路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【東京五輪】:「復興五輪の意義、見いだせない」福島も無観客、現地しらけムード

2021-07-28 08:30:00 | 【スポーツ全般・屋内外の競技種目・オリ、パラ、デフリンピック・国民スポーツ大会】

【東京五輪】:「復興五輪の意義、見いだせない」福島も無観客、現地しらけムード

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪】:「復興五輪の意義、見いだせない」福島も無観客、現地しらけムード

 開幕まで2週間を切った東京オリンピック。福島市で行われるソフトボールと野球は「復興五輪」の目玉になるはずだった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響で10日、無観客での実施が決まった。「地元の人も見られないオリンピックに何の意味があるのか」。関係者の間では白けムードが漂っている。【川崎桂吾、金子淳、土江洋範、大島祥平、村上正】

 「せっかく『覚悟を決めて頑張ろう』と思っていたのに。突き落とされたような気分だ」。観客を案内する福島県の都市ボランティア(シティキャスト)に選ばれていたNPO法人「うつくしまスポーツルーターズ」の斎藤道子さん(57)=福島市=は語る。

 8日に4都県の無観客が決まった際は、「観客が入る福島は逆に注目が集まるはず」と自分を納得させた。10日午前にはシティキャストの現地研修に参加し、案内方法などの指導を受けたばかりだ。研修に参加したボランティアは「福島は観客が入るということで、みんなスイッチが入っていて、いい雰囲気だった」という。

 だが、無観客となり、都市ボランティアは活動中止が知らされた。選手団や関係者は感染対策で競技場以外には行けないため、現地で被災地の現状を知ってもらう機会はほとんどなくなることになる。斎藤さんは「今大会から復興五輪の意義を見いだすのは難しい。意義などないと言ってもいい」とあきれる。

 「自分の周りではみんなチケットを買って楽しみにしていた。それが無観客なんてね」。一報を聞いた福島県ソフトボール協会の常任理事、菅野哲雄さん(72)は力なく笑った。福島県ではソフトボールが盛んで、菅野さんたちは21日の開幕試合などで競技運営の手伝いをする予定になっている。「張り合いがなくなったよね」

 東日本大震災の津波で子供2人と両親を亡くした福島県南相馬市の上野敬幸さん(48)は3月、家族や復興への思いを胸に聖火ランナーとして走った。無観客の決定に「今の状況だと多くの人が集まるのは難しいと思うので、残念だが仕方ない。ただ、子供たちだけでも見せてあげられなかったか」と話した。

 福島県浪江町の行政区長会長、佐藤秀三さん(76)は「県外からも多くの人が集まれば感染リスクも高まる。無観客は当たり前だ」と話す。浪江町は福島第1原発の近くにあり、全域に6年間にわたる避難指示が出された。今も人が住めない地域が残る。佐藤さんは「コロナ禍の前から『復興五輪』は怪しいと思ってきた。そもそも薄い理念が、観客の有無といった別の議論でかすみ、もうどこかにいってしまった」と冷ややかだ。

 佐藤さんが言うように、県内ではコロナ禍の前から「復興五輪」への冷めた見方が広がっていた。五輪の理念が「復興五輪」から「コロナに打ち勝った証し」にすり替えられたことも県民の虚脱感を強めた。福島県から3月にスタートした聖火リレーでも機運は盛り上がらず、今回の無観客の決定によって、現地の「白けムード」は覆せないものになりそうだ。

 2017年に野球・ソフトボールの福島県内での開催が決まり、準備に関わってきた福島県関係者は「8日は有観客としたが、県庁内でも首都圏4都県の無観客と整合性を取るべきだ、という意見はあった。無観客にかじを切った引き金は北海道の決定だ」と話す。大会の理念とする復興五輪をアピールする立場として「もう残されている時間はほとんどないが無観客となれば、新たな発信方法を考えないといけない」と頭を抱えた。

 元稿:毎日新聞社 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック】  2021年07月10日  20:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(7)【皇居周辺&お台場】メダル続出の柔道会場周辺の静寂、アスリートを間近で見られるお台場の熱気

2021-07-28 07:32:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(7)【皇居周辺&お台場】メダル続出の柔道会場周辺の静寂、アスリートを間近で見られるお台場の熱気

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(7)【皇居周辺&お台場】メダル続出の柔道会場周辺の静寂、アスリートを間近で見られるお台場の熱気 

 ◆皇居&お台場

 7月の4連休が終わって26日からは通常モード。

 東京五輪開催期間の真っ只中ではあるが、千代田区のオフィス街にある日本武道館(柔道会場)と港区のベイエリアにあるお台場海浜公園(トライアスロン・オープンウォータースイミング会場)や潮風公園(ビーチバレーボール会場)などとは、同じ都内の会場地でも雰囲気がまるで違う。

お台場には大勢の人が集まった(写真)元川悦子

  お台場には大勢の人が集まった(写真)元川悦子

 コロナ禍の五輪ということで、賛否両論も依然として渦巻いているが、エリアによっても「温度差」が色濃く感じられる。

 高藤直寿(パーク24)に始まり、阿部一二三(パーク24)・詩(日体大)兄妹や五輪2連覇の大野将平(旭化成)など6つの金メダルを獲得している日本柔道。

 彼らが今大会のメダルラッシュを牽引している状態で、さぞかし会場周辺も盛り上がっていると思われた。しかし、大野の準決勝・準決勝が行われた26日夕方、武道館に近い地下鉄・九段下駅周辺は普段通りの風景だった。

