【点描・永田町】:長男の違法接待が首相を痛撃
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【点描・永田町】:長男の違法接待が首相を痛撃
ワクチン接種開始で、コロナ禍脱出に光明が見え始めた矢先の総務省違法接待問題が、内閣支持率の下げ止まりで余裕を取り戻しつつあった菅義偉首相を痛撃した。接待側の“主役”が、首相の長男・正剛氏だったからだ。当初、国会での野党の追及に「全くの別人格」と色をなして反論した首相だが、接待時の音声録音まで暴露され、「記憶にない」としらを切り続けた総務省幹部が、次々に「自白」に追い込まれたため、自らも国会答弁で「大変申し訳ない。心からお詫びしたい」と、陳謝せざるを得なかった。
総務省は違法接待を受けた11人の幹部を2月24日に懲戒・訓告処分とすることで「一件落着」を図った。しかし、総務省の調査によって、首相側近の内閣広報官・山田真貴子氏が同省総務審議官時代に受けた「7万4000円余」の超高額違法接待も発覚。山田氏は25日の衆院予算委で「心の緩みがあった」など意味不明の釈明の末に謝罪し、給与の一部返納を申し出たが辞任は否定。しかし27日には入院し、結局3月1日に体調不良を理由に広報官を辞職するというドタバタ劇となった。
今回の大規模違法接待の原因については、「首相の長男がいるから断れなかった」(有力官庁幹部)との声が支配的。
しかし、処分された総務省幹部や山田氏は国会で「そういう認識はなかった」などと否定に躍起となった。ただ、与党内でも「長男を総務相政務秘書官に起用し、その後長男が総務省の利害関係会社に就職するのを認めた首相の責任は免れない」(自民幹部)との声が優勢。このため、「首相の政権運営での深刻なボディーブローになる」(同)ことは確実だ。
◇山田氏辞職での幕引きは困難
首相は2005年から07年まで副総務相、総務相を歴任。ふるさと納税制度創設やNHK受信料値下げなどで辣腕を発揮し、以来、「総務省は菅さんの天領」(閣僚経験者)とみられてきた。
今回の違法接待で処分された総務省幹部たちも、「菅さんの知遇を得て出世した人物ばかり」(同)とされるだけに、「違法接待は長男をきちんと指導しなかった首相の責任」(同)とみる向きが多い。
さらに首相にとって痛手となったのが、昨年9月の政権発足に合わせて、初の女性広報官に抜擢した山田氏までが、長男が絡む違法接待を受けて辞職に追い込まれたことだ。山田氏は首相記者会見の司会進行役で、これまでの会見では「1人1問で再質問なし」や「会見打ち切り」を主導してきた人物だ。さらに、昨秋首相のNHK番組出演時、男性キャスターの厳しい質問に、番組終了後NHK側に「総理が怒っている」などと、電話で抗議したとも報じられた。
山田氏の超高額接待に、野党側は25日の衆院予算委で集中砲火を浴びせ、広報官辞任を迫った。しかし、山田氏は「できる限り自らを改善していきたい」などと続投を表明、首相も「女性の広報官として頑張ってほしい」と擁護した。ただ、大阪など6府県の2月末での緊急事態宣言解除を決めた2月26日夜の首相記者会見が見送りになると、その代わりに行われた官邸での首相インタビューでは、記者団が肝心の宣言解除の理由などはそっちのけで、山田氏続投と会見見送りの関連を追及。
「全く関係ない」と否定した首相が、最後は「同じような質問ばかり」と逆切れし打ち切ったことで、ネット上も含めて国民的批判が噴出。
自民党内にも「辞任させなければ傷口が広がる」との声が相次ぎ、山田氏も辞職を余儀なくされた。首相は後任に外務省外務副報道官の小野日子氏の起用を決めたが、「これで幕引きとはならない」(自民幹部)との声が広がる【政治ジャーナリスト・泉 宏/「地方行政」3月8日号より】。
元稿:時事通信社 JIJI.com 政治 【政局・点描・永田町】 2021年03月14日 19:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。