《社説②・12.16》:宮田村長の辞意 まず事実をつまびらかに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.16》:宮田村長の辞意 まず事実をつまびらかに
宮田村の小田切康彦村長が辞職する意向を表明した。
職員へのパワハラや公職選挙法違反の疑いが指摘され、3期目の任期を8カ月近く残して身を引くことになる。
パワハラについては「クビだ」「ばか」などと強く言われたり、書類を投げつけられたりしたと職員が証言している。村長は「いい仕事をしてほしいとの気持ちが強く、表現が強くなることもあったと思う」と弁明している。
2022年参院選に際し、役場内の会議などで、自ら所属する政治団体が推す候補の後援会リーフレットを配りもしたという。公選法が禁じる、公務員の地位を利用した選挙運動などに当たる可能性が指摘されている。
今後、村の顧問弁護士が、現役職員と村長就任後に退職した元職員らを対象に、事実関係をめぐるアンケートを行うという。
職員や村民には、顧問弁護士頼みで客観性が保てるのかといぶかる声がある。職員が答えやすい公正な調査となるよう、態勢、進め方には一考の余地がある。村民代表の一翼である村議会のかかわりも期待される。
村長も、辞めておしまい―とはならない。一連の問題は、職員らの訴えを本紙が取材し、その後に村長が記者会見して公になった。役場内では解決できないと不信感を抱く職員らがいることを重く受け止めるべきだろう。
意思疎通にどんな課題があったのか。事実に即して自ら省み、教訓として組織内外で共有させる役目が残っているはずだ。
近年、全国各地の自治体首長によるパワハラ、セクハラが報じられ、辞職に至る例が少なくない。出直し知事選で再選された兵庫県知事も耳目を引いている。
共通するのは、首長と職員との間にある上下関係に起因している点である。首長は民意によって選ばれているだけに、自負や責任感が強圧的な言動につながりやすいのかもしれない。
いくら指導だ、組織のためだと思っても、そこに信頼関係がなければ、部下には耐えがたいものとなりかねない。
どんな立場であれ、相手を尊重するかかわり合いが何よりも大切である。その基本を踏まえて、風通しのいい組織文化を育てていく必要がある。
首長が任期途中で辞めざるを得ないのは異常な事態だ。どんな事実があってのことなのか、まずは村民につまびらかにすることが出発点になる。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月16日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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