大映作品
監督 三隅研次
当時はまだ週刊新潮に連載されていた柴田錬三郎の小説を原作ーこの場合原型を借りてかなー
シリーズ第二作
監督も第一作と変わって むしろ小説では中期以降の少し明るい眠狂四郎が描かれています
雰囲気としては
出生が悲惨なものでなければ 狂四郎はむしろ明るく闊達な人間に育っていたのかもしれません
言動が素直ではありませんが まがったことは許せず またこの男は妙に人恋しい人間ではないかと原作を読みながら思ったものです
ただ若い時代の狂四郎は優しさを素直に見せることへの罪悪感もあったようです
俺はこんなにひねくれているーと見せずにはいられなかった
たとえばこの映画の冒頭で新年らしい賑わいの境内を人をかき分けて進むカタギではないような女
と狂四郎はその女の後を追っているらしいのです
少しして宙に舞う女の帯 着物 長襦袢 肌襦袢
肌を隠しながら逃げる全裸の女
周囲の人間の会話から女は掏摸で よりにもよって狂四郎の財布を抜き取ったために裸にむかれたのだとわかります
かと思えば武士の子らしき少年が老人に石段を尻押ししましょうかーと
道場主だった父親を道場破りに殺され 住む家も無くなった少年は 通行人の手助けをしてお金を稼いでいるのです
茶屋での会話から少年の事情を知る狂四郎と 少年に尻押ししてもらった老人(加藤嘉)
わざと狂四郎が落とした財布を見つけ 正直に「誰の財布ですか」と大きな声をあげる少年
狂四郎が名乗り出ないので 見かねた老人が少年に教える
少年は財布の中身を確認してから狂四郎に渡し 財布を拾った礼は受け取らない
父親の姿が見たくはないかーと声をかける狂四郎
老人を立会人として少年の父親から道場を奪った榊原に 少年の死んだ父親の流派で勝つ
老人が見れば榊原は「こと切れておる」
少年は道場の看板を外し喜び 狂四郎に剣を教えてくれと頼むが 所詮は人を殺すためのーと断られる
ただ住むところができただけだと言い捨てる狂四郎
これからどう生きるかは少年の問題なのだった
老人は役人を呼びあとの始末をつける
狂四郎と酒を飲み 店を出たあと刺客に襲われる老人 狂四郎が出ると相手は逃げていく
老人は勘定奉行の朝比奈伊織
仕事一筋だったせいか家族もいない そして将軍の娘の化粧代を拒否したことで恨みをかったらしいのだ
美貌が評判の高姫(久保菜穂子)は堀家に嫁ぐも夫が死んで未亡人
淫蕩な性格で男漁りもしているらしい
若侍が高姫の部屋で仕官をとせがんでいる
狂四郎をつけているらしい女がいる 名を采女(藤村志保)
彼女の夫はキリスト教を布教にて捕えられた異国人
仕事をしたら夫を自由にしてやると白鳥に言われていた
白鳥主膳(須賀不二男)は高姫にとりいっている
ああ 一言言ってもいいかな(笑)
白鳥さんはね~原作ではー眠狂四郎の黒羽二重に対してさ
白なの衣装が そしてね~美男なんですってば
こういう水戸黄門での悪代官みたくなキャラでは原作ではないのですよ
何故に役名が白鳥主膳
ああ間違っている~~~~~
この映画の白鳥ときたら商人とも結託してるし まんま悪代官ではないですか
将軍の姫にとりいってるし
対して朝比奈さんは
「今直ちに大手術を行わねば武家の社会は崩壊してしまう」と熱弁奮う朝比奈さんなのですがー白鳥の息がかかっているのか他の閣僚の反応は思わしくない
まだ高姫への二万両の化粧代をつっぱねたのは良くないーなんて言われてるし
孤軍奮闘です
狙われている朝比奈さんを守ろうと一緒に歩く狂四郎に「儂について歩くな」
狂四郎「今 ついて歩いているのは あんたの方だ」
と背後から斬りかかってくる侍
と相手はあの道場主の榊原の弟で狙ったのは狂四郎
「相手は俺か」って表情がのんきで笑いを誘います
で そこへ高姫様の行列が
榊原弟の槍を取り上げた狂四郎 橋の下から籠の中にいる鷹姫の膝の間へ槍を突き刺します
この場面も狂四郎のあとをつけている采女が見ています
采女の事情が明かされていないので 謎の女な風情です
怒る高姫(当然です!笑)
すかさず白鳥 朝比奈と狂四郎をやっつけるいい機会と高姫に言いこみます
さて二八そばの屋台を出している父親持つ娘つや(高田美和ー高田浩吉さんの娘さん)は狂四朗へ食事を運んだりもしています
で狂四郎が人を斬ったあとは顔が怖いから分かるとか
なんとか言いつつ この無垢な娘は狂四郎にひかれているようでもあります
こういう女性は一番厄介なのですが
自分が正しいと信じてまっすぐ
