【社説・11.19】:斎藤県政再始動/政策推進へ対話と協調を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.19】:斎藤県政再始動/政策推進へ対話と協調を
「知事の資質」が大きな争点となった兵庫県知事選で、県民は再び前職の斎藤元彦氏を選んだ。きょう2期目が始動するが、県政は半年以上にわたり停滞している。斎藤氏には全会一致で不信任を突きつけた県議会や県職員との関係再構築など、解決すべき課題が山積する。
斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した文書問題に関する県議会の調査特別委員会(百条委員会)と、弁護士でつくる第三者委員会による調査は継続しており、疑惑の解明は途上にある。斎藤氏が検証を受ける立場に変わりはなく、安定した県政運営ができるかは不透明だ。
斎藤氏は街頭演説で、議会や職員との関係について「多くの方々と対話を重ね、謙虚な気持ちで出直したい」と強調した。当選後も、報道各社の取材に「仕事を通じて人間関係や信頼関係をもう一度つくる」と最優先課題に挙げた。その言葉を実践し、大きく揺らいだ県政への信頼を取り戻す責任がある。
斎藤氏が失職に至った問題は、告発文書への対応に端を発した。県は公益通報の結果を待たず、内部調査で告発者を懲戒処分にした。斎藤氏は百条委で職員からパワハラなどが疑われる行為を証言され、文書を公益通報と扱わなかった違法性を専門家から指摘された。斎藤氏は「真実相当性がなく、公益通報には当たらない」と正当性を主張してきた。
文書問題で深刻な不信を招きながらも再選を果たせたのは、改革に取り組む姿勢や政策が県民から一定の評価を得たのも要因だろう。
神戸新聞社が投票した人に実施した出口調査では、重視した点は「政策や公約」が最も多く、「文書問題への対応」は4番目にとどまった。斎藤県政の3年間については「大いに」「ある程度」を含め「評価する」が計7割超に達した。年代別では、10~50代でそれぞれ5割以上が斎藤氏を支持した。
県民の期待に応え、政策を着実に遂行していくには、県職員らとの対話と協調が欠かせない。
斎藤氏は3年前の知事就任時、県庁組織の意識改革へ「ボトムアップ型県政」を掲げた。しかし実態は、斎藤氏が宮城県庁在籍時に交流があった片山安孝元副知事ら「身内」を重用した側近政治の色合いが濃かった。斎藤氏は出直しの機会を得たからには、県庁内の異論や多様な意見にも耳を傾け、組織風土の改革を進める必要がある。
来年度予算の編成が迫り、副知事をはじめとする人事にも注目が集まる。斎藤氏は、自身に厳しい目を向けた県議会や県内市町の首長らとの溝を埋める努力も重ね、混乱の早期収束に尽くさねばならない。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月19日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます