券を買うと 10枚一綴りで11回目がタダになる

保温容器持参でドリンクサービス

一人暮らしのささやかな楽しみだ

疲れた仕事帰りに寄って夕飯も済ませることがある

日替わり定食が楽しい

気紛れな女主人は 作った料理を何種類か大皿に並べカウンターに置いていることもあり 季節で粕汁や メニューに無い料理が作ってあったりする

ショーケースには様々な食器が並んでいる

たまに気にいったのを買ったりする

休日に女主人が直接選んで仕入れてきた品なのだそうだ

女主人は優しい手触りの心がほっこりするような品が好きなのだと言った

私 私は 何が好きだったのだろう

働いてお給料もらって 毎日生きて

これは私の望んでいた生活なのだろうか

働かなくては生活できない

ちょっと美味しいもの食べて 時々身の回りの品を買って

私は何がしたかったのだろうか

いえ 私に何ができるのだろう

小さな時には大きくなったら当たり前のようにお嫁さんになれるーと思っていた

でも 誰の?

恋をするには相手がいる

臆病な私には見極められない

年ばかり重ねてしまって つまらない女になってしまっているかもしれない

男っ気がないと言えば この女主人もだった

綺麗な人なのに 誰かいるようには見えない

見えないだけでーいるんだろうか 恋人

常連客がかける冗談は適当にかわしているけれど

傘を忘れると雨が降る そんな法則があるようなー気がする

会社を出たら大雨だった

ひどいー

「お茶碗屋さん」へ駆け込んだ

もう下着までぐっしょりだ

女主人は目をまるくした「見事すぎる濡れっぷりね」

それから「予備の下着があるの こっちに来て」と初めてプライベートゾーンに 女主人の住居部分へ案内された

「良かったらお風呂も使って 趣味に合わないでしょうけど 少なくとも乾いているから」

全自動の洗濯機の使い方を簡単に説明し脱いだ服を洗うように勧めてくれる

親切なのだった

「風邪ひいちゃつまらないでしょう」

オレンジの香りの入浴剤が浴槽には入れてあった

気持ちよく温まり 有難くまだ袋に入っている下着を借りる すとんとしたワンピースも新品なのだった

「すみません あつかましく」

「良かったわ 役にたって」

と話したところに 客がいっぱい入ってきた

バスが運行休止になったらしい

一人で女主人は忙しそうだった「私 手伝わせてください」

「有難う!助かるわ そのドアの裏手にエプロンあるから使って 」

おしぼりは ここにーなどと簡単な説明をくれる

もう一人 時々見かける男性も手伝いを申し出た

警報が消えて バスが動き出すまで一時間かかった

客は少しずつ減っていく

「お疲れっさま!」女主人はミックスジュースとこの店で一番高いスペシャル定食を出してくれた

「助かりました 有難うございます お二人 さあ食べてくださいな」

「わあ!いただきます」

「恐縮です」

私と男性客が食べている間に女主人は他のテーブルやカウンターを拭く

ドアを開けて外の雨を確認した

「ああ だいぶ小降りになったわ」

女主人は乾いた服を袋に入れて手渡してくれた「予備に置いている着替えだから気にしないで 使ってもらえばいいから」

返さなくていいと言ってくれるのだった

「これだとバスは多いでしょうから」

手伝ってくれたお礼にと もう一人の男性客と私にタクシーを呼んでくれた

「客暦」-1-店主の独り言


「薄桜記」(1959年 日本映画)

2013-09-05 16:57:45 | 映画

大映作品

監督 森一生

主君の仇の吉良上野介を討ち取る為に雪の中を進む赤穂浪士

その中に堀部安兵衛(勝 新太郎)がいた

彼が まだ中山安兵衛と名乗っていた時代

菅野六郎左衛門の助太刀の為に高田馬場へと急いでいた

役目途中その急ぐ姿を見た丹下典膳(市川雷蔵)は 安兵衛の襷を案じて様子を見に行くが 堀部父娘が 娘の持ち物を襷にと安兵衛に使うよう差し出したあとだった

役目の途中ゆえ関わり合いにはなれないと判断し立ち去る典膳

しかしその姿を同じ知心流の数名の人間が見ていた

その後 数を恃んだ村上らは安兵衛に斬られる

安兵衛の剣はあらっぽいほどの豪快な剣

この時 仇討についての始末で安兵衛は米沢藩の家老千坂兵部の温情に触れる

安兵衛の助太刀は人気を呼び 安兵衛の行くところ 婦女子がついて回る

また安兵衛の通う堀内一刀流は人気を集めるが 討たれた村上が通う知心流の道場は評判が悪くなる

仇討の場にいながら村上を助けることなく立ち去った典膳を典膳の姿を見ていた数名が責める

道場の者達は腕の立つ典膳に 安兵衛を討つよう迫るのだ

しかし典膳は す村上の方が多勢であったこと(たぶん立ち合いの事情と日頃の村上の人間から良くは思っていなかったのではないか)

