【社説・10.08】:裏金議員一部非公認 「納得と共感」には程遠い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.08】:裏金議員一部非公認 「納得と共感」には程遠い
石破茂首相が、自民党派閥裏金事件で処分を受けた旧安倍派幹部ら6人を非公認とすることを表明した。そのほか、政治資金収支報告書に不記載があった裏金議員を原則公認した上で比例代表への重複立候補は認めないとした。対象は40人程度の見通しだ。
そもそも、裏金づくりは誰がいつ始めたのか、何に使ったのか、という基本的な事実が未解明のままだ。そして、裏金分の納税などをしないまま、自民党は議員らを4月に処分したが、大甘だと批判されてきた。一部非公認は厳しい世論を受けての対応というが、首相が重視する国民の「納得と共感」には程遠い内容と言わざるを得ない。
首相は8月24日の自民党総裁選の出馬表明では裏金関係議員に関し「公認するのにふさわしいかどうか、徹底的に議論すべきだ」と述べた。しかし、翌日には「新体制で決めることだ」とトーンダウンし、新総裁選出後の記者会見では「党選対本部で議論して判断する」と述べていた。
表明された方針では、裏金議員が選挙区で有権者の支持を得て勝ち上がれば「みそぎ」となる。裏金事件で大量処分を受けていた旧安倍派からは、決定に怨嗟(えんさ)の声が上がり、選挙後に「倒閣運動」を起こすと宣言する者もいるという。反省していない証しであろう。7日の衆議院の代表質問で首相はこの対応について「厳しい姿勢で臨み、ルールを守る自民党を確立する」と述べたが、国民はそう受け取るだろうか。
内閣発足直後の共同通信の世論調査で、内閣支持率は最近の歴代内閣の発足時で最も低い50.7%だった。裏金議員を公認することには75.6%が「理解できない」とした。石破首相就任で「政治とカネ」の問題が「解決に向かう」とした人は22.8%にとどまった。自公政権が成立させた改正政治資金規正法がザル法のままで、自民党の体質が変わっていないと国民が知っているからだ。
石破首相は総裁選で「新事実が判明した場合は再調査はあり得る」と述べていた。麻生派に所属していた元衆院議員の関係者が裏金の存在を認める証言をしていたという報道がなされていた。しかし、首相就任後の会見で再調査を否定した。
同世論調査では、衆院選前に国会の予算委員会を開催すべきだとの回答も72.7%に達した。全閣僚が出席し、一問一答で答弁する予算委員会でなければ、初入閣が13人を数える閣僚の資質や新政権の政策を見極めることはできないと、国民は考えているのである。新政権は、世論が求めることと全て正反対の方向に突き進んでいる。
早期解散は、野党側の準備が整わないうちに選挙を仕掛け、自民党の議席減を小さく抑えようという賭けである。「政治とカネ」の問題をうやむやに終わらせる総選挙にしてはならない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月08日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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