【安倍政権】:課題山積 問われる力量 第4次再改造内閣
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍政権】:課題山積 問われる力量 第4次再改造内閣
安倍晋三首相は11日の記者会見で「新しい時代の国づくり」に向けた決意を強調した。10月からの消費増税への対応や首相が掲げる「全世代型社会保障改革」の実現、停滞するロシアとの北方領土交渉や対立を深める日韓関係など、内政、外交ともに課題は山積する。「安定と挑戦」と位置づけた新内閣の力量が問われる。
■外交 「日ロ」停滞打開が焦点
外交・安全保障では、北方領土問題を含む日ロ平和条約締結交渉の停滞を打開できるかが焦点だ。首相は昨年11月の日ロ首脳会談で歯舞群島、色丹島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎にした交渉の加速化で合意。2島返還を軸とした交渉に転換したが、歴史認識などを巡るロシアとの溝は大きい。
首相は内閣改造で交渉責任者の外相に茂木敏充氏を起用。記者会見では日米貿易交渉などを担った「経験と手腕を生かしてもらいたい」と期待感を示した。11月にプーチン大統領との会談を予定するが、交渉の長期化が避けられない情勢で、領土問題解決の道筋は不透明感を増している。
元徴用工訴訟をきっかけに悪化する日韓関係は、日本政府の輸出管理上の「ホワイト国(優遇対象国)」から除外された韓国が反発し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)を破棄する事態に発展。日本は、日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判決は日韓請求権協定に違反しているとして、韓国側に是正を求め続ける構え。
北朝鮮問題では、朝鮮半島の非核化に向けて日米韓の連携を強化する方針。首相は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談を目指すが、実現のめどは立っていない。
■経済 増税後の失速 どう回避
経済運営の課題は、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱などで世界経済の減速懸念が強まる中、10月の消費税増税後の景気失速を防ぐことだ。
「日本の経済が世界経済の足を引っ張ることにならないよう万全を期していく」。安倍首相は11日の記者会見で、追加の経済対策も辞さない姿勢を強調した。2014年の前回増税時には個人消費が大きく落ち込み、回復に時間を要した。政府は今回、プレミアム付き商品券など2兆円超の対策で消費低迷に備えるが、足元の景気指標は前回より低調さが目立つ。軽減税率やポイント還元制度など、複雑な制度を円滑に実施できるかも課題となる。
日銀の金融緩和は副作用が目立っており、政策手段は財政出動に限られそう。歳出が膨らめば25年度の達成を目指す基礎的財政収支の黒字化が一段と遠のきかねない。経済成長と財政再建の両立を目指す首相の経済政策は正念場を迎える。
今月下旬に署名予定の日米貿易協定は、牛肉や豚肉など多くの米農産品の関税が環太平洋連携協定(TPP)の水準まで削減される見込み。価格競争にさらされる国内農家への支援策も焦点となりそうだ。
■社会保障 「負担増」踏み込めるか
社会保障改革は、安倍晋三首相が残り任期最大の内政課題と位置付ける。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める2022年以降は、医療費や介護給付費の急増、年金を支える現役世代の減少は避けられない。制度の維持に向けて、負担増を伴う踏み込んだ議論を進められるかが問われる。
首相は11日、有識者を交えた「全世代型社会保障検討会議」の初会合を来週にも開くと表明。加藤勝信厚労相は同日の記者会見で「未来を切り開く答えを出していきたい」と述べ、議論を加速する決意を示した。
検討会議では、年金受給開始年齢の70歳超への選択肢拡大や、厚生年金を中小企業のパートらにも適用することなどを議論する。医療では、後期高齢者の窓口負担を原則1割から2割に引き上げることなどが取り上げられる見込みだ。
ただ、新たな負担を強いられる高齢者や、年金保険料の会社負担が増える雇い手側の反発が予想され、国会審議の難航は必至。消費税率を10%に引き上げた後は「10年ぐらいの間は上げる必要はない」とする首相の発言を踏まえると、制度の見直しをさらに急ぐ必要に迫られそうだ。(荒谷健一郎、福本泰範、則定隆史)
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・内閣改造人事】 2019年09月12日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。