《社説①・12.07》:兵庫知事選と立花氏 選挙の公正損なう言動だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.07》:兵庫知事選と立花氏 選挙の公正損なう言動だ
公正な選挙は民主主義の土台である。脅かされるようなことがあってはならない。
斎藤元彦氏が再選された兵庫県知事選ではSNS(ネット交流サービス)の影響が注目された。中でも物議を醸したのが政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の言動だった。
斎藤知事のパワーハラスメントなどの疑惑を追及してきた県議会調査特別委員会(百条委)の委員長宅前で演説をする様子を配信した。「出てこい」と威圧し、「自死されたら困るのでこれくらいにしておく」などと嫌がらせをした。常軌を逸した振る舞いだ。
真偽が明らかでない情報を拡散させたことも深刻だ。
知事のパワハラ疑惑を「デマ」と主張し、県議会やマスコミに対し「事実を隠している」などと批判を浴びせた。疑惑を文書で告発した元県幹部の私的情報とされる投稿もあった。告発内容とは無関係で根拠も不明だ。それらの動画が多数回閲覧された。
プライバシー情報の拡散は当事者の名誉を傷つける。事実と異なる情報は有権者の判断を誤らせる恐れがある。
立花氏は今回、自身の当選を目指さず、斎藤氏を応援することを公言して立候補した。
公職選挙法が候補者1人あたりのポスターや選挙カーの数などを制限しているのは、公平性を担保するためだ。他候補の応援を目的とした立候補は想定されておらず、公選法に抵触しかねない。
選挙をもてあそぶかのような行為が相次いでいる。
4月の衆院補選では政治団体「つばさの党」の候補者らが、他候補の演説を妨害する様子をオンラインで生配信した。メンバーの一人は広告収入を得ることが目的と明かした。候補者らは公選法違反で立件された。
7月の東京都知事選では、掲示板が風俗店の広告などで「ジャック」された。NHK党が内容を問わずポスターを張れると寄付を呼びかけたためだ。事実上の「販売」だった。
選挙は主権者が自らの代表を選び、政治を託す重要な機会である。制度の信頼性を保つにはどうすべきか。日本社会全体が向き合わなければならない重い課題だ。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月07日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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