 警察官やボランティアの姿は目立ったが、道を急ぐビジネスマンや散歩中の地元住民は、五輪に無関心という印象を受けた。

 田安門をくぐると「この先は関係者のみとなります」とのアナウンスが。 残念そうに記念撮影だけして引き返す五輪ファンの姿もあった。

 筆者も過去に1万人単位の外国ミュージシャンのコンサートに来場したことがあるが、その時の熱気や興奮とはかけ離れている。セキュリティーの奥で大野が奮闘しているとは思えない静寂が恨めしかった。

 ※  ※  ※

 一夜明けて27日の早朝。東京には台風8号が接近し、雨が降ったり、止んだりの悪天候に見舞われていた。

 それでも、この日は早朝6時30分から女子トライアスロンがお台場で行われた。公園内のスイムは中に入れないが、一般道を走るバイクとランは生で見られる。

 無観客の都内では、唯一の競技観戦機会。眠い目をこすりながら、気力を振り絞って現地に向かった。

 強風で乱れやすいゆりかもめを避け、東京臨海高速鉄道(りんかい線)を選択。東京テレポート駅に午前6時20分に到着し、屋根のある歩道橋を歩いてフジテレビ方向へ。そこから道路に下りると凄まじい大雨と強風。いきなりビショ濡れになった。

 台場交差点のマクドナルド前に急ぐと、すでに大勢の人々がスタートを待っている。

「どうしても五輪が見たくて始発で来た」と言う千葉在住の中年女性は、完璧な雨対策を取っている。

「小学生の息子に五輪を見せたくて強引に連れてきた」と話す近隣男性もいた。

 開始時間が15分遅れて午前6時45分にスイムがスタートしたと知り、雨が弱まった午前7時過ぎから沿道で選手を待った。

 すると猛スピードのバイクの一団が続々とやってくる。

「メチャメチャ速い」「鍛えられた体が凄くキレイ」といった感想もチラホラ聞こえてくる。

トライアスロン女子選手の鍛え上げられた肉体の美しいこと(写真)元川悦子

 トライアスロン女子選手の鍛え上げられた肉体の美しいこと(写真)元川悦子

 ◆「観戦自粛」の看板を持つスタッフも選手に目を奪われていた

 トライアスロンの別名は「鉄人レース」。今回もスイム1.5km、バイク40km(コースを8周)、ラン10km(同3周)という過酷なルールの中で頂点を目指すのだ。

 競技者は、自らを限界まで追い込まなければ高みに上り詰めることはできない。彼女たちの美しい肉体は、その証なのだと痛感させられた。

 54分前後と言われるバイクの時間は瞬く間に過ぎ、最後のランへ。トップで通過したのはダフィ(バミューダ諸島)。2位はザファーズ、3位はテーラーブラウン(ともに英国)。日本の高橋侑子(富士通)は8位の好位置に付けた。  

 もう1人の岸本新菜(福井県スポーツ協会・稲毛インター)が途中棄権したこともあって、「侑子ちゃん頑張って」「高橋選手ファイト」と高橋への声援はひと際、大きくなった。

 最終的にダフィが優勝し、高橋は18位に終わったが、沿道の熱気と応援をアスリートは、心強く感じたのではないか。

 コロナ禍突入以降、箱根駅伝や各マラソン大会が行われるたび、沿道応援が問題視されてきた。コロナ対策という観点では、確かに密回避は重要だ。しかも今の東京は緊急事態宣言下。やはり自粛は必要なのだろう。

 ただ一方で、人々の応援が選手の力になるのも事実だし、沿道に集まる側が見たい気持ちを抑えるのは難しい。この日も「観戦自粛」の看板を持ったスタッフや警官があちこちに点在していたが、彼らも選手の一挙手一投足に目を奪われていたほど。

 いかにバランスを取るかは難しい問題なのだ。

「東京五輪は人生で1回。生観戦できるのは今日しかないと思って来た。トップ選手の走りが見れて本当によかった。一生の財産になります」と、都内在住の男性3人組も笑顔を見せていた。

 8月7・8日の札幌のマラソン開催時に、いかにしてコロナ対策と沿道応援の両立させるのか。運営側の頭の痛い日々は続きそうだ。

 元川悦子

 ■元川悦子 サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月28日  07:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(6)【有明】堀米雄斗金メダルの瞬間に橋の上から大歓声が沸き起こった

2021-07-28 07:32:00 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(6)【有明】堀米雄斗金メダルの瞬間に橋の上から大歓声が沸き起こった

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(6)【有明】堀米雄斗金メダルの瞬間に橋の上から大歓声が沸き起こった 

 ◆有明

 競泳女子400メートル個人メドレーの大橋悠依(イトマン東進)の金メダルに始まり、柔道女子52キロ級と同男子66キロ級の阿部詩(日体大)・一二三(パーク24)の兄妹金メダルなど東京五輪2日目の25日も日本勢の活躍が目立った。

 そんな中、異彩を放ったのが新種目・スケートボード男子ストリートで初代金メダリストに輝いた堀米雄斗(XFLAG)だ。

堀米ファンの木梨さん(左)と笹谷さん(写真)元川悦子

 堀米ファンの木梨さん(左)と笹谷さん(写真)元川悦子

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 東京都江東区出身の彼は、地元の有明アーバンスポーツパークに凱旋。その雄姿を遠目からでもいいから目に焼き付けたい、と会場が見える有明北橋には熱狂的ファンや地元住民が次々と集結。携帯動画を見ながら、金メダルの瞬間を見守った……。

