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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【連載「五輪リスク」】:④漂う民意 「東京五輪の招致でもしていれば…」住民投票で大会の否定、欧米で相次ぐ

2021-05-11 08:30:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【連載「五輪リスク」】:④漂う民意 「東京五輪の招致でもしていれば…」住民投票で大会の否定、欧米で相次ぐ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【連載「五輪リスク」】:④漂う民意 「東京五輪の招致でもしていれば…」住民投票で大会の否定、欧米で相次ぐ

 ハンブルクは人口約180万人と、ドイツ第二の都市だ。4月下旬、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)で、飲食店は閉まり、夜間の外出禁止が続いていた。

 「もし、ハンブルク五輪が決まっていたら?建設費用が高騰している上に、このパンデミック(世界的大流行)で現実的でなくなっていたよ」。住民のフローラン・カジスカさん(40)が苦笑する。
カジスカさんが参加したドイツ・ハンブルク五輪の反対グループ。東京大会への抗議活動も行っており、日本語のメッセージがある=2019年、ハンブルク市で(クラッス・ルーイングさん提供)

 カジスカさんが参加したドイツ・ハンブルク五輪の反対グループ。東京大会への抗議活動も行っており、日本語のメッセージがある=2019年、ハンブルク市で(クラッス・ルーイングさん提供)

 この街には、2024年五輪・パラリンピックの招致計画があった。市は15年3月に招致を表明し、「港湾部を開発し、コンパクトで環境に配慮した大会に」とPRした。

 ◆「市と市民にとって重要」 住民投票が決定

 世論調査で約6割が開催を支持したが、「市と市民にとって非常に重要な問題だ」(市報道官)として住民投票の実施が決まる。カジスカさんは、仲間と開催反対運動を展開した。
 「大会には巨額の予算がかかる。当時は、中東からの難民の住宅問題も深刻だった。私たちは事実を示し反対を訴えたんだ」
 11月の投票では反対51・6%、賛成48・4%と逆転し、市は招致を断念した。
 欧米では近年、住民投票で大会招致を否定する例が相次ぐ。ドイツのミュンヘン、オーストリアのウィーンやインスブルック、スイスのシオン…。

 ◆高い関心、莫大な税金…「五輪はうってつけの課題」

 「五輪ほど、住民投票にうってつけの課題はないよなぁ。人々の関心は高いし、莫大な税金がかかるんやから」。市民団体「『国民投票/住民投票』情報室」(大阪市)の今井一事務局長(66)が言う。
今井一さん

今井一さん

 東京都は16年大会、20年大会と招致を経験したが、住民投票は行われなかった。実施したのは世論調査。イベントなどで五輪ムードを盛り上げ、開催支持率は上昇していった。
 世論調査は、電話で一人数分で終わる。住民投票は賛否両派が大量の資料を示し、数カ月間に及ぶこともある。今井さんは「世論調査で人の考えが変わることはない。でも、住民投票では自分が主権者だと自覚し、周囲と議論したり熟慮することになるんです」。
 住民投票は、暮らしに身近な問題を巡り各地で行われているように見えるが、実は地域的な偏りがある。
 情報室によると、条例に基づく住民投票の実施件数(1995~2020年)は、都道府県別で多い順に①埼玉県(41件)②長野、鹿児島県(29件)④北海道(27件)。これに対し、東京都は1件で全国最少だ。

◆都民投票条例の制定を求めたけれど

 今井さん自身、苦い経験がある。東日本大震災の翌12年、原発稼働の是非を問う都民投票条例の制定を求め、都に直接請求を行う運動を起こした。請求に必要な「有権者の2%」を上回る約32万人の署名を集めたが、都議会が否決。投票は幻に終わった。
 コロナ禍以降の世論調査で、今夏の五輪開催を支持する声は少数派。「中止すべきだ」「再延期すべきだ」の合計が多数を占めるが、その民意に政治や行政が応えているとは言い難い。
 「東京で招致時に住民投票をしていれば…」と今井さんは夢想する。「コロナ禍で『もう一度、投票を』となったのと違うかなぁ」
 

 元稿:東京新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社会 【話題・連載「五輪リスク」・東京オリンピック2020・パラリンピック】  2021年05月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【連載「五輪リスク」】:③聖火リレー 垣間見える商業五輪の醜さ スポンサーで成り立つ聖火リレー

2021-05-11 08:30:30 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【連載「五輪リスク」】:③聖火リレー 垣間見える商業五輪の醜さ スポンサーで成り立つ聖火リレー

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【連載「五輪リスク」】:③聖火リレー 垣間見える商業五輪の醜さ スポンサーで成り立つ聖火リレー 

 47都道府県で人口が最も少なく、県内総生産も最小の鳥取県。平井伸治知事(59)が、首都東京の五輪の聖火リレーを「アメリカナイズされた大騒ぎ」と評している。
聖火ランナーを先導するスポンサー企業の車列=三重県伊賀市で

聖火ランナーを先導するスポンサー企業の車列=三重県伊賀市で

 「私も米国暮らしの経験があるが、皆で踊って大騒ぎする文化だと思う。日本でも、大都会には派手なパレードはあると思う。でも、鳥取にはないです」

◆派手な車列に大音量の音楽 東京基準は非合理的

 聖火リレーは、約30台の車列が約800メートル続く。ランナーを先導するのは、大会スポンサーとなった企業の大型宣伝車。大音量で曲を流し、車上のDJ(ディスクジョッキー)が興奮を盛り上げる。
 新型コロナウイルスの感染拡大のさなか、有名人ランナー目当てに集まる人々に企業がグッズを配り、群集の「密」も生じた。
 4月、本紙のインタビューに応じた平井知事の口調は穏やかだが辛口だった。東京・秋葉原で生まれ育ち「東京の感覚は分かる」とした上で、「全国のリレーを東京基準で作るというのは合理的ではないのではないか」「地域になじむやり方がある」「商業主義と五輪の理想の調和を保つべきだ」と説いた。
 
