【日本体操協会】:パワハラ騒動 塚原夫妻“全面降伏”の裏側と協会の本音
『漂流日本の羅針盤』:【日本体操協会】:パワハラ騒動 塚原夫妻“全面降伏”の裏側と協会の本音
2日の19時すぎ、報道各社に突然、日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長(71)と夫の光男副会長(70)からFAXが送信された。
(左から)具志堅副会長、塚原光男副会長、塚原千恵子強化本部長(C)日刊ゲンダイ
【宮川紗江選手に対する謝罪】
そう題されたFAXは2人の直筆の署名入り。文書は冒頭から<前回の私たちのプレスリリースにより、(中略)さらに宮川紗江選手を傷つけ、誤解を与え、恐怖心を抱かせ、不信感、不快感を与えてしまったのであれば、全ては私たちの責任であり、本当に申し訳なく思っております>と平身低頭、パワハラ被害を訴える18歳の宮川に対する謝罪と後悔の文字が並んでいた。
先月29日に告発されて以降、光男副会長は「全部、ウソ!」と会見での宮川の主張を切り捨て、千恵子本部長は「もう黙ってないわよ。お金を使ってでも、勝てるところまでやる」と徹底抗戦の構えを見せ、スポーツ紙にも「反撃」「反論」の文字が躍った。それがこの日の文書では百八十度態度を翻し、<信じて頂けないかもしれませんが、私たちには、そういった意図は一切ございません>と釈明、宮川に対して<直接謝罪をさせて頂きたいと考えております>と“全面降伏”したのである。
一連の騒動では、五輪メダリストやOB、OGの多くが、宮川の擁護に回り、反塚原の態度を鮮明にした。
夫妻が牛耳っていたはずの体操協会も第三者委員会の設置を決め、徹底的に調査して膿を出すとした。
「窮地に立たされて振り返って見れば、周りは敵だらけ。自分たちが『裸の王様』だったと思い知らされたのでしょう。第三者委員会は利害関係のない弁護士を含む3人程度で構成され、協会は設置から2週間程度で結論を求めるとしています。当初、協会は『宮川から正式な訴えがあれば考える』と調査には消極的だったのが一転した。その理由のひとつは、10月末にカタールのドーハで行われる世界選手権が控えていること。そんな大事な時期に女子体操の強化部門トップである塚原夫妻にパワハラの疑惑が持ち上がり、代表候補選手に動揺が走っているからです。協会は一日でも早く事態の鎮静化を図りたい」(協会関係者)
■国際体操連盟会長がIOC委員に
10月にはもうひとつ、体操界にとって大きな出来事がある。日本体操協会の顧問で国際体操連盟のトップに座る渡辺守成会長(59)が、国際オリンピック委員会(IOC)の総会でIOC委員に推薦されることが決まっているのである。
長くアマチュアスポーツを取材している元産経新聞運動部長の津田俊樹氏(国士舘大政経学部非常勤講師)が言う。
「現在、五輪競技の国際連盟でトップに立っている日本人は、体操の渡辺会長ただ1人です。2016年の会長選で次点に80票以上の大差をつけて当選。日本人が国際競技団体の会長に就くのは1994年まで国際卓球連盟会長を務めた荻村伊智朗氏以来、22年ぶりのことだけにメディアにも快挙と報じられました。その渡辺会長が10月のIOC総会でIOC委員に選出されることがすでに内定しています。日本人のIOC委員は現在、竹田恒和JOC(日本オリンピック委員会)会長のみ。渡辺会長が2人目となれば、当然、世界における日本体操の発言力が増す。そういうときに、お膝元の日本協会でパワハラ騒動が持ち上がった。渡辺会長にとっても体操協会にとっても、好ましいことでないのは確かです」
第三者委員会からどのような調査結果が出るかはともかく、塚原夫妻、特に「女帝」と畏怖される千恵子本部長の存在はかねて、協会内でも問題になっていた。40年以上も女子体操の強化現場に身を置いてきたことで、権力が集中。周りの忖度もあって、大きな影響力を保持するようになった。仮に宮川へのパワハラが事実認定されなくても、あまりに強大になったその存在自体が今回の騒動を引き起こしたのは事実だろう。これを機に塚原夫妻を駆逐したい――これが協会の本音だともっぱらだ。
体操関係者が言う。
「協会の具志堅(幸司=61)副会長もそうだと思う。具志堅副会長と塚原夫妻の間には派閥問題が横たわっている。3人は日体大の先輩後輩の関係ですが、塚原夫妻はこれまで日体大を目の敵にしてきた。光男副会長は日体大在学中にメキシコ五輪に出場し、団体総合で金メダルを獲得。卒業後にミュンヘン、モントリオール五輪でも金メダルを取りながら、日体大の指導者には同期の監物(永三)さんが就いた。日体大には捨てられたという思いがあるのです。夫妻は朝日生命体操クラブの指導者に転じ、全日本選手権団体女子の優勝を争って日体大と火花を散らすようになった。10歳下の具志堅副会長は今や日体大の学長です。塚原夫妻との関係がうまくいくわけがありません」
具志堅副会長が、宮川の告発内容を「全部、ウソ!」と切り捨てた光男副会長に「言うべきじゃない言葉だった」と不快感を示し、「18歳の少女がウソをつくとは思えない」と宮川の肩を持ったのは、あるいはこの派閥問題が関係しているのかもしれない。
IOC委員に内定している国際体操連盟の渡辺会長の立場を含め、日本体操界にとって塚原夫妻の存在が邪魔になっているのは間違いないようだ。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【エトセトラ・体操女子】 2018年09月03日 15:25:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。