【社説②・12.13】:教員の処遇改善 負担の軽減が先決では
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.13】:教員の処遇改善 負担の軽減が先決では
公立学校教員のなり手不足を緩和するために、基本給に上乗せしている「教職調整額」を増額する処遇改善案を巡り、文部科学、財務両省間で調整が進んでいる。
ただ、調整額の増額が過重労働の原因である残業を減らすために妥当なのか疑問は残る。処遇改善とともに、教員の配置を増やすなど残業を減らすための負担軽減策を講じることが不可欠だ。
教職調整額は、残業代に代わり教員の基本給に4%を上乗せして支払われているが、1972年の給特法施行から変わっていない。
このため文科省は、学びの多様化や保護者対応の増加など教員の多忙化を受けて、来年度予算の概算要求に、13%への引き上げを盛り込んだ。
これに対し、財務省は調整額を引き上げる条件として、授業以外の業務を削減して残業時間を減らす▽長期休暇を取得しやすくする-などの改革実現を挙げた。
改革が進展すれば、翌年度の調整額を増額し、進展しなければ増額を見送る内容で、調整額は5年間で基本給の最大10%に達し、時間外勤務時間も月20時間にまで減ると想定している。
さらに10%に達した後は調整額制度自体を廃止し、労働基準法に基づいて残業代支払制度に移行することも検討する、という。
授業だけでなく、部活動や保護者への対応、書類作成などで残業が減らない教員自身に労働の見直しを促し、残業代支払いも将来検討するという財務省の方針は、一見、妥当のようにも思える。
しかし、改革実現を条件にした調整額の増額案は非現実的だと教育関係団体は強く批判している。
増え続ける教員の負担自体を減らすための対策を講じなければ、残業時間を表向き減ったように見せかけるため、仕事を自宅に持ち帰る「隠れ残業」が増える可能性もある。教員の配置を増やして学級規模を小さくする定数の改善など、残業を減らす手だてを講じることがまず必要だ。
日本の公立小学校はコロナ禍を機に35人学級の実現に向けた取り組みが始まり、2025年度までに全学年で実現する見込みとなったが、先進国の中では依然、学級の規模は大きい。
政府内の議論にとどまらず教育現場の意見にも耳を傾け、教員の負担軽減と処遇改善に向けて、よりよい方策を検討すべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 07:28:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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