鳥取県の平井伸治知事

鳥取県の平井伸治知事

 ◆3500万円削減 「地味で良い」

 財政が裕福でない鳥取県にとって、沿道警備や式典などリレーの費用9000万円の負担は重い。予算を少しでもコロナ対策に回し、沿道の密集を避けようと、見直しへ向けて組織委との交渉に入った。
 リレーは5月21、22日。当初計画では県内の走行距離は31キロだったが、半分の16キロに短縮する。市町村ごとの走行区間を極端に短くすることで、長い車列が通過する余地がなくなり、大型宣伝車の登場場面が激減する。予算も、約3500万円削ることができた。
 有名人ランナーは辞退した。「地味で良い」と平井知事は言う。
 そもそもリレーの目的は平和や友愛など五輪の理想を体現し、大会への関心を高めるためだ。
 「地方で皆が見たいのは同じ村のあの人、苦労してきたあの子が、聖火を持って堂々と走る姿ではないか。その体験を共有し、記憶に刻み込むことが、リレーの意義だと思う」

 ◆100億円の協賛金 リレー中止できない理由

 企業に広告を認める代わりに、莫大な協賛金を負担してもらう―。そんな「商業五輪」の源流は、1984年のロサンゼルス大会にさかのぼる。背景には、その8年前のモントリオール大会が巨額赤字を残したことへの反省があった。
 東京大会の聖火リレーがスポンサー優遇に見えるのはなぜなのか? 答えは単純である。リレーの財源が、約100億円のスポンサーの協賛金だからだ。
 国からの支出はない。都も他の道府県と同様に、都内の沿道警備や式典の費用を負担するだけだ。
 「世論の批判を浴びたからといって、リレーを途中で中止したら、スポンサーから『逸失利益を支払え』と言われかねない」。組織委の幹部は自嘲気味に続けた。「商業五輪の醜い姿を示してしまった」
 

 元稿:東京新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社会 【話題・連載「五輪リスク」・東京オリンピック2020・パラリンピック】  2021年05月03日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【連載「五輪リスク」】:②大会予算 「魔物」は膨張し続ける 招致時から1兆円も増えた東京五輪の開催経費

2021-05-11 08:30:20 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【連載「五輪リスク」】:②大会予算 「魔物」は膨張し続ける 招致時から1兆円も増えた東京五輪の開催経費

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【連載「五輪リスク」】:②大会予算 「魔物」は膨張し続ける 招致時から1兆円も増えた東京五輪の開催経費 

 4月初旬、東京アクアティクスセンター(東京都江東区)で開催された競泳の日本選手権。池江璃花子選手の復活を報じるテレビに無人の観客席が映ると、東京都の幹部がつぶやいた。
 
 「寂しいが仕方がない。無観客でも、中止よりはいいよ」
 
無観客で開催された競泳の日本選手権。スタンドに座るのは大会関係者だけだった=4月8日、東京都江東区の東京アクアティクスセンターで

 無観客で開催された競泳の日本選手権。スタンドに座るのは大会関係者だけだった=4月8日、東京都江東区の東京アクアティクスセンターで

 ◆観客「50%が最低ライン」だったが…

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京五輪・パラリンピックの観客をどうするか。国や都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などは海外の観客受け入れを断念し、焦点は国内の観客の扱いに絞られている。
 「50%が最低ラインだ」。8万人収容の国立競技場(新宿区)なら4万人。プロ野球などを引き合いに、関係者から強気な発言が相次いだ。「観客の問題にめどが付けば、一気に開催機運が盛り上がる」との声もあった。
 しかし、変異株の猛威で楽観論は崩れる。開催まで3カ月を切る中、国内の観客の判断は先送りされた。約2万人を入れて5月9日に国立競技場で行われる予定だった陸上のテスト大会も、無観客が決まった。

 ◆チケット代900億円が消える

 「もし観客を入れて感染が広がれば、五輪は失敗と言われてしまう。感染状況が劇的に改善しない限り、無観客は避けられないのでは…」。別の都幹部が悲観的な見方を示す。
 無観客開催は、もちろん五輪史上初。大会の盛り上がりが失われるだけでなく、総額900億円のチケット収入が消え、大会収支に深刻なダメージとなる。
 組織委の武藤敏郎事務総長は、観客全体の1~2割を占めるとされる海外の観客を断念した時点で、「(チケット減収分は)組織委の増収努力、歳出削減努力では全てをカバーしきれない」と表明していた。
 国内の観客までゼロとなれば、都や国の公的資金で負担するほかない。

 ◆目を背ける関係者

 五輪には「魔物」が潜んでいる、と言われる。実績のある選手が緊張から実力を出せない、そんな怖さを表現した言い回しだ。
 しかし、東京大会の「魔物」とは、膨張し続ける開催経費のことではないだろうか。
 招致段階では7340億円だったが、2019年12月時点で1兆3500億円に増加。さらにコロナ禍による1年延期と感染防止対策で2940億円が加わり、現在は1兆6440億円とされる。国と都は約9000億円の負担が決まっている。
 ある組織委幹部が、延期と感染防止対策にかかる「2940億円」について内情を明かした。「最初から『3000億円以内』との考え方でまとめた数字。実際にいくらかかるかは感染状況次第で、やってみないと分からない」
 収束が見えないコロナ禍で、都議会では共産が五輪反対に回ったが、都幹部は「ここでやめたら、投入した全部が無駄になる」と一蹴。都の追加負担について尋ねると、議論を封じるかのようにつぶやいた。
 
