【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい
ウクライナ東部からロシアが侵攻を始めて9カ月以上となる。この状況を伝える報道に問題はないか? それを考えるシンポジウムが11月1日にあり私も参加した。会場からも質問が次々に出る活発なやりとりに主催団体からも「やって良かった」との言葉が聞かれた。
しかし数日後、その主催団体のメンバーの一人が私を名指しして「ウクライナ関係でいいかげんなことを吹聴した」と中傷する内容を周囲に送っていた。シンポジウムで私が語ったのは根拠が明確でない国際報道の問題点であって、知りもしないウクライナの状況についてではない。
悪質な流言だが、そのメンバーは通信社で国際報道に従事していた元記者ということだ。それに私は驚かない。国際報道には、そうした根拠不明な内容を報じるケースが散見されるというのがシンポジウムでの私の発言の趣旨だった。例えばウクライナ発の情報であればゼレンスキー大統領のSNS上の発言以外は、現地の報道や欧米の報道に依拠することが多い。それをあたかも自社が確認した内容のように報じる点に危険がある。それゆえ、情報源の明示が重要になるということを指摘したものだ。さきの米中間選挙でも「トランプ派善戦」といった報道の混乱が見られるが、確認していない現地報道に依拠する粗さに原因を見る。
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普天間基地(C)日刊ゲンダイ
しかし国内報道でも、沖縄をめぐる報道にはなぜかそうした粗さが見られる。例えば普天間基地の辺野古移設。安倍元首相は何度も「辺野古移設が唯一の選択肢」と繰り返し、それをメディアは報じ続けた。それは菅政権、岸田政権でも踏襲された。私は岸田首相が国会の演説でそれに言及した時に、その言説をファクトチェックした。そして、他の選択肢が日米防衛関係者から既に提案されている事実を紹介し、「誤り」と判定した。その後、岸田首相は「唯一の選択肢という方針」に表現を変えている。それは小欄で紹介したが、「方針」は正しい。事実は変更できないが、方針は変更が可能だ。
小欄は今回で終わる。第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。最後も沖縄で終わりたい。鳩山由紀夫氏が首相として普天間の県外移設に言及して沖縄入りした日に、私は自民党幹部と那覇市内で会っていた。幹部は私に、「自民党の若手が沖縄に米軍基地があることを当然視するような発言をしているのを見ると腹が立つことはある」と語った。この話はいろいろなところで書いているが、常に匿名にしてきた。実は、その幹部とは、西銘恒三郎前沖縄北方担当大臣だ。沖縄での記者時代、よく飲み歌い、そして語り合った。沖縄国際大学の野添文彬准教授が著書「沖縄県知事」(新潮選書)で「日本の中での地位向上を目指しつつも、沖縄の伝統や歴史を重視し、その利益追求のためには日米両政府とも対峙する」と評した沖縄の保守政治は、西銘氏の父の順治氏が示したものだ。西銘氏にはぜひ、真の沖縄の保守政治家として党を離れて沖縄のことを考えて欲しい。その願いを込めて、最後の回としたい。 (おわり)
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元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】 2022年11月16日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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