 テニス会場の有明テニスの森、体操会場の有明体操競技場、バレーボール会場の有明アリーナなどが立ち並ぶ江東区の有明地区。

 この日は聖火最終点火者を務めた大坂なおみ(日清食品)の1回戦が行われることに着目。彼女の試合時間の昼頃を狙って現地へ足を運んだ。

 東京臨海高速鉄道(りんかいせん)国際展示場から5分ほど北へ歩くと有明コロシアムとテニスの森が見えてくる。この日も朝から気温30度超の猛暑。人口都市的な色合いの強い同地区は街路樹も少なく、日光を遮るものがほぼない。まさに過酷な環境下だが、「五輪会場を見たくて来ました」と言う人も少なくない。今や有明エリアは新たな観光名所になっているようだ。

 テニス会場の関係者入口前でバス待ちをする熱心なファンもいた。

「日本人の夫と結婚して日本に10年住んでいますが、東京五輪をどうしても一目見たくて。さっきアンディ・マリーが入っていくのを見ました。それだけでも幸せです」とフィリピン人女性が笑顔を見せる。 

 本来なら選手も彼女らに近くで応援してもらいたかったはずだ。

 ◆有明北橋からスマホで堀米雄斗の一挙手一投足を

 ここからさらに北上し、ゆりかもめの有明テニスの森駅前へ。この手前でふと目に留まったのが、タイガービールの大看板。コンテナボックでできた期間限定だ。ポップアップモール&パーク「Zero Base ARIAKE」内のリカーショップである。

 別店でホットドックなどの軽食を買い、周辺会場を眺めながら食事もできるし、バーベキューも可能。五輪開幕後は外国人客も急増中だという。

 コロナ禍で当初計画していたスポンサー広告掲示や派手な装飾は難しくなり、有観客想定の来店者数には至っていないようだが、「国際交流拠点」としての役割は果たしている様子だ。

「地元の方も足を運んでくださって本当に有難いです」と代表取締役の小湊幸星さんも感謝していた。

 冷たいビールで英気を養い、有明アーバンスポーツパークへ。緩やかな坂からBMXのコースの一部が見渡せる。競技開催日の7月31日~8月1日はかなり混雑しそうだ。

 その先の有明北橋に人だかりができている。

 スケートボード男子ストリート決勝会場を眺めつつ、スマホで堀米の一挙手一投足を見ている一団だ。

 特に熱心だったのが、木梨祐一さんと笹谷星さんの職場の先輩・後輩コンビ。予選開始直後の午前9時から現地を訪れ「どこか見られる場所がないか」と探し回り、橋の上に辿り着いたのだ。

「本当は今日のチケットを持っていて現地観戦する予定だったんです。金メダルの瞬間を見るはずだったのに…」と堀米選手の大ファンだという木梨さんは悔しさをにじませる。

 それでも、スタートポジションの選手の姿がうっすら見えるだけでも、東京五輪ムードを実感できたという。

 堀米が競技終盤に首位に浮上した頃には橋の上は人・人・人。筆者も彼らの仲間に加わり、疑似五輪観戦体験をしていた。

 優勝が決まった瞬間、現場からは大拍手がわき起こる。木梨さんは「雄斗~」と叫び、笹谷さんと喜びを分かち合っていた。

 これはこれで素晴らしい体験だったが、有観客なら彼らは堀米の表彰式や国旗掲揚の瞬間を間近で目に焼きられたはず。

 そう考えるとやはり憤りを覚えずにはいられなかった。

 有明アーバンスポーツパーク前では、今後も似たような光景が続くかもしれないが、スポーツを愛する人たちが少しでも世紀の祭典を身近に楽しめるような状況になってほしいと強く願う。

 元川悦子

 ■元川悦子 サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月26日  16:45:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(5)2年前には「最高の五輪になる」とバッハ会長が言い切った東京国際フォーラムが今は…

2021-07-28 07:31:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(5)2年前には「最高の五輪になる」とバッハ会長が言い切った東京国際フォーラムが今は…

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(5)2年前には「最高の五輪になる」とバッハ会長が言い切った東京国際フォーラムが今は…

 ■東京国際フォーラム周辺

東京国際フォーラム周辺(写真)元川悦子(日刊ゲンダイ)

 ◆目に入るのは金網と白いフェンス

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月25日  14:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(4)【開会式】新国立競技場の最寄り駅では五輪賛成派と反対派のバトルでカオス状態

2021-07-28 07:31:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(4)【開会式】新国立競技場の最寄り駅では五輪賛成派と反対派のバトルでカオス状態

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(4)【開会式】新国立競技場の最寄り駅では五輪賛成派と反対派のバトルでカオス状態

 ◆開会式当夜の新国立競技場周辺

 派手な花火が打ち上がり、MISIAの君が代独唱に森山未来、真矢みきらのパフォーマンス、ゲーム音楽に合わせた入場行進、そしてテニス大坂なおみの最終点火と華やかな祭典ムードが漂った7月23日夜の開会式。

 しかし、直前の東京・国立競技場(新国立)の最寄り駅・JR千駄ヶ谷駅では五輪賛成派と反対派がバトルを繰り広げるなど「カオス状態」に陥っていた。

新国立競技場周辺には人だかりが出来ていた(撮影)元川悦子

 新国立競技場周辺には人だかりが出来ていた(撮影)元川悦子

 日本オリンピックミュージアム前の五輪マーク付近も人・人・人だらけ。「少しでも雰囲気を味わいたい」という世界各国の人々やメディア関係者が集結して超密状態。なぜ無観客で行われているのか、その意味がよく分からなくなった。

