愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

森本敏防衛相就任の意味を問わず「決められない政治の脱却を」と無血クーデター後押しのマスコミを糾す

2012-06-06 | 日記
野田改造内閣への評価が各新聞の社説で語られた。しかし、「東京」「産経」が、比較的本質を突いてはいるものの、事の本質を突いた社説はほとんど見られなかった。その理由と愛国者の邪論の評価は、以下のとおりだ。

1.1月の内閣改造で、「最善かつ最強の布陣を敷いた」と語ったが、6ヶ月も経たぬうちに「内閣の機能強化の視点で改造する」と述べざるを得なかったことの意味を深く分析できていない。

2.そのことは野田政権の行き詰まりが閣僚の問責などのように見えるが、深部で起こっているのは、野田政権のすすめる政策と国民の要求が激しくぶつかり、それによって「決まらない」「決められない」政治が引き起こされていることにあるのだが、それが全く見えていないのだ。経団連総会における「原発再稼働も、高いレベルの経済連携も、社会保障・税一体改革も国論を二分する話ばかりだ。二分するどころか、むしろ反対する人のほうが多いことばかりだ。何の因果か、このときに政権を担当している。当たり前のことが当たり前のように決まる政治をぜひ実現したい」と述べた野田首相の挨拶は、その点で象徴的だ。

3.マスコミは、「決められない」政治の要因としてあげているのは、閣僚の「不祥事」や自民党の「追及」、小沢氏の「反対」に問題があるように報道している。しかし、それは全く的外れだ。それを批判しているマスコミの論調は、野田内閣を批判しながら、実は増税と社会保障の改悪、日米同盟深化推進を煽ってきている。それが最大の特徴だ。そうした論調が、一見成功しているようで、実は成功していないのだ。そこにマスコミの苛立ちが見えてくる。別の視点から見ると国民の要求を敵にしているのだ。

4.それは閣僚の首を切ったから、自民党は野田政権と一緒になっ修正協議をして早く「決めろ」、民主党には党内融和を否定しろと、叫んでいることに象徴される。民自公の「談合」政治を無批判的に垂れ流していることをみれば明瞭だ。

5.だが、自民党が野田政権に要求しているのは前回の総選挙の「公約撤回」と解散総選挙と政権復帰だ。それに対して小沢氏は「政権公約の徹底」だ。自民党が政権を失ったのは何故か、全く判っていない。その点で小沢氏は、よく判っている。野田政権が自民党化したことを批判しているのだ。民主党内にある自民党化した勢力と政権交代派のせめぎ合いがある。この深部には国民の要求だ。だが小沢氏が国民の要求を第一に考えているか、それはカネのことを見れば明瞭だ。小沢氏の「国民の生活が第一」は手段であって目的ではない。

6.こうした局面にあって、マスコミにあるのは、一貫して「政局」「権力闘争」報道だ。国民の暮らしや日本経済の行く末は全く考慮されていないことは、「公平さ」を装った報道内容では一貫しているのだ。今マスコミがやるべきことは、どの政党が、どの勢力が国民の立場で行動・運動しているか、そこに尽きる。諸外国の国民の運動やデモは紹介するが、日本国内の運動をどれだけ報道しているかを見れば明瞭だ。だが、そうしたマスコミの報道の仕方を国民は見えているか、それが問題だ。これほどいじめられているのに、デモや集会が頻繁に起こらない「自由と民主主義」の国も珍しいか?これこそマスコミが報道していない影響の一つが、ここにある。

7.こうした報道の仕方の本質は、他の分野でも同じだ。その最たるものが、森本敏防衛大臣起用の評価と意味を「産経」以外は避けていることだ。は森本大臣起用を評価した共同の世論調査に象徴的にみることができる。

8.民主党の防衛外交政策を批判し、自民党政権下の防衛外交政策を担ってきた森本敏氏を起用することこそ二大政党政治の破綻を示しているし、そればかりか、憲法改悪、アメリカべったり派のベクトルを思いっきり右に張ることで憲法を生かした政治推進派のベクトルを引っ張っていこうという策略がある。

9.イラク戦争以後の日米安保条約の変質政策に対する世論の推移をみると安保容認世論は一貫して多数派である。このことは憲法擁護派=憲法活かす派が日米同盟深化推進派の土俵の中に取り込まれているようにも見える。だが日米同盟深化推進派も国民の深部では国民を味方にすることには成功はしていない。だからこそ普天間基地の辺野古移設を唱える安全保障論の専門家森本氏を起用したのだろう。しかも、このことの意味を「産経」以外が避けているのは、事の本質が広がることを恐れているのだろう。

