東京都日野市の精神科病院「七生病院」で入院中に新型コロナウイルスに感染した際、複数の感染者と共に病室の外から施錠されて隔離され、精神的苦痛を受けたなどとして、東京都内の50代女性が病院長などに550万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、東京地裁立川支部(佐藤重憲裁判長)で開かれた。病院側は請求棄却を求めた。

 原告側は意見陳述で「裁判を通じて、コロナの流行で(精神科病院の入院患者の)人権がじゅうりんされるのを防ぐ一助にしたい」と主張。病院側の担当者は取材に「係争中の案件についてはコメントできない」と述べた。

 訴状によると、女性は十数年前にうつ病と診断され、症状悪化により2017年2月~21年7月に入院。大規模なクラスター(感染者集団)が発生した21年3月に陽性となり、他の感染者5人ほどと一緒に同10~20日、劣悪な環境の病室に法令上の根拠もなく隔離された。

 病室には南京錠がかけられて簡易トイレ一つだけが置かれ、ナースコールの設備もなかった。入浴や歯磨きもできず、適切な治療がないまま陰性になるまで閉じ込められたと説明。「監禁で人間の尊厳が否定される苦しみを味わった」と訴えた。

 さらに、入院は任意で症状安定後に退院を希望したのに、病院が適切な支援をせず長期化したと主張。この点も請求額に盛り込んだ。(共同)