まっすぐで純粋で正しいことが 生きていくうえで正しいとは限らないのですが
つやに狂四郎は答えます「斬られにいくところさ」
采女の誘いに乗ったふりで夜道を行く狂四郎
集められた五人の刺客の中には 仕官をと高姫にせがんでいた若侍もいます
また狂四郎を仇と狙う榊原弟も
狂四郎ことを「こいつと真剣に立ち会ってみたいーそんな気を起させる奴だ」
また円月殺法についても話題になっています
円を描き終るまで斬りこむのを待てばいいのだ そうすれば円月殺法など破れる
一斉に襲い掛かればいいではないか
それは卑怯
また仲間割れのような会話もあり 刺客ながら彼らの心は一つではありません
むしろバラバラです
そこへ采女が狂四郎の姿を見失った さっきまでいたのにーと駆けてきます
騒ぐ六人へ聞こえてきたのは狂四郎の声「俺は話し合いをしにきたのだ」
ー老人の命を奪って何になる 手を引け
お前たち縁もない老人の命を奪うとは何事だー
もちろん刺客たちは説得になど応じません「斬る!」と答えます
再び狂四郎ーよおし決まった 朝比奈は俺が斬らせん
朝比奈という老人は少なくともお前たちより生きている値打ちのある人間だー
夜の中 狂四郎の声ばかりが響きます
日と場所が変わり采女が狂四郎に茶をたてています
「女の一念を貫いてみせましょう
あなたが敵でなかったら
味方であったならー」
何故 白鳥の味方をするーと問う狂四郎に采女は事情を話します
采女の夫の名前を聞き 狂四郎はその人間が捕えられ歩いているところに遭遇したことを思い出します
「不幸な 孤独で苦しい顔 神の手ですくわねばなりません」その為に自分は日本へ来たーと役人に連れていかれる異人は言ったのです
采女も同じ言葉を繰り返し 狂四郎に異人の血が流れてはいないかーと言いかけ
狂四郎に言葉を遮られます
「今後 朝比奈に手を出したら斬るぞ」言い置いて立とうとした狂四郎の体がゆらぎます
采女が薬を盛っていたのでした
狂四郎が気付くと高姫がいます
後ろ手に縛られ座している狂四郎へ高姫は言いました「今宵はわたしの思いのまま」
将軍の子供というのは50人もあるそうだ お前は何番目だーと抱き付いてきた高姫に言い放つ狂四郎
したい放題に育った女 鏡にうつしてみろ 醜いぞーなどとも
たまりかねて高姫の寝所の隣に隠れていた 仕官願う若侍が出てきて 狂四郎を手裏剣で襲います
狂四郎「妬けるか色子」
縛られた両手で手裏剣を受け止め 若侍を逆襲 殺す狂四郎
斬りかかってきた高姫を人質に死地を脱します
その後 狂四郎は朝比奈に事と次第を教えました
「しかし貴公 儂の為に敵を作ってしまった」
狂四郎「あまり出歩かんでくれ」
「儂はお前という人間が面白うなってきたのだ 知りたい お前という男」
と今度は朝比奈が狂四郎のあとをついて回ります
お役目第一 家族もいない
狂四郎が甥っ子あたりに思えたのかもしれません
朝比奈も孤独な男なのです
勝手に守ってくれる狂四郎の存在は ひどく嬉しかったのでしょう
狂四郎はどんな男なのだろうか どこで寝て何を食べて
「酔狂な」と狂四郎
しかし朝比奈が自分のあとをついて歩くことを許しています
孤独な男が 二人
夜になっても歩いています
冬のこと 朝比奈がくしゃみをしました
馴染みの二八そばの屋台へ狂四郎行きます
(じいさんに風邪ひかせちゃいかんーと思ったのでしょうね)
並んで座れば つやがいます
朝比奈の問いに景気はよくないーと答える店の主人
自慢の手打ちそばだから美味しいのだーと言うつや
外へ客の呼び込みに出たつやが悲鳴を上げます
狂四郎が出てくると 榊原弟がいました
つやに目を瞑っているように言う狂四郎
降り積もった雪の中 勝つのはもちろん狂四郎
狂四郎の住まいに泊まったのか朝比奈が つやに運んでもらった朝ごはんの味噌汁が美味しかったと礼を言っています
つやの姉が遊女であったこと
葬儀の金がない人間は寺に投げ込まれて 穴に捨てられる
つやの姉は病気になった母親の薬代の為に身を売った
好きな男もいたのに
そして病気の母は助からなかった
天真爛漫に見えるつやにjも哀しい事情があることを朝比奈は知ります
昨日 狂四郎に斬られた侍もかわいそうだと つやは言うのでした
「人の世は所詮殺し合いだ」と狂四郎
湯屋で狂四郎が湯船に浸かっていると 入浴中なら丸腰だし~~~と襲ってくる刺客さん
しかし湯船に手を入れた狂四郎が何故かにやりと笑います
斬りかかる刺客さん 狂四郎の手には刀が!