9.以上のようにマスコミが繰り出す「政局」報道によって政治不信が醸成される。その結果「強いリーダーシップ」を求める世論が形成される。橋下「維新の会」を使った脅しで増税を「決めろ」とも。さらにはマスコミが煽ってきた二大政党政治の破綻を取り繕うために出されてきた「既成政党」論としての「決める政治」論、国民の運動を無視した机上、架空の論理を駆使することで、争点を曖昧にしたまま、増税と社会保障の改悪、日米同盟深化推進、憲法の諸制約=規制の緩和=改悪を進化させ、大儲けしようというのが、日米同盟深化推進派と経団連利益共同体派が操作する無血クーデター擁護のイデオロギー攻勢といえる。これが現局面の最大の特徴なのだ。

10。これらのイデオロギー攻勢を打ち破るために何が必要か、増税をしなくても社会保障は充実できること、そのためのカネは十分あること、日本国民の労働力は大変な価値を持っていること、それを規制緩和によって「不正」に独占している輩がいること、しかも彼らは「オールジャパン」「絆」などの言葉を駆使して、その裏にある彼らの利益イデオロギーを隠していること、日米安保体制推進によって国民の血税を湯水のごとく使ってきたこと、それを別の分野に使うことで本来の安全保障が作り出されること、これらのイデオロギーを彼らのイデオロギーに対置していくことだろう。

世のもののウソとマコトの両面に偽りのなき眼(まなこ)注む


野田改造内閣と森本敏防衛相に対する全国紙の評価を一覧しておこう。

朝日 一体改革協議―首相が陣頭指揮に立て 6月5日
 野田首相の記者会見からは、一体改革にかける決意は伝わってきた。・・・この改造は、法案の修正協議を進めるにあたって、のどにささった「とげ」を抜いたにすぎない。民主党が患う「病」が治ったわけではない。・・・全党で協議するといっても、最初から立場が違う党と折り合うのは難しい。この局面では、首相が会見で語ったように、野党第1党の自民との協議を優先するしかあるまい。修正協議の担当者の顔ぶれも重要だ。首相の意を体し、自民党との合意づくりに真剣にのぞむ人材を選ぶべきだ。

朝日 谷垣自民党―責任野党の矜持を示せ  6月6日
「動かない政治」を前に動かす責任は、なにも民主党だけにあるわけではない。野党第1党の自民党も、同じ責めを負っていることを忘れてもらっては困る。まして自民党は戦後半世紀以上も政権を担ってきた。目下の財政悪化も、社会保障の行きづまりも、その原因の過半は自民党政権時代につくられた。・・・やはり「ねじれ国会」だった福田、麻生政権の時代、早期解散を求める民主党に、法案審議や国会同意人事で徹底的に足を引っ張られた。その不信と怨念は骨身にしみている。・・・なのにいま、やられた分はやり返せとばかりに、こんどは自民党が首相の提案を蹴飛ばしてしまえばどうなるか。一体改革、消費増税が振り出しに戻るだけではない。いつか自民党が政権に返り咲いたとき、ふたたび不毛な「不信と怨念の政治」に足をとられることになるだろう。首相は内閣改造で前に出た。次は谷垣氏が歩み寄る番だ。党内基盤の弱い党首同士、トップ会談を先行させて両党を強く引っ張ることも考えていい。

毎日 野田再改造内閣 修正合意への重い使命 6月5日
 野田佳彦首相は記者会見で「大きな決断の時」と語り消費増税法案成立へ決意を示したが、野党と合意する道筋は依然として描けていない。民主、自民両党は採決などの日程駆け引きを先行させず、一日も早く修正協議を軌道に乗せるべきだ。・・・安全保障政策に精通した森本氏であれば前任者と違い、野党も「クイズ形式」で知識を試すような国会質問などするまい。だが、結局際立ったのは民主党の人材払底である。増税に首相として取り組むことを「天命」とまで語る首相が本当に背水の陣を敷いたかも疑問が残る。・・・衆院で与党単独で採決しても、国会が大混乱しては元も子もない。会期はまだ2週間以上ある。すみやかに修正協議を進めれば合意が不可能な日程とは言えまい。毎日新聞の世論調査では次期衆院選比例代表で大阪維新の会を投票先にあげた人は28%で、民自両党を圧倒した。会期末の攻防で国会の緊迫は避けられまい。だが、「決められない政治」からの脱却を自覚しなければ、既存政党は自沈である。