 「その話は、大会が終わってからだ」
 

 元稿:東京新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社会 【話題・連載「五輪リスク」・東京オリンピック2020・パラリンピック】  2021年05月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【連載「五輪リスク」】:①コロナ拡大 東京五輪が社会のリスクに 今も続く医師、看護師の大量派遣依頼、現場は「不可能だ」

2021-05-11 08:30:10 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【連載「五輪リスク」】:①コロナ拡大 東京五輪が社会のリスクに 今も続く医師、看護師の大量派遣依頼、現場は「不可能だ」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【連載「五輪リスク」】:①コロナ拡大 東京五輪が社会のリスクに 今も続く医師、看護師の大量派遣依頼、現場は「不可能だ」

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、東京五輪・パラリンピックが社会の安全を脅かすリスクになっている。大会の意義に立ち返りながら「どうあるべきか」を問う。(臼井康兆、原田遼、藤川大樹、岡本太)

大会組織委員会が日本看護協会に協力を求めた文書

大会組織委員会が日本看護協会に協力を求めた文書

 ◆平身低頭のお願い文書

 「新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に伴い、看護職の確保が不十分な状況に至っております」
 東京五輪・パラリンピックのため、大会組織委員会が日本看護協会へ送った4月9日付の文書。「大会にご活動頂く看護職の確保に関するご協力について」と題するA4、2枚を、本紙は入手した。
 平身低頭、お願いや協力を依頼する文言が繰り返されていた。
 組織委は、大会期間とその前後に計500人の看護職の派遣を依頼。条件は、1人当たり原則5日以上で、「早朝、深夜の場合あり」「飲食を提供予定(調整中)」と書かれている。
 日本看護協会は本紙の取材に「組織委への回答を公表する予定はない」と言葉を濁した。

 ◆看護師「現場から送り込む余裕ない」

 ある看護師は「資格を持ちながら離職している『潜在看護師』の活用を考えているのでは」と推測しつつ、「現場から看護師を送り込む余裕はない。もし動員したら、一般の診療に影響が出る恐れがある」と心配した。
 大会に必要な医療スタッフは当初、約1万人が見込まれた。競技場や選手村などに1日当たり最大で医師約300人、看護師約400人が必要という。

 ◆都医師会の理事「ワクチンで手いっぱい」

 真夏の大会では、熱中症も懸念される。東京都医師会は、競技場とは別に、最寄り駅と競技場間に設けられる救護所用に、延べ1000人の派遣を都から求められている。
 都医師会の新井悟理事は「地域の医師はワクチン接種で手いっぱいだ。医師資格を持つ自衛官にも接種を頼むくらい人手が足りないのに、派遣は不可能だ」と首を振る。
東京都医師会の新井悟理事

東京都医師会の新井悟理事

 満員の観客か、50%か、無観客か―。大会は、競技場にどのくらいの人数を入れるかが決まっていない。新井理事は、観客数に応じて必要な医療従事者の人数を割り出すのではなく、まず確保できる医療従事者の人数を確定させて、それに応じて観客数を決めるべきだ、と提案している。
 「逆にしないといけないんだ」

 ◆橋本会長「無観客も覚悟」

 大会に参加する選手は、五輪で約1万1000人、パラリンピックで約4400人。これに、5万人超の国際競技団体や海外メディアの関係者らが加わり、観客は最大で約1000万人に上る。
 組織委は「安全・安心な大会」を掲げ、感染対策に万全を期すと繰り返してきた。しかし開催が約80日後に迫る中、対応は追い付いていない。
 報道陣からの追及に、橋本聖子会長は「医療に支障を来してはいけない。現段階では、フルスタジアム(競技場に満員の観客)は難しいと理解している。無観客も覚悟している」と認めざるを得なかった。
 未曽有のコロナ禍で臨む「スポーツの祭典」。変異株が猛威を振るう中、大会期間中に感染状況が今よりも悪化し、医療が逼迫する可能性も否定できない。マンパワーが確保できるかどうか分からないまま、本番に突入しようとしている。
 

 元稿:東京新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社会 【話題・連載「五輪リスク」・東京オリンピック2020・パラリンピック】  2021年05月01日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【東京五輪】:医療ひっ迫でも強行――菅首相の危険な賭け

2021-05-11 08:11:00 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【東京五輪】:医療ひっ迫でも強行――菅首相の危険な賭け

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪】:医療ひっ迫でも強行――菅首相の危険な賭け 

 菅首相は5月7日夜の記者会見で、コロナ禍で開催が危ぶまれる東京五輪・パラリンピックについて、「感染対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現する」と述べた。

  緊急事態宣言の5月末までの延長を決め、記者会見する菅首相=7日夜、首相官邸で(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 感染対策の具体例としては、国際オリンピック委員会(IOC)による各国選手へのワクチン供与や、選手や大会関係者と一般国民が交わらないようにするいわゆる「バブル方式」の実施、そして、選手への毎日の検査実施を挙げた。

