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「暴行による死亡ではありません。」
ぺク・ボムははっきりと言いました。
あまりにも思いがけない証言に、ウン・ソルは呆然としてしまいました。
弁護士は、勢いづいたように主張しました。
お腹の子と被告人は無関係だ、夫婦間の喧嘩の原因は被害者の私生活の乱れだった・・・なんてね。
おまけに、被害者の身体の傷は、被告人がつけたと断定できないと言う証言まで、ぺク・ボムから引き出したのです。
殺人だけじゃなく、暴行の嫌疑まで回避しようとしたのです。
呆然としたソルですが、反撃に転じました。
被害者は水虫の薬やその他の薬を併用したことによる中毒を起こしているという検視結果を持ち出しました。
被害者に水虫はありませんでした。
水虫の薬を処方されていたのは、被告人でした。
でも、オ・マンサンは、妻に頼まれたと供述。
罪になる点はありません。
ソルは感情的にオ・マンサンを責め立てました。処方箋を偽造したのではないか、嘘をつくな・・・なんてね。
あまりにも未熟な尋問ですな、ソルは。裁判長の言うように、準備が足りないです。
結局、ソルが殺人罪という公訴事実を変えるつもりはないと言い張ったため、裁判長は一旦休廷とし、後日改めて裁判を開くと言いました。
その時までに公訴事実を維持できるような捜査内容を提示するように・・・とね。さもないと、無罪判決を出すしかない・・・と。
ソルは自分の未熟さを痛感しました。
そうね、見ていても、残念としか言いようの無い検事です、ソルは。
いくら新人と言えど、これでは裁判長に公正な判断を下してもらえないのではないかと思えますよ。
でも、あまり落ち込んだ様子はありません。
ノー天気だと言うのではなく、表には出さないけど、何かを覚悟して検事になったと思われます。
「絶えず存在の証明が必要な温室の雑草よ。いつ引き抜かれるか。」
と、カン首席検事に言いました。カン首席検事は、ソルを慰めようとしたのですが、それは必要なかったようです。
ところで、カン首席検事は、ぺク・ボムの交通事故の記録を意味ありげに眺めています。
何か関係あるのかしら?
ソルは、ぺク・ボムに文句を言いました。味方だと思っていたのに・・・と。そして、絶対に諦めないとも。
被害者は火葬され、被告人は釈放、現場もない・・・事件は終わりだとぺク・ボムに言われても。
何か見落とした物は無いかと、ソルは考えました。
その時、思い出したのです。
現場に自分がハイヒールを履いてそのまま入って行ったことを、ぺク・ボムに怒鳴りつけられたことを。
それに何かついているかもしれないと思ったので、ぺク・ボムに鑑定を依頼。
ぺク・ボムも、何か感じる事があったのか、すんなり引き受けました。
そこから、出たのです。水虫の薬の成分が。
それも、粉砕した状態で。
そしてもう一つ見落としていたのが、被害者の服のポケットの中のカプセル。ポケットの破れ目から服の中に落ちてしまっていたのです。
カプセルは、中身が替えられていました。
カプセルから指紋も出ました。
裁判が再開されました。
ソルは、新たな証拠の監察結果が出るまで、なんとか、尋問を引き延ばそうとしました。
しかし、オ・マンサンは陳述を拒否。
ソルは、胎児の親子鑑定の結果を示し、知りたいなら、質問に答える事を要求。
一旦は、興味の無い態度を取ったオ・マンサンですが、気持ちを変えました。鑑定結果を受け取ったのです。
それをちらっと見たオ・マンサンの表情から、ソルは胎児が彼の子だったと推定しました。
ソルが期待して待っていた新しい証拠の鑑定結果。
ところが、それらはすべて被害者につながるモノだったのです。被告人の痕跡は発見されませんでした。
今度は、検察側の証人として出廷したぺク・ボムは、証拠の鑑定結果から導き出した結論を言いました。
被害者は、自殺した・・・と。
夫オ・マンサンが殺したと見せかけて・・・。命をかけて夫のDVに対する復讐を試みたということです。
失敗に終わりましたが・・・。
呆然としたソルは、悔しさをにじませながら、オ・マンサンに対する被害者の無念の思いを述べました。
でも、結局、公訴事実を変更するしかありませんでした。殺人罪から傷害罪に・・・。
事実上の敗訴ですな。
それでも、ソルは落ち込んでいるわけにはいきませんでした。
次の事件が起ったからです。
今度は財産争いのようです。
3人のけたたましいアジュンマが一人の女性を訴えたのです、詐欺師だと。
女性は弟の子供を連れて現れたようです。
弟と言っても血のつながりは無く、跡継ぎが欲しい父親が養護施設から引き取った男性でした。
訴えられた女性ファジャは、ドゥクナムという男性が冷凍保存してあった精子で体外受精し、子供をもうけたのです。
父親が死ぬ時、その孫にも財産を分けると言ったことから、アジュンマたちは激怒したってわけ。
3年も前に死んだ血のつながりのない弟の子供なんて信じられないってことですね。
でも、ファジャは、子供に父親と会わせてやりたいというそれだけだと言いましてね。
財産狙いじゃないという口ぶりです。
ソルは、埋葬されたドゥクナムの遺体を掘り出しました。
まさか、この状態で会わせるつもりだったの?
何か他に掘り上げる理由が?
でも、とにかく、この事で、思わぬ事実が明らかになったのです。
ぺク・ボムが検視し、ドゥクナムは他殺だと思われたのです。
あの大騒ぎして遺体を取り戻そうとしたアジュンマ3人は、何か怪しいですな。