 開会式が始まる午後8時の4時間前。千駄ヶ谷駅は大勢の人で埋め尽くされていた。

 東京体育館から新国立に抜ける道も車両通行止めになっており、歩道は野次馬でごった返していた。

 外苑西通りに出ると「TOKYO2020」の大看板が掲げられた新国立が一望できる。

 普段はミュージアム前が人気の撮影スポットなのだが、そちら側は関係者のセキュリティーチェック用のテントが立ち、金網が設置されているため、こちらの方が記念写真に適しているのだろう。実際、多くの人が盛んにスマホやカメラを向けていた。

 ◆ホープ軒やコンビニはこの夜ばかりは大盛況

 一番人気の場所は名物ラーメン店・ホープ軒から河出書房新社前を経由して仙寿院の交差点まで。当然、ホープ軒も大盛況だ。新国立に5万7597人が集まった2020年元日の天皇杯決勝・神戸ー鹿島戦の時の凄まじい行列に比べるとだいぶ落ち着いてはいたが、店としては久しぶりの特需だったのではないか。

 特需という意味では、新国立周辺のコンビニ・ファミリーマートもそう。同店では公式スポンサーに名を連ねるアシックスが開発した公式応援Tシャツを販売する特設コーナーを設置。2週間前は閑古鳥が鳴いていたが、新日本青年館の店では「昨日と一昨日では物凄く売れてます」と店員もほくほく顔。隣のジャパンスポーツオリンピックスクエアの公式ショップも人でごった返したという。

 無観客開催でも、新国立周辺だけは五輪効果が大きいようだ。

 ◆外国人の観客も相当な数

 外国人観客もかなりの数

 オリンピックミュージアム前の人だかりは、新国立完成からの1年半では間違いなく最高レベル。観光客はもちろんのこと、テレビ中継を試みる各国メディア、スマホと小型カメラを使って実況中継するユーチューバーまでおり、コロナ禍ということを忘れそうになった。

「これじゃあ~コロナ感染、広がるよね」という声も聞こえてきたが、新国立に最も近い場所に折り畳み式のイスを持ち込み、飲食しながら開会式を外から眺めようという猛者もいた。

 誰もが、中に入れないなら入れないなりに知恵を絞るもの。「だったら最初から有観客にした方が良かったのではないか」という感想を抱いた人も少なくないだろう。

 日本語のみならず、中国語や英語、スペイン語などが飛び交い、外国人観客も相当数いた。

 1998年長野五輪の聖火モニュメント前にいた東京在住のフィリピン人女性に話を聞くと「チケットはもともとなかったけど、新国立をひと目見たくて。リスペクトすべきはアスリート。安全のために無観客は仕方ない」と言う。

 東京生活7年というインド人家族も「こんなに素晴らしい新国立を生で見られただけで幸せ。東京に住んでいて良かった。昼間のブルーインパルスも最高だった」と笑顔を見せていた。

 ◆反対派の「中止」の横断幕と賛成派の「感謝」の演説

 彼らとの会話から平和、友情、連帯感、フェアプレーという五輪精神をほんのわずかでも感じられたのは、この日の収穫だった。

「それなりに五輪開催にも意味があるのではないか」と少し前向きな気持ちで帰途に就こうとすると千駄ヶ谷駅に無数の警官隊の姿が。 

 予想以上の混沌ぶりに何事かと思いきや「東京五輪中止」の横断幕を持った反対派がズラリと並び、無言の抗議活動を行っていた。

 そこから少し離れた場所では「五輪開催は医療関係者や運営関係者、ボランティアのおかげ」と感謝の演説中。

 その目の前で「いい加減にしろ。感染拡大したら誰が責任を取るんだ」という怒号を浴びせる人もいた。

 日本は自由主義国家なので誰が何を言っても許されるが、東京五輪開会式当日にこのムードは、やはり複雑。すでに競技は始まっているが、国民の大半が納得できる東京五輪への道は遠そうだ。

元川悦子
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 ■元川悦子 サッカージャーナリスト
1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月24日  16:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(3)【味の素スタジアム】日本vs南ア戦の会場はバリケードに覆われ、防音対策で国歌すら聞こえず

2021-07-28 07:31:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(3)【味の素スタジアム】日本vs南ア戦の会場はバリケードに覆われ、防音対策で国歌すら聞こえず

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(3)【味の素スタジアム】日本vs南ア戦の会場はバリケードに覆われ、防音対策で国歌すら聞こえず 

◆【味の素スタジアム】

「目の前で南ア戦が行われるのに入れない。これは『復興五輪』じゃなくて『失望五輪』ですよ」

 7月22日、東京五輪Uー24日本代表の初戦・南アフリカ戦が行われた東京・味の素スタジアム。 キックオフの約2時間前(午後6時過ぎ)から選手バスの到着を待っていた吉田麻也(サンプドリア)の「22番」をつける熱心なサポーターは、ため息交じりでこうつぶやいた。