 しかし、これで本当に国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現できるのだろうか。

 筆者は官邸報道室による抽選に当たり、7日の記者会見に出席した。菅首相の会見を間近で見聞きし、いくつか気づいた点を記したい。

 ●菅首相の口から「医療提供体制」の言葉出ず

菅首相の会見で一番驚いたのが、五輪開催に当たって、ひっ迫する医療提供体制について何らの言及がなかったことだ。記者会見では「医療提供体制」や「医療提供」との言葉は菅首相の口からは出てこなかった。菅首相は意図的に、逼迫する医療提供体制について口にするのを避けたのだろうか。

 しかし、医療提供体制は重要だ。

 平昌冬季五輪組織委員会の医務専門委員を務めた韓国の新型コロナウイルス専門家、タン・ヒョンギョン氏は筆者の取材に対し、東京五輪開催に当たり、「まずチェックすべき点は、東京での感染レベルや医療提供能力、さらには検査を含めた疫学的サーベイランス(調査監視)能力がどのような状況にあるかだ」と指摘する。

 そして、「感染レベルがあまりに高かったり、病院や公衆衛生の能力があまりに低かったりする場合には、五輪を開催することは危険だ。それは、どれほど多くの非医薬品介入(ワクチンといった医薬品以外の公衆衛生上の対策)を実施しようとも危険だ」と述べる。

2018年2月の韓国平昌五輪組織委員会で医務専門委員を務めたミズメディ・ウィメンズ病院の内科医、タン・ヒョンギョン氏(2月3日放映の韓国国際放送アリランテレビの番組動画を筆者がキャプチャー)
2018年2月の韓国平昌五輪組織委員会で医務専門委員を務めたミズメディ・ウィメンズ病院の内科医、タン・ヒョンギョン氏(2月3日放映の韓国国際放送アリランテレビの番組動画を筆者がキャプチャー)

 つまり、選手らが外部との接触を断つ「バブル方式」といった公衆衛生上の感染対策をいかに厳格に実施しようと、東京都の医療提供体制がひっ迫していては、五輪開催はリスキーだとタン氏は指摘している。

 それはそうだろう。コロナの感染拡大が止まらずに、国民への医療提供がさらにひっ迫して厳しい状況に陥っていれば、五輪選手への医療提供もおぼつかなくなるだろう。さらに、医療ひっ迫の中、五輪選手への医療を優先すれば、国民への医療提供がさらに難しくなるだろう。

 問題は、現に東京の医療体制が既にひっ迫していることだ。5月6日に開催された東京都モニタリング会議資料では、東京の医療提供体制については、4段階の中で一番厳しい段階にある「体制が逼迫していると思われる/通常の医療が大きく制限されていると思われる」と指摘されている。

 これに対し、東京オリパラ大会中は、1日当たり最大で医師300人と看護師400人からなる医療従事者約1万人が必要と見込まれている。そして、9都道県の43会場に130カ所以上の医務室を設けるほか、大会指定病院としては都内約10カ所、都外約20カ所が予定されている。また、東京都の現在の検査件数が1万前後にもかかわらず、選手1万5000人とコーチら関係者に毎日検査を実施する方針でいる。

 組織委が大会期間中に看護師500人の確保を要請する文書を日本看護協会に送り、コロナ患者の対応で忙殺される現場の看護師から大きな反発が広がっているのは今や、誰もが知るところだろう。

 ソウルにあるミズメディ・ウィメンズ病院の内科医を務めるタン氏は、「五輪大会の現場には、選手と大会関係者専用の診療所が設置され、早急に必要な医療サービスを彼らに提供する。しかし、込み入った複雑な医療サービスや、メディアやスポンサー関係者のためには、地域の病院を使わざるを得なくなる。スポーツに関連したけがのほか、不慮の事故による負傷、感染症、虫垂炎、心臓まひ、骨折といった医療問題が常に起きる」と述べる。五輪期間中には多様な医療ニーズが発生し、それに十分に備えなくてはいけなくなるとの指摘だ。

 菅首相は、感染がさらに拡大し、東京の医療提供能力が現在の大阪や兵庫のようになっても、あくまで五輪開催を強行するのだろうか。国民の命より五輪が重いはずはない。感染拡大が止まらず、国民への医療提供体制が厳しい場合には、五輪中止をバッハIOC会長に要請すべきだろう。

 ●「ワクチンは100%効くものではない」

 菅首相は会見で、「長引く感染対策の決め手となるのがワクチン」と述べ、自らの陣頭指揮でワクチン接種を加速していく方針を示した。確かに、国民へのワクチン接種を早めれば、集団免疫を獲得し、コロナ禍を一刻も早く終息させることができるだろう。

 しかし、タン氏は「変異株が現実の脅威になっている。ワクチンは100%効くものではない。ワクチンは、ウイルスの感染からすべてを守ってくれはしない」と指摘する。

 そのうえで、タン氏は「私の最大の心配は、現在の診断法をくぐり抜ける新たな変異株が出現することだ。現在の検査で確認できない変異株が出現したらいったいどうなるのか。それは若い選手の間で無症状感染を起こし、感染リスクの高い脆弱な人々の間では、重病をきたす。さらに、選手らがそれらの変異株を世界中のそれぞれの母国に持ち帰ったらどうなるのか。カオス(大混乱)以外の何物でもない」と警鐘を鳴らした。

 福島第一原発事故に象徴されるように、日本は過去に最悪のシナリオを想定せずに、大規模な被害に見舞われてきた痛い経験がある。タン氏の指摘するような新たな変異株の脅威を東京五輪でもしっかりと認識する必要があるだろう。

 ●五輪ありきでは政策判断を間違える

 政府は昨年来、常に最初に「五輪ありき」で、五輪がコロナ対策の足かせになっている向きがある。多くの国民の目にも、政府が「何が何でも五輪強行」「感染拡大でも五輪強行」と映っているのではないか。

