【 解除できるのか 豊洲“時限爆弾” 】:「孤独のグルメ」に登場 町中華の名店が市場移転で消える
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【 解除できるのか 豊洲“時限爆弾” 】:「孤独のグルメ」に登場 町中華の名店が市場移転で消える
やはり豊洲市場は罪作りだ。テレビ東京系の人気ドラマ「孤独のグルメ」シーズン7の最終回(今年6月29日放送)に登場した「町中華」の名店が、残念ながら閉店してしまう。原因は、10月11日に予定される築地市場の豊洲移転だ。
閉店するのは、東京・八丁堀の「中華シブヤ」。ドラマでは主人公の井之頭五郎が、こぢんまりとした店内で名物のニラ玉に舌鼓を打っていた。本紙がきのう(23日)訪ねると、店先には〈築地市場移転もきっかけとなりまして諸般の事情により、来る九月二十八日(金)をもちまして閉店することとなりました〉との張り紙が。
中華シブヤ名物のニラ玉(左)と主人公・井之頭五郎を演じた松重豊(C)日刊ゲンダイ
店主の渋谷吉章さん(75)が心境を打ち明ける。
「私は、創業時の18歳の頃から毎朝7時前にバイクで築地場内の青果市場に通い、ニラ玉用のニラを自分の目で確かめ、仕入れてきました。葉の幅が広いものが甘味があっておいしいんですよ。築地は近いので楽に行けますが、豊洲は遠すぎて移動に時間がかかり、仕込みがお昼の時間までに終わらなくなってしまう。お客さんに満足してもらえるものを出せないと思い、やむなく閉店を決めました」
店から築地市場までの距離は2キロ弱で、バイクなら所要時間は約6分。一方、豊洲市場までは8キロもあり、20分程度かかる。問題は他にもある。
「築地ならバイクを青果市場内の仲卸店に横付けできるので、買った物をすぐ荷台にのせて移動できます。ところが、豊洲では駐車場にバイクを止め、歩いて買い物しないといけません。ニラは1日に160束は買いますし、重たいキャベツや白菜なども買います。大荷物を抱えて歩くのは、この年齢だと体力的にも厳しく、時間も余計にかかってしまいます」(渋谷吉章さん)
つまり、豊洲市場の使い勝手の悪さによって閉店に追い込まれたのだ。ドラマの原作者の久住昌之氏もこう嘆く。
「市場の移転はともかく、小さな個人店はいつも大きな動きに負けてしまうことが悲しいです。大型スーパーや飲食店が新しくでき、小さな市場や個人店が閉じてしまう様子を、何度も見てきました。渋谷さんご夫婦はお人柄もよく、本当にいい店なので非常に残念です」
実は、移転をきっかけに閉店するのは中華シブヤだけではない。都内の小さな名店が続々と閉店に追い込まれている。
「創業約70年のさつま揚げ店『愛川屋』(東京・笹塚)が約3カ月前、移転が原因で閉店しました。他にも煮魚が名物の小料理屋や、いけすがある海鮮居酒屋も閉店したと聞いています。やはり、何かと便利な築地だからやっていけたというのが内情のようです」(移転問題を追及する建築エコノミストの森山高至氏)
市場移転で名店がどんどん消えていく。「ダイバーシティー」(多様性)を掲げる小池都知事は、食文化の多様性を守る気はさらさらないようだ。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】 2018年08月25日 15:25:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。