 筆者にとってもここは2001年の開業以来、FC東京の試合などで頻繁に訪れ、慣れた場所だ。

メキシコの応援にスタジアムまでやって来たサポーター(C)元川悦子

  メキシコの応援にスタジアムまでやって来たサポーター(C)元川悦子

 しかも、同日はチケットで試合観戦する予定だった。にもかかわらず、目につくのはバリケードに覆われたスタジアム全体とウロウロする警官や私服警察の様子ばかり。

 ファンの憤りに強い共感を覚えた。

 ■親子連れが残念そうに記念撮影

 この日の味スタでは、日本ー南ア戦の前に同じグループA組のメキシコーフランス戦が午後5時から行われた。

 直前に行けば、両国の国歌斉唱くらいはスタジアムの外で聞けるかもしれない、と考えて最寄り駅の京王線・飛田給駅から徒歩5分の正面ゲートに向かった。

 ただ、残念なことに完璧な防音対策が講じられ、国歌は全く聞こえなかった。それでも五輪動画サイトを見ながらフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」を静かに唱和する人の姿もあった。

 彼らはエムバペ(パリSG)のファンなのか、名前入りのレプリカユニフォームを着用。心から応援していたが、エムパペが不参加でU-24世代の主力級も招集できななかったフランスは、メキシコの4-1で敗れてしまった。熱烈な応援は残念ながら結果に結びつかなかったようだ。

 一方、勝者となったメキシコのサポーターもスタジアム前に姿を見せていた。

 レプリカ姿の3人組に話を聞くと1人は都内在住のサッカーコーチ、2人は新潟からやって来たボランティア。江東区晴海の選手村付近で意気投合して「チケットは持ってなかったけど近くで応援したいと思って来ました」と言う。

 そうやってスタジアム内外で国際交流が行われるのが五輪の醍醐味。今回はPVやイベント会場が閉鎖され、そういう場は皆無に近いが、ポジティブな空気をほんのわずかでも感じられたのはいいことだ。

 しかしながら、一方では幼い子供を連れた親子連れが何組かが残念そうに記念撮影していた。

 その様子を見るのはやはり辛い。

「近くで五輪があるので少しでも雰囲気に触れたいと来ました。一目でもいいから子供に試合を見せたかったですね」と三鷹市から訪れた父親は複雑な胸中を吐露した。が、願いは叶わない。

 冒頭のバス待ちのサポーターを含めて「なぜ無観客なのか」という疑問は、本番のサッカーの試合が始まっても拭えない。

 南アに1ー0で勝利した日本が予想以上に苦戦したのも、ファンの声援という後押しをもらえなかったことが大きい。

 本当に無観客でよかったのか否か。政府と東京都、組織委員会はしっかりと検証すべきだ。

吉田と香川のレプリカユニを着た2人(C)元川悦子吉田と香川のレプリカユニを着た2人(C)元川悦子

 ◆スタジアム前のショップも大打撃

 無観客五輪のマイナスを被っているのは、サポーターだけではない。

 経済効果を期待していた飲食店やショップ関係者もダメージを受けている。

 飛田給エリアではコロナ禍以降、コンビニや居酒屋が何店か閉店を余儀なくされているが、営業を続ける店も売り上げが伸びずに苦慮しているのだ。

 その1つが味スタの目の前にある「スーパースポーツゼビオ調布東京スタジアム店」。

 本来なら南ア戦開催当日は4万人以上の大観衆が押し寄せ、3階の五輪オフィシャルグッズコーナーには買い物客が殺到するはずだった。だが、人影はまばら。

「2019年のラグビーW杯開催時はレジに大行列ができ、アルバイトも総動員して対応したほど。閉店の午後8時には到底閉められず、午後10時まで働いていました」と当時を知る男性店員は、落差にショックを隠せない。

 2020年後半あたりからは、週末の売り上げは回復しつつあったというが、今春になってJリーグの観客制限が再び強化され、五輪も無観客となれば、客足が伸びるはずもない。「公式グッズもなかなか売れないですし、ホント困ったものですね」と彼は苦笑する。

 目下、店側の悩みは2階入口の大画面テレビで五輪中継を流すか、それとも否か。流せば「密」ができる恐れがあり、流さなければ雰囲気が盛り上がらない。

 味スタではサッカーの試合が続くし、隣の武蔵野の森総合スポーツプラザでは、金メダルが有力視される桃田賢斗バドミントンも開催される。それを中継していなければ、客からお叱りを受けるかもしれない。

 五輪会場のお膝元は、いろいろな難しさを抱えているのである。

元川悦子
著者のコラム一覧
 ■元川悦子 サッカージャーナリスト
1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月23日  11:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(2)無観客五輪に振り回された人は少なくない フリーランス記者も現地取材できず

2021-07-28 07:31:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(2)無観客五輪に振り回された人は少なくない フリーランス記者も現地取材できず

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(2)無観客五輪に振り回された人は少なくない フリーランス記者も現地取材できず

 史上初の無観客五輪の開幕まであと2日。だが、東京都の小池百合子知事が「自宅で家族とテレビで五輪観戦をしてほしい」と言ったように、一般市民は生観戦は叶わない。

 チケット保有者からは「開幕2週間まで引っ張ってこの結末はない」「一生に一回の自国開催五輪なのにひどすぎる」といった不満が噴出。無観客なら無観客なりにJクラブが工夫を凝らしたような企画チケット販売も手掛けられただろうが、全てが後手後手という印象しかない。