毎日 森本防衛相 普天間の現実見据えて 6月6日
野田政権の安保政策は自民党のそれに近づいている。一方、森本氏は、集団的自衛権の行使をめぐる持論を封印することを表明した。森本氏と政権の間に大きな溝があるとは思えない。安全保障をめぐっては、東アジアの環境変化への対応、日米同盟の深化、国際平和協力活動の強化など課題が多い。豊かな知見を生かして活躍できる機会は多いはずだ。もちろん、政策の実現には政治力が必要となる場面は必ずある。その場合は首相の説得がカギを握る。これまで何回も足を運んだ沖縄の政治状況を、森本氏は熟知しているはずだ。辺野古への移設は困難であるという現実から出発して打開策を模索すべきである。森本氏もかつて、海兵隊が必ずしも沖縄にいなくても抑止力は維持できるという趣旨の発言をしたことがある。米国の国防関係者との人脈も生かし、辺野古に固執する両政府の現状を打開してもらいたい。さらに、普天間移設が実現するまでの間、普天間飛行場の周辺住民の危険を除去する対策についても検討を急がなければならない。普天間の固定化を回避する道筋について、防衛相就任前と同様、論理的かつ明快な説明を聞きたい。

読売 野田再改造内閣 日本の命運かかる6月政局 6月5日
 財政危機のギリシャを震源地に、欧州の信用不安が再燃している。日本にとって、対岸の火事ではない。財政再建や社会保障改革は、もはや不可避の課題である。与野党が党利党略で争っている場合ではなかろう。・・・米軍普天間飛行場の移設問題や在沖縄海兵隊の海外移転、中国の海洋進出、北朝鮮のミサイル・核開発など直面する課題は多い。森本氏には、専門家としての力量を発揮することが求められよう。・・・民主党は、修正協議で成果を得るため、政権公約(マニフェスト)に掲げた最低保障年金を柱とする新年金制度創設や、後期高齢者医療制度廃止という看板政策を棚上げしなければならない。・・・与野党は、この6月の判断と行動が日本の命運を握ることを肝に銘じるべきだ。会期延長は避けられない。首相の政権運営にも大きく影響する。政治の前進のためには大胆な妥協が必要となろう。

日経 首相は態勢を立て直し修正協議を急げ 6月5日
修正協議では民主党が2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた「後期高齢者医療制度の廃止」などの公約撤回が焦点になる。民主党内には根強い反対論があるが、譲るべきところは大胆に譲歩して成案をまとめるべきだ。首相は党内取りまとめの先頭に立つ必要がある。・・・改造の目玉は、民間人で初めて防衛相に任命された森本敏拓殖大大学院教授だ。長年、外交、防衛問題に携わっており、自民党にも多くの人脈を持つ。防衛相に求められる知見という点では、ふさわしい人選といえる。ただシビリアンコントロール(文民統制)の要である防衛相に必要な能力はそれだけではない。目の前の懸案を解決し、危機に対処していくには、まず大きな組織を統率する力が必要だ。法案の審議では野党との駆け引きも要る。森本氏がどこまでこうした手腕を発揮できるかは未知数で、官邸が強力に支援する必要がある。森本氏も関係閣僚や防衛省の政務三役と緊密に連携し「民間人・防衛相」への不安を拭ってほしい。

産経 第2次改造内閣 首相自ら難局打開せよ 与野党で成長戦略の再構築を 6月5日
与野党とも、少子高齢化に伴う社会保障財源の安定的確保には、消費税増税が避けられないことでは一致している。それをさらに進め、与野党協議で成長戦略をテコにデフレを脱却し、よりよい社会保障と税の一体改革を実現することが求められる。自民党も歩み寄るべきだ。・・・具体的には医療・福祉・農業など規制が厳しい分野に対し、民間参入を促す規制緩和の徹底が欠かせない。企業活力を引き出せば新サービスや価格低下、雇用増など幅広い効果が見込める。・・・首相は消費税増税への反対論が根強い民主党内の「融和」にこだわることをやめ、自民党に協力を求めた。その一方で、自民党は民主党にいくつかの条件を突きつけている。・・・森本氏は海空軍力を増強する中国を踏まえ、南西方面の防衛態勢強化などを重視している。それを裏付ける防衛費をいかに獲得するかなどが課題だ。そのためにも、野田政権は必要な防衛力を整備する姿勢を明確にすべきだ。

