今日の「朝日」の「声」欄に掲載された意見について述べてみます。この意見を読んで、まず浮かんだのは、石川啄木の評論「時代閉塞の現状」です。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000153/files/814_20612.html
かくて今や我々青年は、この自滅の状態から脱出するために、ついにその「敵」の存在を意識しなければならぬ時期に到達しているのである。それは我々の希望やないしその他の理由によるのではない、じつに必至である。我々はいっせいに起ってまずこの時代閉塞(へいそく)の現状に宣戦しなければならぬ。自然主義を捨て、盲目的反抗と元禄の回顧とを罷(や)めて全精神を明日の考察――我々自身の時代に対する組織的考察に傾注(けいちゅう)しなければならぬのである。・・・明日の考察! これじつに我々が今日においてなすべき唯一である、そうしてまたすべてである。
その考察が、いかなる方面にいかにして始めらるべきであるか。それはむろん人々各自の自由である。しかしこの際において、我々青年が過去においていかにその「自己」を主張し、いかにそれを失敗してきたかを考えてみれば、だいたいにおいて我々の今後の方向が予測されぬでもない。いっさいの「既成」をそのままにしておいて、その中に自力をもって我々が我々の天地を新(あらた)に建設するということはまったく不可能だということである。すなわち我々の理想はもはや「善」や「美」に対する空想であるわけはない。いっさいの空想を峻拒(しゅんきょ)して、そこに残るただ一つの真実――「必要」! これじつに我々が未来に向って求むべきいっさいである。我々は今最も厳密に、大胆に、自由に「今日」を研究して、そこに我々自身にとっての「明日」の必要を発見しなければならぬ。必要は最も確実なる理想である。・・・ さらに、すでに我々が我々の理想を発見した時において、それをいかにしていかなるところに求むべきか。「既成」の内にか。外にか。「既成」をそのままにしてか、しないでか。あるいはまた自力によってか、他力によってか、それはもういうまでもない。今日の我々は過去の我々ではないのである。したがって過去における失敗をふたたびするはずはないのである。(引用ここまで)
この評論は、以前にも述べましたが、高校2年生時の国語の授業で紹介され、大変感動したことを今でも鮮明に覚えています。今でも、その先生のプリントを大事に保管しています。わら半紙の、その紙は赤くなってしまいました。「受験戦争」に展望を見出せない少年の鬱屈した気分のなか、「敵」に向けた「明日への考察」を青年に呼びかけた啄木に共感し、勇気をもらったように思います。
第三極に何かを求める空気 郵便局員 白井 次郎 (静岡市駿河区 57)
「慎ちゃん、カッコイイ」と、期間雇用社員の人が言う。「80にして、立つですか」と正社員の私は答える。 郵便局は、配達員まで含むと半数は期間雇用社員で、私の周りは7割が期間雇用社員である。30代も40代も多い。10年の間、この職場を見てきたが、生活と自立を迫られている幾人かは、正社員を本気で望んでいる。 かつて亀井静香郵政担当相が「正社員化」を唱えたが、頓挫した。労働組合はどうか。連合の日本郵政グループ労組は全国で20万人を超えるが、職場では雇用労働者の少数派に過ぎない。 それに期間雇用社員の切実な要望を受け入れているかといえばそうでもない。他方、期間雇用社員に味方する少数組合も組織しきれていないのも事実である。 以前、ある邦画でアルバイト暮らしの青年が、「戦争でも起きればいいのになあ」というセリフをはいた。職場の隣の青年も、「大きな地震でも起きれば、何か変わるかなあ」とつぶやく。 正社員が長時間労働で疲れきっている職場で閉塞感にあえぐ大多数の非正規雇用の若者たちが日本政治の第三極に「何か」を求める空気を、私は感じている。(引用ここまで)
以下の「声」についても、「真の敵」に向けた組織的な団結と行動、「明日への考察」、今こそ「若者」に呼びかけたいものです。
うそと詭弁と民主党の失望 無職 石渡 靖政 (神奈川県鎌倉市 72)
民主党政権はあまりにうそや奥弁が多くはないか。先日、民主、自民、公明3党の党首会談があった。野田佳彦首相は約束した「近いうち解散」を明言せず、山口那津男公明党代表は「政治家としてのありようを疑う」とあきれた。政治家のうそや詭弁は今に始まったことではないが、これほどひどくなかった。 消費増税について、岡田克也副総理は、議論することは4年間の任期中に増税しないとするマニフェストに違反しないと説明し、実施を決めた。原発事故時、枝野幸男官房長官(当時)は「直ちに健康に影響を及ぼさない」と明言、前原誠司国土交通相(当時)は「八ツ場ダムを中止する」と勇ましかっなが、いつの間にか工事が再開された。さらに……。今や民主党の言うことをほとんどの人は信用していないのではないか。 これ以上、政治や政治家に対する国民の信頼を失わさせないためにも、一刻も早く国会を解散して欲しい。それがせめてもの民主党政権の国民に対する「償い」だと思う。(引用ここまで)