17日に神戸で行われた日本Uー24代表ースペインUー24代表戦は有観客で行われた(C)Norio ROKUKAWA/office La Strada

  17日に神戸で行われた日本Uー24代表ースペインUー24代表戦は有観客で行われた(C)Norio ROKUKAWA/office La Strada

 そもそも、東京五輪チケットの1次販売が始まったのは2019年5月。期間は同月9~28日で、公式サイトからエントリーする方式だった。

 サッカーW杯は、2002年日韓大会から4回連続でAD(Accreditation/取材許可証)を取得しているフリーランス記者の筆者も、通信社・新聞社偏重の五輪のAD取得は容易ではない。今回は普通にチケットを購入してスタンドから観戦する形で取材したいと考え、男子サッカーの日本の初戦が有力視された7月22日の味の素スタジアムの試合(C席=5500円)を筆頭にサッカー男子、男女バスケットボール、女子バレーボールなど複数競技に申し込もうとした。

■「電話認証」で申し込み受理されず

 だが、その期間はU-20W杯の取材でポーランドに滞在していたために「電話認証」で引っ掛かった。日本国内の自宅か携帯電話で折り返しを受けない限り、申し込みは受理されない。何度トライしても状況は変わらず、困り果てて友人に代理購入をお願いした。各2枚ずつを申し込んでもらい、当選すれば一緒に行こうと思ったからだ。

 迎えた当選発表の6月20日。友人から「当たったよ」と連絡が入った。7月22日のサッカー男子の日本-南アフリカ戦、8月4日の女子バスケットボール準々決勝、6日の女子バレー準決勝の3セッションだ。

 周りには複数枚当選した人がおらず、友人の強運に感謝しながら約5万円のチケット代をいち早く払い、本番を待った。

 しかし、ご存じの通り、コロナの感染・拡大で2020年3月末に1年延期が決定。今年に入ってからも収まらず、開催が危ぶまれる中、3月20日に「海外観客受け入れ断念」が正式決定。「国内観客の上限」は6月判断に。その間も組織委員会から友人宛に何度か現状説明とお詫びが記されたメールが届き、先行きを危惧していたところ、6月22日に「上限1万人」が決定。肝心のサッカーは「再抽選」となった。

 それでも「女子バスケと女子バレーに行けるならまだいいか」と気をとり直していたが、感染状況が著しく悪化。7月8日夜にはついに「首都圏での無観客開催」が正式決定するに至った。

 その時点では、まだ茨城、宮城、北海道でのサッカーは有観客だった。実は別の友人から「(茨城)鹿嶋開催の準決勝チケットが1枚ある」と誘われていて、かすかな希望に賭けていた。が、その晩のうちに「学校連携観戦のみ」という判断が下される。

■施設や会場を外から眺めることしかできなくなった

 こうして筆者の現地観戦の道は完全に断たれてしまい、施設や会場を外から眺めることしかできなくなったのだ。

 この2年間、似たような状況に陥り、振り回された人は少なくないはずだ。開幕2週間を切ってからの決定では、一般客が五輪に参加する方法はほぼない。しかし、Jリーグの場合だと、5月2日の大阪ダービーでセレッソ大阪が販売した企画チケットのように、ビニールポンチョやフラッグを観客席に掲げる演出が何度か行われている。

 無人でもコレオや横断幕があるだけで選手はモチベーションが高まるし、収入の一助にもつながる。900億円のチケット収入損失を少しでも穴埋めできるアイディアはあったはずだ。が、10日程度では準備時間が短すぎる。組織委員会や東京都や政府は、税金による補填しか頭にないのかと言いたくなる。

 「それでも五輪に参加できる方法はないか」と熱望する人には「TOKYO 2020 Share The Passion プロジェクト(https://olympics.com/tokyo-2020/ja/games/event-stp/)」をお勧めしたい。メッセージや応援動画をSNSに投稿し、それが大型映像装置やビデオボードで流される試みだ。

 気休めではあるが、選手側は励まされる部分もあるだろう。無観客なら無観客でこういった企画を数多く考えてほしかった。最悪の事態に至る顛末が何とも恨めしい。

元川悦子
著者のコラム一覧
 ■元川悦子 サッカージャーナリスト
1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月21日  11:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【東京五輪の「現場」を歩く】:(1)【新国立競技場】開幕直前の今になっても停滞感が続いている

2021-07-28 07:31:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(1)【新国立競技場】開幕直前の今になっても停滞感が続いている

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(1)【新国立競技場】開幕直前の今になっても停滞感が続いている

 本来であれば6万人の大観衆の中、開閉会式と陸上競技サッカー女子決勝が行われるはずだった新国立競技場。しかし、無観客開催が決まり、周囲はADカードを下げた外国人メディアやボランティアなど、大会関係者だけが行き交う異様な雰囲気に包まれている。

 競技場を取り巻く道路も封鎖され、9月30日までは通行止め。近隣住民からも「これは一体、誰のための五輪なのか」という困惑や怒りの声も聞こえてきそうだ。

 7月8日夜に首都圏での五輪無観客開催が決定し、一夜明けた9日。梅雨時のジメジメした空気が新国立競技場周辺を覆っていた。

新国立競技場周辺は物々しい警部(写真)元川悦子
新国立競技場周辺は物々しい警部(写真)元川悦子

 JRの最寄駅である千駄ヶ谷駅から信濃町駅方向に抜ける左手の道は、白い壁に覆われていた。東京体育館ももちろん立ち入り禁止。競技場に近づくと神宮外苑をグルリと囲む都道414号線も、大半は通行止め。通常なら、仙寿院の交差点から日本青年館前は一本道なのだが、「迂回してください」とガードマンに淡々と言われてしまった。

 汗だくになりながら大回りして、ようやく日本オリンピックミュージアム前に出たが、今度は物々しい警備のテントが立っている。

「ADのない方はここまでです」と冷たく言い放たれる筆者の傍らで、外国人記者やスポンサーカードを付けた団体が悠然と中に入り、「TOKYO2020」の大看板が掲げられた競技場の記念撮影をしている。