産経 森本防衛相 安保政策をただす機会に 6月6日
閣僚は文民から選ぶとし、民間人の起用を認める憲法に照らしても、森本氏の起用に何ら問題はない。むしろ、防衛省内で背広組が制服組を統制する「文官統制」の悪弊の方が問題だ。・・・森本氏は、米軍普天間飛行場の移設問題で、日米合意に基づく辺野古移設案を「最善」とし、一貫して支持してきた。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出で日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなるなかで、森本氏の専門的な知見を生かしながら、防衛政策の強化や必要な防衛力整備を図る必要がある。中でも根本的な課題は、集団的自衛権の行使容認に踏み込むかどうかである。日米同盟の実効性を高めて中国などの脅威に対処するには、集団的自衛権の行使を容認しない憲法解釈を変更し、日米共同防衛の実を挙げなければならない。安倍晋三政権が設けた首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)は、平成20年の報告書で「従来の解釈では新たな安全保障の重要課題に対処できない」と明記した。
 森本氏が「行使を認めなければ日本の安全や国益は守れない」と語ってきたのは正しい。野田政権は武器輸出三原則の一部緩和に踏み切り、重要な防衛政策の転換にも着手した。集団的自衛権行使の課題にも積極的に取り組んでもらいたい。防衛省では5日から「防衛問題を語る有識者懇談会」を始めた。森本氏には、日本の安全に必要な安保・防衛政策の強力な推進を求めたい。

東京 野田内閣再改造 消費増税と取引する愚 6月5日
 野田佳彦首相が再び内閣改造に踏み切った。問責二閣僚の交代は当然としても、再改造が消費税増税を進めるための環境整備というのは納得できない。・・・問責決議後、参院では法案審議が滞り、今国会の法案成立率は二十数%と低調だ。その責任は審議を拒否した野党側ばかりでなく、二閣僚を交代させられなかった首相も負うべきはもちろんである。財政状況に対する危機感はわれわれも首相と共有する。・・・しかし、再三指摘してきたように、衆院で審議中の法案は現行の社会保障制度の維持を基本としており、一体改革の名に値しない。政府や国会の無駄削減や社会保障制度の抜本改革を後回しにし、消費税増税の前例づくりの法案をいくら修正したところで、国民の理解が得られる改革に仕上げるのは難しいのではないか。内閣再改造を機に、与野党が本格的に協議を始めるというのなら、まずは政党交付金や歳費、文書通信交通滞在費の削減など国会議員が身を削る姿勢を示すことから始めてほしい。さらに、「官」の抵抗で遅々として進まない行政改革にこそ与野党が力を合わせ、同時に、政権が代わっても大きく変える必要がないよう安定的な社会保障制度づくりに知恵を絞るべきである。もし消費税率を上げる以外に財源を見つけることが難しいというのなら、増税前にやるべきことをやり尽くした上で、国民に理解を求めるのが筋だ。国会は各党の主張がせめぎ合う場だ。特に「ねじれ国会」では、与党の思い通りにならないことも多いだろう。かといって民主党らしさを失っては意味がない。初の民間人防衛相となった森本敏拓殖大大学院教授は、民主党らしさとは程遠い人選ではないか。自公連立政権時代の二〇〇九年に防衛相補佐官に起用されたり、集団的自衛権の行使容認や憲法改正を主張する森本氏は、民主党よりも自民党の立場に近いのではないか。今回新任された五閣僚のうち、森本氏を除く四人は当選回数などを勘案した順送りの色彩が濃い。その分、森本氏起用に首相の狙いが表れていると言えるが、消費税増税への協力を得るために自民党に擦り寄るのなら、民主党内からも異論が出るのは当然だ。国民が民主党に政権を託したのは、〇九年衆院選マニフェストに自民党とは違う政権像を見たからだ。それを墨守する必要はないとしても、政治主導や地域主権、生活第一などの理念をも反故にするのなら民主党に存在意義はない。内閣再改造を機に自民党との連携に大きく踏み出したかに見える首相には、民主党らしさを失い、自民党と同化しつつあるとの疑念が向けられていることを、重く受け止めるべきである。