【社説】:W杯ラグビー 多様性で新たな歴史を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:W杯ラグビー 多様性で新たな歴史を
ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が開幕した。世界ランキング10位の日本代表は20位のロシアに快勝。目標の8強入りに向け、幸先のいいスタートを切った。
ラグビーW杯は五輪、サッカーW杯に次ぐ世界的なスポーツイベントだ。1987年の第1回大会以降、4年に1度開かれている。今大会が9回目で、アジアでは初開催。3連覇を狙うニュージーランドなど20チームが参加。全国の12会場で44日間にわたって熱戦が展開される。
日本はこの後、グループリーグで世界ランク1位のアイルランド、16位のサモア、7位のスコットランドと対戦する。8強進出には上位2位までに入る必要がある。
前回のイングランド大会で、日本は2度の優勝を誇る南アフリカを終了間際に逆転して破った。試合は「スポーツ史上最大の番狂わせ」と呼ばれ、日本中を歓喜の渦に巻き込んだが、惜しくもベスト8進出は逃した。地元開催の今年はぜひとも新たな歴史をつくってほしい。
今大会の日本チームを象徴するのが「多様性」である。ラグビーの代表資格は他競技とは異なり、国籍は関係ない。その国・地域で(1)選手本人が生まれた(2)両親、祖父母の1人が生まれた(3)3年継続して居住(4)通算10年居住―のいずれかを満たせば資格を得られる。
日本代表31人のうち、外国出身選手は過去最多の15人に上る。ニュージーランド、トンガ、南アフリカ、サモア、韓国、オーストラリア、そして日本の7カ国の多様な背景を持つ選手が「ワン・チーム」のスローガンの下、桜のエンブレムを胸に着けて戦う。
日本では多くの外国出身者がさまざまな仕事に就くようになった。しかし、日本の習慣に戸惑ったり、言葉に慣れなかったりしている人も少なくない。日本代表の活躍が外国出身者への理解を深めることにつながれば、ラグビーと今大会の社会的価値はさらに高まっていくに違いない。
秋田市で事前合宿したフィジー代表にも期待したい。練習だけでなく、イベントで市民や小学生ラガーとも交流した。気さくで穏やかな選手たちの人柄に好感を持った人は多い。
フィジーはきょう、札幌ドームでオーストラリアとの初戦に臨み、25日の第2戦では岩手県釜石市の釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムでウルグアイと対戦する。会場は東日本大震災の津波で全壊した小中学校の跡地。復興の象徴となる会場での試合は、本県からも応援ツアーが組まれている。
大会組織委員会は期間中、50万人を超える海外からのファンが訪れ、その経済波及効果を1千億円以上と試算している。地方発の日帰りツアーも多数用意されており、W杯特需への期待が高まる。「AKITA」を発信する機会にもなるはずだ。
元稿:秋田魁新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年09月21日 09:24:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。