 五輪ファミリーと一般人の差をいきなり突きつけられた格好だ。

 気を取り直して、明治神宮野球場や秩父宮ラグビー場などがある道を青山方向に進むと、黄色のビブスを着たボランティアが数多くいる。

 が、彼らの仕事は道路を横断する人の手助けと関係者用のシャトルバスの誘導くらい。

 観客が増えた本番は誘導や道案内で忙しくなるはずだったのだろうが、無観客ではやることはない。

「今は暇ですね」と苦笑するスタッフもいたほどだ。

 今回の五輪では運営に関わるボランティアが7万人いて、うち1万6000人が観客の案内、チケットや荷物のチェックに当たる予定だった。

 大会組織委員会は彼らに別の役割を与える意向のようだが、そんな仕事があるのか。疑念は拭えない。

売れ行きは期待できそうにない(写真)元川悦子

  売れ行きは期待できそうにない(写真)元川悦子

 ◆名物ラーメン店も五輪に振り回される

 誤算といえば、近隣のショップも同様だろう。公式スポンサーに名を連ねるアシックスが開発した公式応援Tシャツを販売するファミリーマート各店では特設コーナーを設置。店内に世界各国の旗を天井に装飾するといった工夫を凝らしてムードを高めているが、商品を手に取る人は皆無に近かった。

 「本番に人が集まれば売れる」という勝算もあったのだろうが、観客は来ない。ビジネス的には厳しそうだ。

 ジャパンスポーツオリンピックスクエア内にある公式ショップも客足はまばら。

 筆者が訪れた時間帯は店員が2人だけで、某自治体関係者と目される人のグッズ大量買いの接客に追われ、最近の売れ筋商品を聞くことさえもできなかった。

 実は昨夏にも同店を訪れているのだが、「2020年2月にクルーズ船が横浜港に入ってから10日も経たないうちに人の姿が消えた。4~5月の緊急事態宣言が開けてから再オープンしたものの、お客さんは増えない」とスタッフが嘆いていたのを聞いた。

 その後、五輪本番が近づくにつれて多少なりとも期待感は高まったはずだが、開幕直前の今になっても、停滞感は続いている様子だ。

 大規模イベント時には毎回行列ができる名物ラーメン店・ホープ軒も五輪に振り回された側の代表だろう。

「五輪に向けて外国人客が数多く来ると思って英語や韓国語、中国語などのメニューも用意したけど、全く使っていない」と店員がこぼしていたのをやはり1年前に聞いた。計算していた経済効果も得られず、経営サイドは複雑だろう。

 7月23日の開会式は五輪ファミリーを1000人規模まで減らすというが、競技場内外ともに熱気を欠いた大会スタートになるのは間違いなさそうだ。

元川悦子
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 ■元川悦子 サッカージャーナリスト
1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月19日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治の現場】:決戦の足音<11>政権奪還時の緊張感が消失、自民の力量試される時…牧原出・東大教授

2021-07-28 05:17:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<11>政権奪還時の緊張感が消失、自民の力量試される時…牧原出・東大教授

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<11>政権奪還時の緊張感が消失、自民の力量試される時…牧原出・東大教授 

 
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【政治の現場】:決戦の足音<10>野党は「コロナ収束後の展望」示せ…輿石東・元民主党幹事長

2021-07-28 05:17:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<10>野党は「コロナ収束後の展望」示せ…輿石東・元民主党幹事長

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【政治の現場】:決戦の足音<9>コロナ対策「奇跡生むような政策ない」…古賀誠・自民党元幹事長

2021-07-28 05:17:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<9>コロナ対策「奇跡生むような政策ない」…古賀誠・自民党元幹事長

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<9>コロナ対策「奇跡生むような政策ない」…古賀誠・自民党元幹事長

 菅首相は華やかさはないが、大変な課題が山積している中、一生懸命苦労してやっている。小泉内閣以降、メディア向けのパフォーマンスが先行したり、いたずらに善悪の対立をあおったりする「劇場型政治」が続いた。決して良いことではない。

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【政治の現場】:決戦の足音<8>首相は「言葉磨き」で的確な説明を…高村正彦・元自民党副総裁

2021-07-28 05:17:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<8>首相は「言葉磨き」で的確な説明を…高村正彦・元自民党副総裁

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<8>首相は「言葉磨き」で的確な説明を…高村正彦・元自民党副総裁

 菅首相の特性は、国民のために働く、必要なことは断固やるという思いが強いことだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月24日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<7>都議選で際立った立・共「接近」…国民反発でかすむ野党共闘

2021-07-28 05:17:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<7>都議選で際立った立・共「接近」…国民反発でかすむ野党共闘

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<7>都議選で際立った立・共「接近」…国民反発でかすむ野党共闘 

 党所属衆院議員は10人ながら、次期衆院選では100人擁立の目標を掲げる。党勢拡大に向け、期待を背負うのが新型コロナウイルス対応で全国区の知名度を得た大阪府知事の吉村洋文副代表だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月23日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<6>自公に「パイプ役」不在…連立政権、山口代表「試される場が衆院選」

2021-07-28 05:17:00 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<6>自公に「パイプ役」不在…連立政権、山口代表「試される場が衆院選」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<6>自公に「パイプ役」不在…連立政権、山口代表「試される場が衆院選」

