【 大谷昭宏のフラッシュアップ・04.18】:メディアは検証すべき 特定少年の実名報道
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【 大谷昭宏のフラッシュアップ・04.18】:メディアは検証すべき 特定少年の実名報道
少し前のことになるが、事件報道にかかわって50年余り、ある種の感慨をもって東海テレビ(名古屋)でニュースを伝えた。
昨年10月、甲府市で夫婦が殺害され、住宅が全焼した事件で、この家の長女と同級生だった19歳の男を甲府地検が殺人、放火などの罪で起訴。地検は少年法改正で18、19歳が特定少年とされたことから、実名を公表した。番組も少年を実名で顔写真をつけて報じた。
私はスタジオで、こうした判断はあくまで報道機関に委ねられていると説明。併せてこれまで被害者ばかりが報道されることへの批判が強かったことにもふれた。
さっそく先週、朝日、毎日、読売などが各報道機関の対応を報じた。それによると、これまで通り実名も顔写真もなしとしたのは東京新聞1紙だけ。対して実名、顔写真で報じたのは、日刊スポーツにも配信している共同通信や産経新聞。それに東海テレビも系列のフジ。TBS、テレビ朝日、日本テレビのキー局。最も多かったのが実名のみ顔写真なしで、朝日、毎日、読売、それに地元の山梨日日新聞、NHKなどだった。
だが、私はメディアが力を入れるべきは、これからではないかと思う。実名報道で少年の家族が困惑していないか。被害者や地域社会は平静か。何より今後の裁判員裁判に影響は出るのか。メディアが検証すべきは、それではないのか。
あまり報じられていないが、その裁判員にも4月から18、19歳が加わることになった。今回の事件の19歳の被告を19歳の裁判員が裁くことだってあり得るのだ。
さまざま、取り巻く環境が目まぐるしく変わっていく、「十九の春」である。
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2022年04月18日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。