【社説・01.04】:能登半島地震1年 関連死の抑制が急務だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.04】:能登半島地震1年 関連死の抑制が急務だ
2024年元日の能登半島地震から1年が経過した。自宅や職を失い、生活の再建ができない被災者が多くいる。インフラの復旧だけでなく、生活の支援を含め、総合的な施策によって復興を加速させる必要がある。
不便な避難生活で心身をすり減らし、命を落とす人が後を絶たない。災害への備えだけではなく、発生後への備えを含め、普段から防災について考えなければならない。
能登半島地震による犠牲者は昨年末で504人となった。避難生活のストレスなど間接的な原因による「災害関連死」の認定が続き、犠牲者数はさらに増える可能性がある。昨年9月には記録的な豪雨が被災地を襲い、復興は足踏みすることとなった。
地震と豪雨によって仮住まいや避難を余儀なくされている石川県の被災者は昨年12月下旬時点で2万人を超えている。自治体は県外の親戚を頼って避難している人を正確に把握できておらず、自宅に戻ることのできていない被災者はさらに多いとみられる。
災害関連死の抑制を急がなければならない。地震の際の建物の倒壊などで亡くなった直接死は228人。これに対して、避難生活中の心身の負荷によって亡くなる災害関連死に認定された方は276人で、直接死を上回った。災害関連死の認定審査は今も続いている。
地震に豪雨と災害が重なったことが、心と体の負担となったことは容易に想像できる。能登半島6市町の住民を対象とした共同通信アンケートで、9月の豪雨被災後、4人に1人が体調が悪くなったと回答した。支援が整っていれば、失われることのなかった命だった可能性がある。
避難所の環境やプライバシーの保護について、政府は国際基準に合わせて整備を進めていく考えだ。何よりも能登半島地震の被災者への対応は急を要する。関連死をこれ以上増やさないためにも、被災者ケアの見直しなど、短期的に取り組むべき要点を洗い出し、早急に取り組まなければならない。
自然災害にいつ襲われるか分からない。普段から防災について考える必要がある。昨年末の共同通信アンケートで、全ての指定避難所にアレルギー対応食を備蓄しているのは都道府県庁所在地のうち半数に満たない22市区だった。那覇は配備済みだが、県内の他自治体はどうだろう。住民への周知が万全かについても検証しておきたい。
能登の被災者にとっては、地震への全国的な関心の低下も心の負担になっている。災害に対する日本の支援制度は住宅再建が中心で、生活再建への支援は十分ではないとの指摘もある。万全な備えをするためにはまだまだ多くの論点があろう。
能登の被災者に心を寄せながら、それぞれの地域特性に合わせ防災に関する議論をより深めたい。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月04日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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