また自分の姿を見た人間達は最後までいたなら何故村上をおぬしらが助けなかったのだーと言い返す

自分たちの腕では安兵衛を斬れないーと 道場の面々は裏切り者と 典膳を責める

と騒ぎに出てきた年老いた道場主は典膳を破門にする

騒ぎが大きくなり双方の道場に遺恨が残ることを案じたのだ

安兵衛も暫く道場から遠ざかるように諭される

安兵衛のもとには仕官の口も多くきていた

仇討始末で世話になった千坂兵部も長尾竜之進を寄越す

竜之進は美しい妹の千春(真城千都世)を連れていた

千春の面影が胸に焼き付く安兵衛

千春の名前の由来となった場所で 千春は犬の群れに襲われる

安兵衛も助けに入ろうとするが 先に典膳が千春を庇った

そして千春を守る為に「犬」を斬ってしまう

犬公方の綱吉の時代 生き物を殺す人間がいないか巡回があり その巡回の役人が迫っていた

ここは自分に任せろーと典膳を逃がす安兵衛

咄嗟に安兵衛は奉納の謡を

この後 安兵衛に礼を言った千春は名前の由来など話す

それから典膳にも勝てない知心流の連中は安兵衛を斬ろうと大勢で仕掛けてくるが

橋の向こうから歩いてきた典膳が「先ほどの礼に」と かつての同門の一味と戦う

この時の典膳の相手へ負わせた傷がー恨みを買うこととなる

典膳の剣は美しい

戦う典膳を魅入られたように見る安兵衛

千春への憧れから千坂の話を受けるつもりだった安兵衛だが 千春が典膳を思うことを知り諦める

典膳の留守中 女中を抱き込んだ知心流の一味五人は千春を襲った

利用した女中のことは斬る

げすな連中はやることもげすなのだ

典膳にはかなわない その幸せも憎らしい

息絶える前 女中は話し

忠実な使用人から典膳は教えられる

千春を乱暴した連中は 千春が安兵衛と浮気していると噂をたてる

不義の噂を消すために典膳は忠実な使用人とかたらって 狐を殺し その狐が千春の不義の噂の原因だったのだと芝居をうつ

墓まいりのあと 典膳は千春に離縁を言い渡す

彼には決心していることがあったのだ

千春の兄は納得せず 典膳の片腕を斬り落とす

腕と引き換えに千春をと置いてくれと典膳

家老千坂兵部のはからいで療養する典膳

安兵衛はお茶で身を立てる千春と再会する

安兵衛が仕官した浅野家の殿様は吉良上野介に刃傷に及び切腹となった

吉良は茶の湯が好きで千春とつながりがある

知心流の千春を犯した五人は まだ典膳への怨みを忘れていない

卑怯でしつこい粘着気質

片腕となった典膳をつけて斬ろうとするが逆に二人が斬られる

三人目は銃で典膳の足を撃った

千春が典膳を見つけ 医者を呼ぼうとするが

既に典膳を殺すために知心流の残り二人と彼等に味方する赤穂浪士への用心に金で雇われ 志低い食いつめ浪人たちとが飢狼のように 襲いかかろうとしていた

その頃 吉良上野介が屋敷にいる日を知ろうと千春の家を訪ねた安兵衛は ふと千春の行先に思い当たる

尋常な立ち合いを

雪の中を庭へ運ばれる典膳

片腕片足

刃に囲まれ 斬る! 斬る! 斬る!

しかし敵の数は多い

遂に力尽きる

縛めを解き室内から出てきた千春は撃たれる

駆け付けた安兵衛は典膳を囲む男達を斬る

ただただ豪快に

撃たれながらも千春は安兵衛に伝える「年忘れのお茶会は明日14日の晩でございます」

斬り終わった安兵衛が見たものは

ゆっくり雪の上を這って典膳に近づく千春の姿

「あなたー」

千春の手が典膳の手に重なる

とうに典膳の息はない

人妻になっても思い続けた千春は死んだ 死んでしまった

安兵衛は堀部家の娘と祝言をあげる

これから吉良邸へ討ち入りーという場面で映画は終わる

熱い男 安兵衛が胸に秘めた慕情 典膳への友情

流派は違えど剣を学ぶ者として

武士としての生き方

守らなければならないもの

千春と別れるときに典膳が言う「そなたに罪はない 心が許しても 俺の体が許さぬのだ」

意志に反して男達から凌辱された千春

「死んではならぬ 死んでは許さぬ」とも典膳は言うのだった

幸せな頃 千春に渡された女雛を懐にずっと持っていた典膳

男雛を肌身離さず持っていた千春

五味康祐原作の小説を多少脚色して映画化してあります

品格あり 荒んだ浪人姿も上品な市川雷蔵さん

見事な役者さんでした

「お嬢吉三」(1959年 大映)

濡れ髪牡丹(1961年大映)田中徳三監督

「濡れ髪喧嘩旅」(1960年 日本映画)

「濡れ髪牡丹」(1961年 日本映画 大映作品)

「続 次郎長富士」(1960年 日本映画 大映作品)

「沓掛時次郎」(1961年 日本映画 大映作品)

↑以前 このブログに入れた市川雷蔵さんの出演映画の感想です

OCNカフエのサイトが無くなったのは残念

カフエのサイトにも映画や本の感想とか入れていたので