【社説①】:自民の裏金事件 首相は自らを処断せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:自民の裏金事件 首相は自らを処断せよ
自民党の党紀委員会は派閥の裏金事件に関わった議員ら39人の処分を決めた。党総裁の岸田文雄首相=写真=は不問に付し、離党勧告は2人にとどめた。組織のトップが責任を免れる甘い処分だ。首相は自ら身を処すべきである。
党紀委は、安倍派が2022年8月に所属議員への資金還流の継続を決めた経緯を重くみて、会長代理だった塩谷立、参院側会長の世耕弘成両氏を離党勧告、下村博文氏ら同派幹部3人を6カ月~1年の党員資格停止とした。
企業が深刻な不祥事を起こせばトップが責任を取るのは当然だ。
裏金事件では首相が率いた岸田派の不記載で元会計責任者の有罪が確定。首相は安倍派を含む自民党全体のトップでもあり、深刻な政治不信を招いた責任があるはずだが、処分を免れた。道理が通らず、保身にも程がある。
不記載額が現職の党所属議員で最も多く、秘書と二階派元会計責任者が起訴された二階俊博元幹事長の処分は次期衆院選への不出馬を表明したため見送られた。党内での影響力を考慮した結果でもあるが、手心を加えず、処分するのが筋ではないか。
処分は不記載・虚偽記載のあった議員ら85人の半分に満たない。22年までの5年間で計500万円以上が処分基準とされるが、満たなくても違法行為に変わりない。全員を処分すべきでなかったか。
処分内容も手ぬるい。次回選挙に無所属での出馬を余儀なくされる離党勧告、その可能性がある党員資格停止の処分を受けたのは計5人。それ以外の約80人は結局、党公認として出馬が可能だ。それで裏金を反省したと言えるのか。
安倍派で裏金づくりが始まった経緯や、誰が還流継続を決めたのかは今なお不明だ。実態解明に努めず、処分で幕引きすることなど許されてはならない。
問われるべきは、違法な政治資金に手を染めた議員に立法府の一員たる資格があるかどうかだ。
もとより議員の地位は有権者の負託に基づき、政党に議員の身分を奪う権限はない。最終的な処分を下すのは、私たち有権者であることをあらためて確認したい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月05日 07:58:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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