【社説①】:緊急事態宣言延長 局面打開へ抜本対策を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:緊急事態宣言延長 局面打開へ抜本対策を
政府はきのう、新型コロナウイルス対策で北海道など9都道府県に発令している緊急事態宣言の期限を今月末から来月20日に延長することを決めた。
東京、大阪など4都府県で先月25日から始まった3度目の宣言は2カ月近くに及ぶことになった。
菅義偉首相が発令当初に掲げた短期集中の対策では感染を抑え込めず、北海道をはじめ全国に波及している。
医療体制は崩壊寸前のところが多い。休業要請を受ける飲食店なども経営が限界に達している。
従来のウイルスよりも感染力の強い英国型変異株の影響で新規感染者がなかなか減らない。
いまの施策を漫然と続けるだけでは感染抑止は期待できず、経済も疲弊する一方だ。
これまでの対策に何が足りないかを検証し、抜本的に立て直さなければ局面を打開できない。
東京や大阪は新規感染者数が減少しつつあるものの、高止まりしている。北海道や沖縄は感染の勢いが強く、依然増加傾向にある。
ところが、首相は記者会見で「今回の宣言により多くの都道府県で感染傾向は減少に転じており、効果は見られている」と強弁した。対策の甘さを直視しない態度がまたも鮮明になった。
宣言対象地域では、酒類やカラオケ設備を提供する飲食店への休業要請などの現在の対策を、ほぼそのまま継続する。
しかし、ぎりぎりの経営状況に追い込まれ、要請に応じない店舗も少なくない。
対策の実効性を高めるためには、経営基盤を底抜けさせないよう、協力金の引き上げや支給の迅速化を図るべきだ。
今後の感染抑止でカギを握るのは、英国型よりもさらに感染力が強いとされるインド型変異ウイルスへの対応だ。
渡航者などへの政府の水際対策は相変わらず後手に回っている。変異株を判定できる検査体制を強化し、感染者の早期発見と隔離を徹底する必要がある。
首相が対策の決め手と頼むワクチン接種も医師や看護師の確保がネックとなり順調とは言い難い。
それなのに、開幕まで2カ月を切った東京五輪に開催ありきで突き進む首相の姿勢は理解し難い。
首相は観客入りの開催にこだわっているとされ、影響の少ない延長期間を設定したという。
国民の生命や健康を第一に考えているのか。国のリーダーとしての認識が問われている。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年05月29日 09:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。