これもギャラリー店番用に本棚から発掘した一冊.
社会思想社 現代教養文庫 (1978/7). この文庫からは,日影丈吉傑作選が当時4冊刊行されていて,その2冊目.この文庫は2002年に出版社の廃業とともに消えてしまった.
この本は多分タイトルに惹かれて買ったのだろう.定価360円.12編の短編集だが,「猫の泉」と「崩壊」は同工異曲.他に幻想小説、SF,舞台を外地とした戦争物など.どれにも多少のミステリ風味.
面白くはないがかっこいい書き手というグループがあり,日影丈吉もその一人,ぼく的分類では同じグループに入る中井英夫が「翳の観察者」のタイトルで解説を書いている.このお二人,どちらが年長かと思って調べたら,日影 1908-1991,中井 1922-1993 であった.1929 年生まれの皆川博子は今なお活躍中だが,このグループと思う.
読み返したら,面白くなくはなく,共感するところが多かった.40 年近く経つと読み手の意識も変わるらしい.
装丁 建石修志.