 例えば、昨年4月の第1回目の緊急事態宣言は、安倍前首相とバッハIOC会長が五輪開催の1年延長を合意してから、ようやく発令された。感染が広がる中、後手に回ったと批判された。

 第2回目の緊急事態宣言は今年3月、聖火リレー開始直前に解除された。

 そして、今回の第3回目の緊急事態宣言は当初、バッハ会長の来日前の11日に解除が設定された。バッハ訪日を意識しての先に「出口ありき」の様相だった。

 緊急事態宣言発令にせよ、解除にせよ、あまりにも五輪関連の行事日程に縛られていないか。五輪開催を優先するあまり、感染対策が後手に回ることはなかったか。五輪を政権浮揚への追い風とし、その勢いで解散総選挙に持っていこうとの政治的思惑が筆者には透けて見える。

 しかし、これは菅首相にとって、危険な賭けでもある。五輪ありきで、コロナ対策の政策判断を誤ったり、鈍らせたりすれば、それはより多くの国民の命が失われることになるからだ。

●人命より政治を優先させたモディ首相

 その最たる例が感染大爆発に見舞われているインドのモディ首相だ。モディ首相は、コロナ第4波が押し寄せる中で行われた4月の選挙で、与党候補を応援するために各地に出向き、多くの群衆を選挙集会に集めた。さらに支持基盤であるヒンドゥー保守派に配慮して、ヒンドゥーの宗教行事で密が発生するのを防がなかった。このため、インドのコロナ禍は、人命より政治を優先させたモディ政権による人災だと批判の声が上がっている。

インドのモディ首相
インドのモディ首相写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 菅首相も、五輪開催を通じて、かりに感染を大爆発させたならば、モディ首相同様、国民への医療よりも政治的思惑を優先させたスーパースプレッダー(超感染拡散者)との汚名を免れなくなるかもしれない。

 ●五輪開催の意義

 最後に、パンデミック禍での五輪開催の意義とは何なのか、改めて考えたい。本来、五輪は単なるスポーツ競技イベントではなく、世界の平和の祭典や祝典のはずだ。

 しかし、世界の新規感染者数は10週連続、死者数も7週連続でそれぞれ増加中だ。今、祭りごとをしている場合だろうか。

 前述のモディ政権の失策もあり、感染爆発に見舞われるインドでは、1日当たり41万人を超える過去最多の新規感染者数が確認されている。ネパールやスリランカ、カンボジアなどでも日々過去最多の新規感染者数が報告されている。タイでは感染死者数が更新し続けている。

 「オリンピック精神においては友情、 連帯、 フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる」。オリンピック憲章はこううたう。

 パンデミック禍で世界の多くの人々と国々が苦しみに見舞われる中、五輪を強行開催することは、このオリンピック精神に反すると筆者は考えている。今は国際協調で世界各国がコロナを終息させるという世界平和の構築を何よりも優先すべきで、世界平和の祝典をやっている場合ではないと思っている。逆に、五輪を強行開催すれば、パンデミックという人類の重大な問題から私たちの関心や注意をそらすことにならないだろうか。

 元稿:Yahooニュース 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック・担当:高橋浩祐 | 国際ジャーナリスト】 2021年05月08日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【深層探訪】:五輪開催、揺らぐ「安全」 感染対策に逆行の恐れ

2021-05-11 08:10:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【深層探訪】:五輪開催、揺らぐ「安全」 感染対策に逆行の恐れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【深層探訪】:五輪開催、揺らぐ「安全」 感染対策に逆行の恐れ

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、菅義偉首相は緊急事態宣言の延長に追い込まれた。2カ月半後に迫った東京五輪・パラリンピックを予定通り開催する方針は崩していないが、首相が掲げる「安全・安心の大会」は揺らぎつつある。開催が感染を広げる恐れに加え、ただでさえ遅れるワクチン接種の妨げになるとの指摘もあり、延期や中止を求める声が一段と高まりそうだ。

【図解】5カ国世論調査 東京五輪・パラリンピック開催  

 ◇不安視する医療関係者  

「まずは感染拡大防止に全力を投入する。対策を徹底することで安全・安心な大会を実現することは可能だ」。首相は7日夜の記者会見で、五輪中止論にこう反論した。

 首相は就任以来、五輪を開催する方針を貫いてきた。高齢者向けワクチン接種完了の目標時期を「7月末」としたのも、「予定通りに五輪を開催するため」(政府関係者)の環境整備の一環だ。感染対策が期待した効果を挙げていないがゆえの宣言延長だが、首相官邸の幹部は「感染対策は感染対策、五輪は五輪だ」と強気だ。

 しかし、関西圏を中心に猛威を振るう変異ウイルスは全国に飛び火し、4都府県に出された緊急事態宣言は5月末まで延長されるだけでなく、愛知、福岡両県に拡大。与党関係者は思わず「五輪はできなくなる」と漏らした。

 五輪関連行事にもじわりと影響が出ている。各地を巡る聖火リレーは予定を変更し、無観客や公道を回避するケースが目立つ。政府や大会組織委員会は観客数の上限を4月中に判断する方針だったが、6月に先送りした。無観客の可能性も取り沙汰され、受け入れ準備は手付かずのままだ。

 専門家からも不安視する声が相次ぐ。日本医師会の釜萢敏常任理事は7日の基本的対処方針分科会に出席後、五輪への影響について記者団から問われ、「感染症拡大を何とか下げたいと思っている立場からすれば、なかなか難しい」と心情を吐露。開催の可否に関し、分科会の尾身茂会長は4月末から「その時になって判断するのでは遅い。感染レベルや医療の逼迫(ひっぱく)を考慮し、議論をすべき時期に来た」と警告してきた。

