【社説②】:世界保健デー WHOは信頼回復急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:世界保健デー WHOは信頼回復急げ
今日七日は「世界保健デー」。新型コロナウイルスの世界的流行が続き、地球規模での防疫協力やワクチン普及が急がれる。世界保健機関(WHO)の権限や機能を向上させることも検討したい。
世界の人びとの健康を守る専門国際機関、WHOの憲章が発効した日を記念するのが、「世界保健デー」の由来だ。世界各国で関連のイベントが開催される。
今年のテーマは、「健康格差」だ。流行の早期収束と、健康をめぐる不平等の克服を目指す。
WHOは、コロナ禍で重要性が増しているが、各国の視線は厳しく、失望の声も少なくない。
その一つが、WHOの国際調査団が、中国湖北省武漢を訪れ、調査した内容をまとめた報告書だ。
感染は動物を介して人間に広がったとみられるとし、中国の研究所からウイルスが漏えいしたとの説を、事実上否定した。
ただ、この報告書は、中国側が提供する情報に基づくものであり、調査範囲も制限されていた。
独立性や客観性に疑問が指摘されており、中国寄りとも指摘されるテドロス事務局長さえ、不十分さを認めざるを得なかった。
日本や米国など十四カ国も、この報告書に対して、懸念を表明する共同声明を発表した。WHOは深刻に受け止めるべきだ。
新型コロナの起源の解明は、新たな感染症対策にも欠かせない。徹底した再調査を望みたい。
WHOに、調査に必要な強い権限を与えることも論議する時期だ。中国も責任転嫁ばかりせず、調査に積極的に応じてほしい。
有識者でつくる独立監視委員会は昨年十一月、WHOに対して、政治から独立し、中立を守るよう求める提言を発表した。
また、提言には感染症の拡大状況に応じて、加盟国に警告を発する多層的な仕組みや、柔軟な資金調達の導入も盛り込まれた。
巨額な拠出金を負担する中国に配慮するあまり、WHOの新型コロナへの初期対応が、後手に回ったことへの反省が背景にある。
新型コロナのワクチンについても資金力のある先進国で接種が進む一方、発展途上国ではワクチン不足が深刻だ。
ワクチンを友好国に無償提供し、国際的な影響力の拡大を図ろうとする国も現れている。
WHOは、政治的中立を守り、早く信頼を取り戻してほしい。猛威を振るう変異ウイルスに関する情報収集やワクチンの普及など、やるべき仕事は少なくない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年04月07日 07:13:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。