《社説②・01.09》:川重が海自に便宜供与 癒着の構造断ち切る時だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.09》:川重が海自に便宜供与 癒着の構造断ち切る時だ
自衛隊と防衛産業の長年にわたる癒着の構造が明るみに出た。今こそ悪弊を断ち切る時だ。
川崎重工業が海上自衛隊の潜水艦乗組員に物品を提供していた問題を巡り、防衛省は特別防衛監察の中間報告を発表した。
艦内業務に使用する部品や工具だけでなく、家電やゲーム機、ゴルフ用品、釣り具、腕時計まで贈られていた。
川重は神戸工場で潜水艦の定期的な検査をする際、下請け業者との資材などの取引を装い、2023年度までの6年間だけで約17億円の裏金を作っていた。
それを物品の購入に充てたほか、乗組員との飲食代に使ったという証言もある。架空取引や物品提供は遅くとも40年前から始まっていた。
業務用の部品などは本来、正規の手続きで入手すべきだが、時間がかかることなどから、早急に対応してくれる川重に依頼していたという。
より悪質なのは、海自側が私物を含め、要求する物品のリストを作っていたことだ。長期間、組織的に続けられており、順法意識の欠如は明らかだ。
川重は「要求を断れなかった」と説明しているが、ビジネス上のメリットもあった。
提供した物品の費用は、潜水艦の点検・修理の原価に含められた。原価を水増しして利益率を少なく見せかけることで、将来の受注額を削られないようにする思惑があったとみられる。
結果的に税金が無駄に使われていたことになり、看過できない。防衛省が川重に過剰請求分の返還を求めるのは当然だ。全容の解明を急ぎ、関与した乗組員を厳正に処分すべきだ。
今回の不正は、川重に対する税務当局の調査で初めて判明した。自衛隊、川重の双方でチェック機能が働かなかったことは深刻だ。
防衛費は増額され、27年度までの5年間で計43兆円が投じられる。より厳格な予算執行が求められている。
防衛省を巡っては不祥事が相次ぎ、昨年末には幹部のパワハラや特定秘密の不適切な取り扱いなどの処分も同時に発表された。組織の緩みを放置したままでは、国民の信頼は取り戻せない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月09日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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