【米国】:バイデン氏 中間層底上げに重点 「中国との競争」も強調
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【米国】:バイデン氏 中間層底上げに重点 「中国との競争」も強調
バイデン米大統領は28日、米連邦議会の上下両院合同会議で就任後初の議会向け演説を行い、「我々は21世紀を勝ち抜くための中国など(専制主義国家)との競争のさなかにある。民主主義は今も機能するのだと証明しなければならない」と強調した。「人々が生活の中で実感できる結果を出していく」とも述べ、格差是正による中間層の底上げや環境インフラへの重点投資で国力を増進する考えを示した。
バイデン氏は、29日に就任後100日を迎えるのを前に約65分間演説した。新型コロナウイルスワクチンの約2億2000万回の接種、経済対策による130万人分の雇用創出などの実績を挙げ、「100日で『米国は再び前進している』と言えるようになった」とアピールした。
米連邦議会で演説するバイデン大統領=2021年4月28日、AP
その上で、対中競争に勝つために「単に(国を)立て直すだけでなく、発展させなければならない」と強調。「米国を築いてきたのは中間層だ」として、教育分野などで中間層や低所得者層への支援を手厚くする方針を示した。また「機会の門戸を開き、公正と正義を守っていく。それが米国の本質だ。我々がそれぞれにできることを果たせば、民主主義が持続的で強固だと証明できる」として国民に結束を呼びかけた。
一方で、「国営企業への補助金、先端技術や知的財産の窃取など、米国の労働者や産業の不利益となる不公正な商慣行には立ち向かう」と表明。「中国を含めて同じルールで経済活動をすることが、結果として米国の中間層の利益となる」とも述べ、トランプ前政権と同様に通商分野での強硬な対中姿勢を示した。
また中国の習近平国家主席に対して「衝突を避けるためにも、インド太平洋地域での強力な軍事力は維持する。基本的人権がひどく侵害された場合には黙っていない」と伝えたことも明らかにした。2月に実施した電話協議でのやりとりだとみられる。
北朝鮮やイランによる核開発は「米国や世界の安全に対する深刻な脅威であり、同盟国と緊密に連携し、外交や断固たる抑止によって対処する」と強調。アフガニスタンからの米軍の撤収方針について「(国際テロ組織)アルカイダのテロの脅威は低下させた。兵士たちを帰す時だ」と説明した。日本への具体的な言及はなかった。
演説では銃規制や警察改革、人種差別解消などに取り組む姿勢を改めて強調し、野党の共和党に対して関連法案の早期可決に協力するよう再三求めた。【ワシントン秋山信一】
◆格差是正に200兆円
バイデン大統領が28日発表した格差是正計画は、子育て支援や教育無償化の拡充に10年間で総額1・8兆ドル(約200兆円)を投じ、低所得層や中間層の底上げを図る内容だ。財源は所得税の最高税率引き上げなど富裕層増税で15年かけて賄う方針。3月に公表した2兆ドル規模の環境インフラ投資計画と合わせ、政権が掲げる経済政策「ビルド・バック・ベター(より良き再建)」の2本柱となる。
計画では、3、4歳児向け幼児教育と2年制の公立大学の無償化や有給休暇の拡大などに総額1兆ドルを充てるほか、子育て世帯の税額控除など8000億ドル規模の減税を行う。育児や教育を巡る負担を減らし、働きやすい環境をつくることで経済成長と格差是正を目指す。
財源となる増税案では、トランプ前政権が引き下げた上位1%の高所得者に対する所得税の最高税率について、現行の37%から39・6%に引き上げる。また、所得100万ドル(約1億円)以上の超富裕層(納税者の0・3%)を対象に、株や不動産などの売却益に課税するキャピタルゲイン税率を現行の20%から39・6%に引き上げる。
米議会は環境インフラ投資計画の法案審議を優先しており、格差是正計画の審議は年末以降にずれ込む可能性がある。バイデン政権は「富裕層に応分の負担を求める増税で、所得が40万ドル以下の世帯は増税しない」と訴えるが、増税に反発する野党・共和党の賛同を得られる見通しは立っていない。【ワシントン中井正裕】
元稿:毎日新聞社 主要ニュース 国際 【特集・バイデン政権2021】 2021年04月29日 23:22:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。