ー主役に喧嘩うっちゃいけませんてば(笑)
刺客を手引きしたのも狂四郎をつけている采女でしたが この絶体絶命の情況を自ら作っておきながら
最後の最後に采女は女湯の湯船から狂四郎に刀を渡したのでした
狂四郎の孤独の翳は 同じく孤独な女 望まぬながら修羅に身を置いた采女の心をひきつけるのです
夫を救うためには 狂四郎を殺さなくてはいけないのに
救った理由を問う狂四郎
「あなたの死を願っていたのに 不意にそれが
私もおそろしい」
そして複雑な心を打ち明けた采女は「江戸を出てどこかへ身を隠します」
そう言って狂四郎の前を去るのです
けれど彼女はさらわれました
白鳥は自分を裏切った采女を許しませんでした
白鳥は偽の御前試合をでっちあげ 朝比奈には将軍家(うえさま)からの命令として狂四郎を連れてくるように伝えます
相手は柳生但馬守
卑怯者の白鳥の計画では
狂四郎の刀の目釘を緩めておく
狂四郎が刀を振ったら あらら大変刀が飛んで朝比奈に突き刺さる~~~
刀が突き刺さる場所へ朝比奈を座らせておくんだもん
一石二鳥 ボクって頭いい~~~
しかし これは剣術できない男の浅知恵です
罠と知りつつ受けないと朝比奈が失脚するーと狂四郎は誘いに乗るのです
そして目釘を緩めてあることを見ぬきます
で飛んだ刀は白鳥と結託している悪徳商人さんへ突き刺さります
いわば天誅
試合前のお約束 立ち合いでのことは御とがめなしにーというお約束が生きてきます
狂四郎を捕えようとする武士たちへ柳生但馬守は言います「お咎めなしということであったぞ
控えおろう」
狂四郎さん 但馬守に説明「これは猿芝居です」
ちゃんと敬語をつかっております
きちんとした振る舞いもできるのでした
柳生「それ以上は聞くまい よく儂のひと太刀をかわされた 感服したぞ
御身労われよ」
武芸者同士の互いを認めた阿吽の呼吸とでもいいますか^^
勝手に御前試合などと名乗った高姫にはお仕置きが待っていました
使者からの手紙には行状不行き届きにつき謹慎せよ
高姫には田舎での暮らしが待っています
一旦は抵抗の言葉をもらすも 重ねての使者からの言葉に高姫は「わかった」と
最後は殊勝でした
が白鳥は往生際が悪いです
まだ朝比奈と狂四郎を殺そうと悪あがき
狂四郎は采女を捕えた白鳥が 狂四郎を助けて采女が白鳥を裏切ったから 采女の夫を殺したと知りました
まだ采女がそのことを知らないままであることも
決闘の場へ狂四郎は単身出向きます
その頃 朝比奈は上様からのお褒めの言葉と改革への後押しを教えられます
風吹く原っぱさんを進む狂四郎
「こないで 来ないで~~~」と采女の叫び声が響きます
罠が 待ち伏せの罠があるのです
十字にと縛り付けられている采女を解き放ち 逃げろと言って 狂四郎は敵に向かいます
最後の一人が言いました「小賢しいぞ円月殺法 その剣が円を描き終えるまで俺は打ちこまん
貴様の負けだ」
すっと弧を描き端正に剣が回り進みます
男は 360度あと少しのところでうちかかってしまいます
で 斬られるのでした
そこへ10騎ほどか配下引き連れ馬で駆け付けた朝比奈「狂四郎~~~~っつ」「狂四郎~~~~~」
心配そうです 不安そうです
声を聞きつけ狂四郎が現れると「おお!」ちょっと絶句してから「無事であったか」
狂四郎「有難う」
「おぬしあれほどの技量 役立てる気はないか
貴公のおかげで 儂の方はうまくいきそうだ」
仕官を勧めようとする朝比奈に「あんたが嫌いになる」と狂四郎
「待て 狂四郎 狂四郎~~~~!」と叫ぶも狂四郎はどんどん遠ざかっていきます
そして采女に近づきますが ただ見下ろし しばし視線を合わせるものの 無言のまま横を通り抜け去っていきます
諦めたような采女の表情
完の文字が出て 映画は終わります
この映画について詳しいサイトさん↓
http://movie.walkerplus.com/mv21110/
http://www.raizofan.net/link4/movie6/nemuri2.htm
http://blog.goo.ne.jp/langberg/e/06cf072708d92a45f98205e992935e6e
↓こちらが第一作です
「眠狂四郎」の画像を↓