 国際社会の視線も厳しい。米紙ワシントン・ポストは5日、開催方針を譲らない国際オリンピック委員会(IOC)とバッハ会長を批判し、日本政府に中止の決断を求めるコラムを掲載した。

 ◇「ワクチン接種優先を」

 4月下旬、組織委が日本看護協会に看護師500人の派遣を求めていたことが発覚すると、ツイッター上でコロナ対応優先を求める声が広がった。首相は同30日、記者団に「休まれている方もたくさんいると聞いている。可能だ」と主張したが、ワクチン接種が進まない背景に打ち手不足があるのは事実。立憲民主党の泉健太氏は7日の衆院議院運営委員会で「五輪は延期か中止し、ワクチン接種と治療を優先させよう」と訴えた。

 政府の頼みの綱はIOCだ。首相は会見で、米製薬大手ファイザー社トップが先の電話会談の際、各国選手団へのワクチン無償提供を申し出たため、首相がIOCに話をつないだと明かした。IOCは6日に無償提供を発表。政府関係者は「IOCは開催する方向で動いている」と強調した。

 五輪開幕は7月23日に迫る。収束への道筋は一向に見えないが、政府高官は7日、感染状況が日本よりはるかに厳しい米国などでのスポーツイベントを引き合いに「日本が開催できない状況なのか」と延期・中止論に不満を示した。

 元稿:時事通信社 JIJI.com 政治 【政局・コラム・「深層探訪」】  2021年05月08日  08:32:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【警察庁】:女性選手画像を無断転用で自営業の男逮捕、社会問題化を受けて

2021-05-11 08:05:30 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【警察庁】:女性選手画像を無断転用で自営業の男逮捕、社会問題化を受けて

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【警察庁】:女性選手画像を無断転用で自営業の男逮捕、社会問題化を受けて 

 テレビ番組に映った女性アスリートの画像を無断で転用し、アダルトサイトに公開したとして、警視庁保安課が著作権法違反容疑で自営業の男(37)を逮捕したことが10日、捜査関係者への取材で分かった。逮捕は9日。性的な意図で切り取った女性選手の画像や動画が拡散される被害は社会問題となっており、東京五輪・パラリンピックを控え、事態を重く見た捜査当局が立件に踏み切った。

 捜査関係者によると、逮捕容疑は、自身が運営するアダルトサイトで、番組の選手画像を見られるようにして、番組制作会社の著作権を侵害した疑い。

 性的画像を巡る問題は昨年8月、日本陸上競技連盟のアスリート委員会に選手が相談して表面化。競技と関係がない性的な意図で選手の写真や動画を撮影し、みだらな文章と共に会員制交流サイト(SNS)などで拡散される被害が多発しており、被害は中高生にも広がっている。

 日本オリンピック委員会(JOC)などスポーツ7団体は同11月、被害撲滅に取り組む共同声明を発表。盗撮や写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿を「卑劣な行為」と非難し、犯罪として処罰され、損害賠償請求の対象になる可能性があると警告した。設置した情報提供窓口には、今月10日時点で約1000件の情報が寄せられているという。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【警視庁・疑惑・テレビ番組に映った女性アスリートの画像を無断で転用】  2021年05月11日  08:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:経団連会長交代 存在意義から問い直せ

2021-05-11 06:51:50 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【社説①】:経団連会長交代 存在意義から問い直せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:経団連会長交代 存在意義から問い直せ

 経団連の中西宏明会長の退任が決まった。体調問題が理由で、やむを得ない判断だ。経団連自体の影響力低下が著しい中、新体制では存在意義も含めて組織のあり方を根本的に問い直すべきだ。

 日立製作所の会長でもあった中西氏はリンパ腫で闘病中だった。財界のリーダー役を続行することは困難だと自ら判断したことは妥当だとしても、後任人事には失望を感じざるを得ない。
 次期会長に内定した住友化学会長の十倉雅和氏の決定をめぐっては、経団連内で要職を務める経営者同士の水面下の調整により、無難な人選に落ち着いたとの印象がぬぐえない。
 経団連で最も深刻なのは、時代を見据えた情報発信能力の欠如である。コロナ禍を巡っても、企業や社会を救うための有効な提案を発する場面は少なく、経済界を代表する組織としては物足りない。
 景気の低迷期であっても、政府や日銀が金融緩和で株価を下支えし、多くの大企業の財務環境は良好だ。その結果、企業の内部留保は過去最高額に達している。
 にもかかわらず、経団連は今年の春闘でも、賃金を抑制する姿勢ばかりが目立った。
 大企業の経営者が足元の決算を優先し、人件費の削減ばかりに注力する姿勢は、経団連内部にも浸透しているのだろう。
 旧態依然気味の人事を繰り返して、国民生活への目線も欠く経団連が生まれ変わるには、新しい産業にも通暁し、日本経済全体をけん引する力量を備えた人材の抜てきが必要なはずだ。
 中西氏が正式に退任する六月の定時総会では、IT大手「ディー・エヌ・エー(DeNA)」の南場智子会長が経団連史上初の女性副会長に就任するが、例えば南場氏を含む新興勢力のトップの中から後任の会長を選び、それを副会長が支える体制を敷くのも一案ではなかったか。
 株価の時価総額をみると、日本勢は米中の企業と比べて苦戦してはいるが、国内総生産(GDP)は世界第三位を維持し、有数の対外債権国でもある。
 問題は保有する莫大(ばくだい)な資金を生かす技術革新能力の低下だ。名だたる企業が参加する経団連は改革の先頭に立つべきだが、現実はかけ離れた存在になっている。
 経団連が政治と深く関わり影響力を発揮する時代は終わった。既存勢力の維持に腐心するのではなく、時代と向き合う新たな組織の構築を強く求めたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月11日  06:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説②】:入管収容で死亡 許されぬ人権軽視だ

