【永田町の裏を読む】: 口先だけの「しているふり」で人々を騙し続ける日本の首相
『漂流日本の羅針盤』:【永田町の裏を読む】: 口先だけの「しているふり」で人々を騙し続ける日本の首相
「会社勤めを長くしていると『仕事をしているふりがうまい人』がいるのに気付くものだ。読者の皆さん、今、うなずいたでしょ。安倍首相もこれと同じで『外交で実績を上げてるふり』がうまいだけではないのか、というのが、失礼ながら私の仮説である」
![拉致問題でも「してるふり」をするばかり(C)日刊ゲンダイ](https://c799eb2b0cad47596bf7b1e050e83426.cdnext.stream.ne.jp/img/article/000/236/410/80ef8741c1922b0a889f6f803db4a5b320180829142556322.jpg)
拉致問題でも「してるふり」をするばかり(C)日刊ゲンダイ
「『仕事をしているふり』がうまい人には、いくつかの特徴がある。『得意先の誰々と会った』など途中経過をやたら報告する。小さな成果をアピールする(大きな成果は上がらない)。誰かが大きな仕事をすると『実は自分も関わっていた』と便乗するなど」
以上、長い引用になって恐縮だが、最近教えられて読んで共感した西日本新聞7月22付のコラム「『しているふり』にご注意」の一節である。これを読むように勧めてくれたのは、『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社、15年刊)の著者、蓮池透元家族会事務局長である。
安倍晋三首相は、そもそも「拉致の安倍」を売り物に総理の座に駆け上ったのではあるけれども、実は彼はこの問題で「しているふり」をするばかりで、よくよく落ちついて振り返れば2002年の平壌宣言から今日までの16年間、拉致問題は何ひとつ進展していない。それを家族会や支援団体から責められるので、安倍は苦し紛れに、米朝首脳会談が開かれるという流れに乗りかかって、「ワシントンに行ってトランプに拉致を取り上げてくれるよう頼んできた」(途中経過をやたら報告)、「トランプが自分で拉致被害者を連れ帰るかのようなことを言っていた」(小成果の過大もしくは虚偽アピール)などと騒ぎ立て、さらには朝鮮和平に「実は自分も関わっていた」かのように言い立てるのである(便乗自己宣伝)。
しかし「しているふり」もここまでで、さあ次はどうするのかと問われれば、まさか「もう一度トランプにお願いに行く」とは言えない。そこで「最終的には日朝首脳会談を開いて、私が……」と言わざるを得なくなったが、「最終的にって、いつのことだ」と蓮池は笑う。何の準備も予備交渉もしていないから当分は開かれないが、いつの日か開かれるという意味だろうか。このように安倍は、口先だけの「しているふり」で人々を欺き続けている。
◆高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】 2018年08月30日 07:15:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
◆【時代ななめ読み】:「してるふり」にご注意を
安倍晋三首相の政権運営を巡って「外交が得意」という評価をしばしば耳にする。新聞やテレビでも「不祥事で苦境の安倍首相が、得意の外交で挽回を図る」などの解説を見かける。
共同通信社が6月中旬に実施した世論調査では「安倍政権を支持する理由」で「ほかに適当な人がいない」がトップだが、「外交に期待できる」が2位につけている。「外交が得意」のイメージは広く世間に共有されているようだ。
外交担当記者としては、首をかしげてしまうのだ。本当に安倍首相はそれほどの外交上手なのか。
◇ ◇
安倍氏が首相に返り咲いてから5年半。第1次政権時代も合わせれば、首相在任期間は戦後3位だ。
外交問題は一朝一夕に動かせないとはいえ、すでに十分な時間を与えられたと考えるべきだろう。
しかし安倍首相自身が最大の課題に掲げる「拉致問題の解決」は現時点まで全く進んでいない。残念なことに、これが事実である。
トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談で、楽観はできないにしろ、北朝鮮が非核化へ動く可能性が出てきた。同時に拉致問題解決のチャンスも訪れている。ただし、米朝会談実現の功労者は韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領であり、安倍首相ではない。
もう一つの日本外交の大きな課題は北方領土問題だ。安倍首相はロシアのプーチン大統領とすでに20回以上も会談を重ねているが、経済協力を求められるばかりで、領土問題解決や平和条約締結への道筋は、ほとんど見えてこない。
在任の長さを考えれば、拉致問題や北方領土で一定の成果を上げない限り「外交が得意」などの評価はできないのではないか。アジア外交も停滞している。目立った実績といえるのは、オバマ米大統領(当時)の広島訪問ぐらいだろう。
◇ ◇
ではなぜ「外交が得意」のイメージが広がるのか。私はそこに興味を持つ。
会社勤めを長くしていると「仕事をしているふりがうまい人」がいるのに気付くものだ。読者の皆さん、今、うなずいたでしょ。
安倍首相もこれと同じで「外交で実績を上げてるふり」がうまいだけではないのか、というのが、失礼ながら私の仮説である。
「仕事をしているふり」がうまい人には、いくつかの特徴がある。「得意先の誰々と会った」など途中経過をやたら報告する。小さな成果をアピールする(大きな成果は上がらない)。誰かが大きな仕事をすると「実は自分も関わっていた」と便乗する-などなど。
安倍首相は国会答弁で、北朝鮮が米朝会談に応じた理由について「日米韓が最大限の圧力をかけた成果」と強調している。間違ってはいないだろうが、このうち日本の圧力がどれだけ効果があったかは不明だ。
◇ ◇
会社という世界では、人事担当者の目が節穴なのか、意外と「仕事をしているふりがうまい人」が高く評価されてあぜんとすることがある。読者の皆さん、また、うなずきましたね。
ただ、これが政権となると、査定するのは人事部ではない。われわれ国民である。間違った査定をしないよう、イメージに惑わされず、事実を吟味して正確に評価する目を持ちたい。(論説副委員長)
=2018/07/22付 西日本新聞朝刊=
元稿:西日本新聞社 主要ニュース オピニオン 【時代ななめ読み】 2018年07月22日 11:45:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。