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見果てぬ夢

2008年07月18日 | 千伝。
英国のシェイクスピアが生きていた時代に、スペインには、ミゲル・デ・セルバンテスが生きていた。

この二人の偉大な作家は、1616年の同年に亡くなっている。
(因みに徳川家康も同年没)

聖書に次いでロングセラーとして、いまも世界中で翻訳されて愛し続けられている「ドン・キホーテ」の著者セルバンテスの生涯は、ラ・マンチャの男 ドン・キホーテと同じぐらい波乱に満ちている。

ドン・キホーテの物語は、世の中の不正をただすために正義かつ狂気の初老騎士が旅に出るあらすじである。
風車を敵の巨人と思い込み、突き進みすすむが、吹き飛ばされてしまう・・。

風車は、オランダの象徴である・・スペイン人セルバンテスの隠喩が利いている。

さらに可笑しいのは、セルバンテスは、「ドンキホーテ」を書いたのは、自分ではなく、聞き伝えを記録しているのだ言う。

セルバンテスは、捕虜になったり何度か牢獄に入っている・・そこで「ドン・キホーテ」の構想を練ったともいう。

彼は、当時世界の海を制していたスペインの栄光と挫折を経験しているのである。

彼は、スペイン無敵艦隊の食糧調達係をしていたともいう。
英国侵攻を進めたスペイン無敵艦隊だったが、1588年7月、アルマダ海戦で英国に破れた。(英国人ならば、誰もが知る歴史的な勝利したアルマダ海戦である。)

スペインは、この敗戦で、世界の覇権を英国に譲ることになる。

その後、英語圏がスペイン語圏よりも勢力を拡大するのは歴史の流れである。
シェイクスピア文学しかり・・。

シェイクスピアもセルバンテスも正規の高等教育を受けていない。

加えて、当時の中世ヨーロッパの文化というのは、イスラム教圏世界の文化よりも見劣りしていたのは事実なのである。

セルバンテスは、「ドン・キホーテ」をイスラム教徒が書いたものを翻訳した記録を伝えているとほのめかしている。

彼は、全くのデタラメを言う根拠がある・・スペインの凋落を知るスペイン人の見果てぬ夢なのである。

さらに、アルマダの海戦以後、ネーデルランド(オランダ)における独立運動が高まる。
スペインは、一挙に経済基盤を失うのである。

スペインが最盛期だったレパントの海戦(1571年)でトルコに勝利し、セルバンテスは、従軍兵として左腕を失っている。

老いても、彼の見果てぬ夢は、風車の向こうの世界にあったのでしょう。

風車