2021-05-11 06:51:40 | 【移民・難民・亡命・密入国・入管・在留資格・日本語学校・偽装結婚・技能実習生他】

【社説②】:入管収容で死亡 許されぬ人権軽視だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:入管収容で死亡 許されぬ人権軽視だ

 日本語を学び、母国で語学学校を開くことを夢見たスリランカ人女性が三月、名古屋出入国在留管理局の収容施設で亡くなった。その死は、審議中の入管難民法の改正案にも課題を突きつけている。

 亡くなったのは母国の大学を卒業後、二〇一七年に留学ビザで来日したウィシュマ・サンダマリさん(33)。日本語学校の学費が払えなくなり、退学。不法滞在で国外退去を命じられ、二〇年八月に収容された。徐々に体調が悪化し、今年三月六日に死亡した。
 難民らを支援する市民団体、START(名古屋市中区)によると、嘔吐(おうと)を繰り返し「収容後、二十キロやせた」と話した。点滴投与や入院治療、一時的に拘束が解かれる「仮放免」も求めたが、いずれも認められなかったという。
 上川陽子法相が調査を指示し、法務省が四月上旬にまとめた中間報告はなぜ入院治療させなかったのかさえ、明確にしていない。死因が特定されず、医師が仮放免を勧めていた事実も盛り込まれないなど中身は不十分だ。再発防止につなげるためにも、誠実な調査に基づく最終報告を強く望みたい。
 まさに今、国会で審議されている入管難民法の改正案は、国外退去を命じられた外国人が帰国を拒むなどして、常態化する長期収容を解消する狙いがある。国外退去を拒否する人に刑事罰を科したり、難民認定の手続き中でも送還できるようにしたりする内容だ。
 自国に戻れば死の危険もある「難民」に対し、わが国の認定率の低さはかねて指摘されている。国連難民高等弁務官事務所や国連人権理事会の特別報告者は、改正案はさらに「人権に配慮を欠く」などとして懸念を表明している。
 STARTによると、ウィシュマさんは元交際相手に脅されており、母国に戻ると身に危険が迫ると訴え、日本への残留を望んでいた。長期収容を避けるため、当事者の事情は考慮しない入管の「送還一本やり」の姿勢が、今回の悲劇の背景にあると批判する。
 入管施設における外国人の死は毎年のように報告されている。「ブラックボックス化」も指摘される入管の権限や裁量を広げる改正案が、このまま採決されることには疑問が残る。
 「日本人は優しい」と母国の教え子たちにも来日を勧めていたというウィシュマさんの死を受け、母親は「娘は動物ではなく、人間だ」と泣き叫んだという。こうした悲劇が繰り返されないための法改正であるべきだ。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月11日  06:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:どうも、住宅街にカラスが増えている気がすると知人が教えてく…

2021-05-11 06:51:30 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【筆洗】:どうも、住宅街にカラスが増えている気がすると知人が教えてく…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:どうも、住宅街にカラスが増えている気がすると知人が教えてく…

 どうも、住宅街にカラスが増えている気がすると知人が教えてくれた。繁華街にいたカラスが住宅街に移動してきていないかというのが、この人の見立てである▼推理は続く。新型コロナウイルスの感染対策で繁華街の飲食店が時短営業や休業となっている。残念ながら、閉店に追い込まれた店もあるだろう。結果、カラスのエサとなる繁華街の生ごみは減り、これに見切りをつけたカラスが住宅街に目をつけた−とこの人は分析する。なるほど。在宅勤務や外出自粛で住宅街のごみはむしろ増えているか▼言われてみれば、自分の家の近くでもカラスが増えた気がしないでもない。データがなく、カラスの移動についてはなんとも判断できないが、鳥の中でも知恵の働くカラスのこと、そういう工夫もひょっとしてあるかもしれぬ▼つまらぬことを思い出した。カラスの鳴き声。カアカアやアホウがまず浮かぶ一方、万葉集では<児(こ)ろ来(く)とそ鳴く>▼「児ろ来」とは「あの人が来る」という意味だが、このご時世とカラスの引っ越しの話に「コロ(ナ)来」とか「コロ(ナ)苦」とかそれこそアホウな聞きなしをつい考えてしまう▼愛鳥週間である。コロナ禍で世の中は、野に山にと野鳥を気軽に見に行ける雰囲気でもなく、身近なカラスの顔が浮かんだ。人間ばかりではなく、おまえにもいろいろクロウ(CROW)があろうて。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2021年05月11日  06:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【菅首相の一日】: 5月10日(月)

2021-05-11 06:51:20 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・優生訴訟・年収「103万円」の壁】

【菅首相の一日】: 5月10日(月)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【菅首相の一日】: 5月10日(月)

 【午前】6時56分、官邸。7時、坂井学官房副長官。38分、岡田直樹官房副長官。8時47分、国会。58分、衆院予算委員会。

 【午後】0時8分、官邸。45分、国会。59分、参院予算委員会。4時15分、官邸。56分、国会。5時1分、自民党役員会。26分、官邸。6時、厚生労働省の樽見英樹事務次官、迫井正深医政局長、田中誠二職業安定局長。7時1分、衆院第2議員会館。38分、東京・赤坂の衆院議員宿舎。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2021年05月11日  07:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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【地方自治法】:与党が改正案 地方議員のなり手確保へ規制緩和 

2021-05-11 06:10:50 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【地方自治法】:与党が改正案 地方議員のなり手確保へ規制緩和 

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【地方自治法】:与党が改正案 地方議員のなり手確保へ規制緩和

 地方議員のなり手確保策を盛り込んだ地方自治法改正案を、自民党など与党が議員立法として今国会に提出する方向で最終調整していることが10日、関係者への取材で分かった。自治体と取引のある個人事業主が議員になることを禁じる兼業規制を緩和し、地域の商店経営者らが立候補しやすい環境をつくることが柱。野党側にも賛同を呼び掛け、会期内の成立を目指す。

 兼業規制の緩和を巡っては、首相の諮問機関である地方制度調査会が昨年6月の答申で「検討が必要」と明記。市議会や町村議会でつくる地方団体から早期の法改正を求める声が上がっていた。(共同通信)

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2021年05月11日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政府】:マイナンバーカード 22年度末までに全国民に普及する?

2021-05-11 06:10:40 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・優生訴訟・年収「103万円」の壁】

【政府】:マイナンバーカード 22年度末までに全国民に普及する?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:マイナンバーカード 22年度末までに全国民に普及する?

 ■<ここが論点・デジタル法案>

◆マイナポイントの効果絶大、申請は国民の約4割に

 マイナンバーカードを持つ人に最大5000円分のポイントを付与する政府のマイナポイント事業で、対象となるカードの交付申請期間が4月末、終了した。
 
 事業はカード普及を目指して昨年9月に開始。11月末からはスマートフォンで申請できるQRコード付き交付申請書も未取得者に送り、普及を後押しした。
 
 効果は絶大だった。5月6日時点のカード交付件数は3825万枚で、交付率は30.1%。昨年4月1日時点の16%から大幅に増えた。交付待ちの人を含めた申請件数は4951万件で、全人口の4割に迫る。
 

 ◆「デジタル社会のパスポート」

 「デジタル社会のパスポート」。平井卓也デジタル改革担当相はマイナンバーカードをそう表現する。今回の関連法案で新設されるデジタル庁はカードの普及や利用拡大も担う。政府は2022年度末までに全国民取得の目標を掲げる。
 
 これまではコンビニでの住民票取得くらいしかカードの使い道がなく、紛失などの不安もあって取得は進まなかった。法案を巡る審議では、菅義偉首相がマイナンバー制度に関する国費支出が過去9年間で約8800億円に上ると明らかにし、コストパフォーマンスが「悪すぎる」と普及の遅れを認める一幕もあった。

◆24年度末、免許証とカードの一体化へ

 政府は22年度中にカード機能のスマホ搭載、24年度末に運転免許証とカードの一体化を予定している。平井氏は「ここまでカードが普及すると民間による利用も急激に進む」と期待する。
 
 しかし、今年3月から本格運用する予定だったカードの健康保険証としての利用は不具合が相次いで10月に先送りされ、政府の工程は早速つまずいた。ポイント付与も終了し「22年度末までの全国民取得」が実現できるかは見通せない。(井上峻輔)
 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・平井卓也デジタル改革担当相はマイナンバーカード・「デジタル社会のパスポート」】  2021年05月11日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【米国】:道路交通安全局がホンダ車「アコード」110万台を調査

2021-05-11 01:26:30 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【米国】:道路交通安全局がホンダ車「アコード」110万台を調査

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【米国】:道路交通安全局がホンダ車「アコード」110万台を調査

 米道路交通安全局(NHTSA)は10日、ホンダのセダン「アコード」のステアリング装置に不具合がある恐れがあるとして調査を始めると発表した。調査対象は2013~15年型で、ロイター通信によると、110万台を超えるという。

 ステアリング装置は車両の進行方向を変えるためのシステム。運転中に突然、意図した走行経路から外れるといった可能性がある。事故につながったとの訴えが2件寄せられているという。

 アコードはホンダの米国での新車販売を支える人気車種の1つ。NHTSAは13年型の不具合を巡る調査の請願書を昨年10月に受領し、情報収集などを進めていた。

 ホンダは「安全に関する全ての懸念を真摯(しんし)に受け止め、調査に協力する」との声明を出した。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・米国・道路交通安全局(NHTSA)・ホンダのセダン「アコード」のステアリング装置に不具合がある恐れ】  2021年05月11日  01:26:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【福島県警】:出資法違反容疑で男2人逮捕、女性4人から5000万円超不正に集めた疑い

2021-05-11 01:13:30 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【福島県警】:出資法違反容疑で男2人逮捕、女性4人から5000万円超不正に集めた疑い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【福島県警】:出資法違反容疑で男2人逮捕、女性4人から5000万円超不正に集めた疑い

 福島県警いわき中央署などは10日、元本保証の投資話を持ち掛けて、女性4人から計5000万円超を集めたとして、出資法(預かり金禁止)違反容疑で、住所不詳、自営業渡辺裕幸容疑者(40)と、会社役員小野泰弘容疑者(59)を逮捕した。逮捕容疑は2017~19年、元本保証と高配当をうたって、いわき市の70代女性ら4人から計5320万円を不正に集めた疑い。

 昨年1月、いわき市の女性から「お金が戻ってこない」と同署に相談があり、捜査していた。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【事件・犯罪・疑惑】  2021年05月11日  01:13:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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