【社説②】:ガザの停戦合意 和平交渉 再開が急務だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:ガザの停戦合意 和平交渉 再開が急務だ
イスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは11日間の戦闘の末、停戦に合意した。
イスラエル軍はガザへの空爆を繰り返し、パレスチナ側は子どもを含め230人以上が犠牲となった。イスラエル側もハマスのロケット弾攻撃で12人が死亡した。
国際社会は再三、衝突の激化に懸念を示し、特にイスラエルに対しては過剰な武力行使だとして圧力を強めてきた。
ネタニヤフ首相はハマスの軍事拠点を徹底的に破壊するため戦闘継続にこだわったが、国内外で批判が強まり、エジプトの仲介でハマスと共に停戦を受け入れた。
停戦合意はしたが、イスラエル占領下の東エルサレムなどでパレスチナ住民の排除は続き、不満は強い。過去には短期で合意が崩壊したこともあり予断を許さない。
本格的な地域の安定には、オバマ米政権時代の2014年に途絶えた和平交渉を再開する必要がある。それには米国はじめ国際社会の努力が欠かせない。
紛争の根本にはイスラエル建国でパレスチナ人が土地を奪われたことがある。和平を模索し1993年、米国の仲介で「2国家共存」を目指すオスロ合意を結んだ。
しかし、イスラエルは国際法違反の入植地拡大を強硬に進めた。仲介役である米国のトランプ前政権はイスラエル偏重を鮮明にし、和平交渉は決定的に遠のいた。
こうした経緯や影響力の大きさを考えれば、米国には安定化を主導する責務がある。
就任当初は2国家共存を目指す考えを示したバイデン大統領だが、今回の交戦では当初からイスラエルとの関係を重視し、「揺るぎない支援」を表明した。
国連安全保障理事会が4回開かれ停戦を求める声明を模索したが、米国は水面下の外交努力を優先するとして拒否権を行使した。
バイデン氏はネタニヤフ氏とは繰り返し電話会談に臨んだ。イスラエルが停戦を受け入れたのは外交努力の成果と自賛したが、多くの一般市民が犠牲になった。遅きに失したとしか言いようがない。
バイデン政権が中東政策で最重要視するのはイラン核合意の再建だ。イランと敵対するイスラエルは核合意に反発しており、バイデン氏は理解を得るためイスラエルに配慮した可能性がある。
だが、国際協調と人権重視を掲げている以上、中東の火種の根本であるパレスチナ問題で公正な仲介役として尽力するのが当然だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年05月22日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。