 ◆[政治の現場]決戦の足音をまとめて読むならこちら

 「下馬評を完膚なきまでに覆し、痛快なる大勝利を収めることができました」

 7日、東京都内で開かれた公明党の支持母体・創価学会の幹部会。会長・原田稔の「勝利宣言」に、約1000人の学会員から割れんばかりの拍手が湧き起こった。

 その3日前の東京都議選で、公明党は出馬した23人全員が当選を果たした。過去7回の都議選で無敗だった公明だが、新型コロナウイルスの影響で学会の活動が制限され、今回は劣勢が予想されていた。

 「4議席は落とすかもしれない」。党内ではそんな声もささやかれたが、蓋を開けてみれば全員当選。「奇跡だ」。党都本部代表の高木陽介は思わず漏らした。

 だが、次期衆院選を見据えれば、手放しでは喜べない。国政で連立を組む自民党は、過去2番目に少ない33議席と「敗北」。自民が候補を複数立てて共倒れした選挙区で、公明候補が滑り込んだケースもあった。「自民の低迷で、うちが議席を拾った。衆院選は共倒れするかもしれない」(公明幹部)

                  ◎

 新型コロナ対応で批判を浴びる菅政権に、自民で相次ぐ「政治とカネ」の問題や不適切な行動が追い打ちをかける。公明には、自民の危機感が薄いように見えて仕方がない。

 公明が神経をとがらせるのが、「夜の銀座」問題への対応だ。自民では、緊急事態宣言下に東京・銀座のクラブに深夜まで滞在し、離党した衆院議員3人を巡り、衆院選前の復党論が浮上している。公明は同様の問題で、次世代のリーダー候補だった遠山清彦が議員辞職に追い込まれ、次期衆院選の出馬を断念した。

 「選挙前に復党なんてあり得ない。うちの遠山は辞職までしているのに、また問題が蒸し返される」。学会幹部は早期の復党論に不快感を示す。

 当選無効となった国会議員に歳費を返納させるための歳費法改正案を巡っても、自公の足並みは乱れた。「残念だ。次の選挙の前に答えを示すことが大切だった。自民党には一層努力してほしい」。6月9日、自民が通常国会への改正案提出見送りを決めると、法改正を求めていた公明代表の山口那津男は、公然と不満を漏らした。

 強気の公明に、自民からは不満も漏れる。

 山口は都議選後、衆院解散の時期を巡り、自民党総裁選後が「望ましいかもしれない」とテレビ番組で語った。菅内閣の支持率が低下する中、「(新型コロナ)ワクチン接種が進むことで、望ましい選挙の環境になる」というわけだ。これに対し、自民は「総裁選のあり方は自民党自らが決していく」(幹事長代行・野田聖子)と反発。「公明はどこまで口を出す気だ」。党内にくすぶっていた不平が表出した。

                 ◎

 自公で連立政権を組んでから20年超。両党にのしかかるのが「パイプ役」の不在だ。11日に96歳で亡くなった元公明東京都議の藤井富雄は、元自民党幹事長の野中広務らと太いパイプを持ち、連立政権の誕生に尽力した。かつては、藤井のように様々なレベルで両党のつながりがあった。

 官房長官時代から公明に近い首相の菅義偉は、山口に頻繁に電話をかけているが、現場レベルのパイプは細っている。風通しの悪さがネックとなり、新型コロナ対策で公明が連絡不足にいらだつ場面も目立つ。

 様々な問題を抱えつつも、両党の選挙協力は深化している。多くの自民議員にとって、「1小選挙区あたり2万票」とされる公明票は、今や当落を左右する存在だ。逆に、公明が自前候補を擁立する9小選挙区は、自民の支援がなければ当選はおぼつかない。学会の高齢化や若い世代の「活動離れ」で、国政選の公明の得票は低下傾向にあり、自民票への渇望は強まっている。

 「頑張ってください」。6月10日、菅は自民党本部で、公明の小選挙区候補予定者9人に推薦内定書と「必勝」と書いた色紙を1人ずつ手渡した。通常の推薦決定は衆院解散後で、今回は初めての試みだ。出来るだけ早く「自民推薦」のお墨付きを得て、自民支持層への浸透を図りたい公明からの強い要望だった。

 山口は今月12日の講演で、自公連立の本質をこう評した。「連立政権が長続きする理由は選挙協力。試される場が衆院選だ」(敬称略)

 ◆「組織力」の比例 減少傾向

 公明党の組織力の指標とされる比例票は、自民党との選挙協力の影響も受けながら増減してきた。

 衆院選で見ると、1999年に自民との連立政権を開始した後の2000年は776万票、03年は873万票を獲得。小泉内閣の「郵政解散」で与党に追い風が吹いた05年は898万票で過去最高だった。

 09年以降は集票力の低下に歯止めがかからず、直近の17年は697万票にとどまった。700万票を割ったのは、自公連立以降、初めてだった。支持母体の創価学会について、党関係者は「自分自身は公明に投票しても、友人に熱心に働きかけない学会員が増えた」と指摘する。山口代表は次期衆院選で比例800万票への復活を目標に掲げている。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<5>不祥事相次ぐ魔の3回生、初の試練…「足元見直せ」叱責受け奔走

2021-07-28 05:16:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<5>不祥事相次ぐ魔の3回生、初の試練…「足元見直せ」叱責受け奔走

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<5>不祥事相次ぐ魔の3回生、初の試練…「足元見直せ」叱責受け奔走 

 ◆風頼み「チルドレン」

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月20日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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