【社説①・01.12】:クロマグロ増枠 国内配分さらに議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.12】:クロマグロ増枠 国内配分さらに議論を
2025年漁期の太平洋クロマグロについて、資源回復による漁獲枠拡大の国際合意を受けた国内の当初配分が決まった。
市場価値の高い大型魚(30キロ以上)は、関係者の多い沿岸漁業が前年比7割増の2990トンで、このうち北海道は4割増の446トンとなった。大中型巻き網が中心の沖合漁業は1割増の5339トンとされた。
すしネタや刺し身で人気のクロマグロが少しでも身近になれば、消費者には喜ばしい。
15年に始まった国際規制で戸井産の「戸井マグロ」などで知られる道南を含む沿岸漁業は、沖合漁業に比べて大きな制限を受けてきた。今回の沿岸の枠増加は一定の前進と言えよう。
ただ船によっては大物1本分程度しか増えず、経営の厳しさは変わらないとの声は根強い。
国には沿岸漁業の経営安定を見据え、配分方法を適切に見直していくことが求められる。
中西部太平洋のクロマグロの資源管理を話し合う国際会議は昨年7月の釧路市での会合で大型魚を5割増、小型魚(30キロ未満)を1割増とすることで合意し、先月に正式決定した。
小型魚の増枠は初めてとなる。沿岸漁業に4割増の3066トンが配分され、このうち北海道は142トンで25%増えた。
国内では18年から罰則付きの漁獲可能量(TAC)制度が適用されている。枠を守るため、沿岸漁業者は定置網にかかったマグロを他の魚と一緒に放流せざるを得ないこともある。
ここ数年は燃油代や人件費の上昇が経営を圧迫している。今回の増枠をこうした負担の軽減につなげていく必要がある。
今回の配分を巡っては増枠の水準だけでなく、議論の不足や実績をベースとする決め方に対する不満が少なくない。
沿岸の一本釣りなどは、魚体を慎重に扱うことで高いブランド力を保つ。一網打尽にする巻き網漁での市場価格は低めで、産卵期の大量捕獲が資源減少につながっていると国の研究機関の専門家も指摘している。
漁獲の安定に巻き網漁は大きな役割を担っているが、一層の資源回復や高付加価値化の観点からも配分や漁法管理のあり方を議論すべきではないか。
21年には「大間まぐろ」で知られる青森県大間町の漁業者らが漁獲量の一部を県に報告せず刑事事件になった。レジャーでの釣りでも漁獲を申告しないルール違反の横行が指摘され、規制強化が検討されている。
クロマグロ消費量で世界一の日本には、ルールを守り資源回復に努めていく責任がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月12日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます