またしても沖縄で米軍兵士の蛮行が発生しました。この期に及んで日米軍事同盟廃棄を掲げない日本のマスコミをみていて、呆然としています。また同時に中国や韓国の「愛国主義」と、「日の丸・君が代」を強制する輩の、いわゆる「愛国心」を比較すると、「どうなってんだ!」と言わざるを得ません。
安倍総裁や「産経」をはじめとした大東亜共栄圏賛美論者たちは、一体何を考えているのか、と言いたいものです。かつて彼らの先輩たちは「鬼畜米英」を叫び、国民を侵略戦争に扇動しました。この論法は、自らの権益のためにはアジアの人民を犠牲にすることを厭わない身勝手な発想であることは当然のことですが、彼らの思想に共感した国民の心の奥底にある「愛国心」は、現在の日本国民の中には、微塵もないと言わざるを得ません。
同時に考えなければならないことは、石原前都知事の尖閣買い取りに賛同した「国民のエネルギー」が、「沖縄の苦悩と悲劇」に「共感と連帯」の意思表示を示していないという事実をどうみるか、です。
明治中期に発生したノルマントン号事件に遭遇した国民は、募金を集め、被害者を支援するばかりか、不平等条約改正=撤廃を掲げ、鹿鳴館外交を推進していた井上外交を軟弱として批判し、まさに国民運動を展開したのです。この歴史的経験は、政治家や思想家などの「心情・信条」、いわゆる「愛国心」と区別して見ていく必要があると思います。それは民衆の「国を想う」エネルギーとして解明していく必要があるということです。その視点を、今日の様々な事例に当てはめていくという視点です。
当時の民衆の不平等条約撤廃の動きは、排外主義と国粋主義・軍国主義に利用され、日清・日露戦争遂行のエネルギーとなってしまったことは、歴史の教訓としなければなりません。ということは、今日の沖縄における蛮行に対して、民族的エネルギーを発揮させていく場合にも当てはまるからです。日米軍事同盟を廃棄するエネルギーを結集する際に「排外主義」を持ち込むことは、何としても排除していかなければならないからです。
その点で言えば、当時と現代の決定的な違いは、日本国憲法の平和主義があること、国際法のレベルにおいても、紛争を武力・軍事力で解決することを是とするのではなく、非軍事・非暴力で平和的に解決するという人類史の到達点があることです。この視点に、国民が立てるかどうか、そこにかかっているように思います。
中国・北朝鮮の脅威を煽って集団的自衛権の行使に道を開こうとする輩の意図を打ち砕いていかなければならないでしょう。歴史の歯車は彼らの野望を成功させないと確信していますが・・・。
以上の問題意識を踏まえて、いくつかの社説を読みながら、こんにちの思想・イデオロギー状況を解明していく必要があるように思います。
以下、沖縄の2紙の社説が、本土の2紙の社説に反論できない故の自縄自縛に陥っている実態をあげてみます。
「在沖米軍基地の撤去に言及する首長や議員が増えている…沖縄に米兵が駐留し続ける限り、事件は続発する。その被害はもう甘受できない。米兵と基地を大幅に削減し、ゼロに近づけることしか有効な再発防止策はなかろう」(琉球新報)、「『綱紀粛正』『再発防止』という言葉がむなしい…」「県民の生命・財産が日常的に脅かされている現状を放置することは、許されない」(沖縄タイムス)とまで言い放っているにもかかわらず、基地撤去・日米軍事同盟廃棄を主張できないのは何故か、です。
沖縄の2紙と沖縄県民の中にある、この「不確信」こそ、今問われなければならないのです。「在日米軍基地を全廃すれば、米兵の事件、事故はなくなるのだろう」(東京)という子どもでも判る常識的な立場にすら立てないのです。今や、このことは日本国の救いようのないタブーとなっているのです。ガン細胞を除去しなければ命が危ないところまで進行しているのに、がん細胞を放置しているのです。放射能に汚染された大地を除染しなければならないのに、放置しているのです。
これは海兵隊の「抑止力」を批判してみても、本質的なところで、「日米安保体制が日本の平和と安全に不可欠で、米軍への基地提供が引き続き必要だというなら」(東京)、という米軍の「抑止力」を容認しているのです。その最大の「要因」は「領土をめぐる近隣諸国との対立が国民の不安をかきたて、平和や安全への意識がかつてなく高まっている」(毎日)という「現実」と「論理」を前に、「抑止力」論に縛られている沖縄2紙と沖縄県は有効な展望を見出しえていないのです。
その「不確信」「不安」は「近隣諸国との対立をあおるだけの外交はオバマ米政権との摩擦を強め、日米同盟を損なうだろう」(毎日)という、仲井間知事も強調してきた「日米同盟」論です。
だからこそ、国民世論が「日米同盟」廃棄に到達することを妨害するための「落とし処」論として「在日米軍基地の74%が集中する沖縄県内の基地を減らし、地位協定を抜本改定すべきではないか」(東京)などという「論理」が席巻しているのです。
百歩譲って日米地位協定の「改正」が正しいとするのであれば、それを実現するためには、どのような条件が揃わなければならないのか、「地位協定抜本改定論者」は示していくべきでしょう。地位協定の「改正」を裁判権のみに矮小化して良いのかどうか、そこも問われてくるでしょう。地位協定そのものは日米軍事同盟を円滑的に運用していくための「条件」項目なのです。これを「改正」する場合、裁判権のみに矮小化しても、米軍の無法は無くならないでしょう。オスプレイ配備の際の日本政府の卑屈さ、アメリカ政府の傲慢さを見れば明瞭です。
「オバマ氏は「『日米同盟は地域の繁栄と安全の基礎』と強調」(産経)、「首相は『東アジアの安保環境は厳しくなり、同盟の重要性が増している』と応じ、オバマ政権のアジア太平洋重視外交を歓迎…冷静な対話も強い外交力も、同盟の確かな抑止力や防衛費の増額などの裏づけがあってこそ発揮できる」(産経)という「思想」と「論理」に、「抑止力」論に縛られている沖縄は対抗する術すら持っていないのです。そこに大いなる「不確信」があると言えるのです。
これは何も沖縄県に限って言えることではありません。集団的自衛権の行使を「政権公約」に取り入れた安倍自民党は、石原・橋下「日本維新の会」をもてはやす風潮を背景にしていることは明らかです。これも「動的防衛力」を確認したオバマ・野田会談や石原都知事の尖閣買い取り発言によって煽られた世論が後押ししていることは明瞭です。
振り返ってみると、昨今の風潮と自民党などの動きは、湾岸戦争時に「アメリカの起こす戦争に日本の若者の血を差し出す決意があるか」と問い詰められ、「憲法が邪魔をしている」と応えた自民党を思い起こすことができます。これこそ、アメリカの財政危機と貿易赤字の尻拭いを日本国民に押し付ける日米支配層の宿願を、一気に実現しようとするものです。ここに日米軍事同盟の本質があると言えますが、「日米同盟」を「対等で、友好的な条約」として描くことで、国民を「日米軍事同盟安全神話」論という思考回路にマインドコントロールして思考停止状態に陥れているのです。 日米権力の応援団と化したマスコミの犯罪的役割を告発しない訳にはいきません。
「毎日」の主客転倒した論理は、次のような視点にこそ、転換すべきなのです。「主要国と対等に議論し国益に沿った外交をするには、まず」日米軍事同盟を廃棄し、憲法の平和主義に基づく日米平和友好条約を締結することです。この政権こそ「安定した日本の政治の仕組みが欠かせない」と言えるのです。「領土や主権の侵害をいかに抑止するかの具体策」(産経)はすでに国際社会においては、平和的手段こそが最大の「抑止力」として意味づけられています。EU・ASEAN・TACなどの取り組みがあります。日米軍軍事同盟深化派の「産経」には見えていないのでしょう!ジャーナリズムとしては呆ればかりです!
http://www.asahi.com/international/update/1203/TKY201112030131.html
http://www.jcp.or.jp/jcp/25th_taikai/01_25th_ketugi.html#_13
したがって「今回の衆院選は日本がそのような他人(アメリカ)任せ外交から脱却し、自分の頭で考え、国家の目指す方向性、国益を明確にする作業を始める機会と位置づけるべきだろう。国家戦略を練り上げていくためには、何が国際社会における日本の国益かを改めて定義する必要がある」ということになります。
「毎日」の容認する「日米同盟」からの脱却こそ、真の日本「国家の目指す方向」なのです。憲法の平和主義と非核三原則に依拠した「東アジア平和共同体」構想を自分の頭で考えることを日本のマスコミに要請したいと思います。これこそが真の国家戦略と言えます。何故ならば最高法規である憲法に依拠しているからです。そうした軸足をしっかりと固めれば、国際社会から称賛と賛同の声が寄せられてくることは明らかです。逆に言えば石原・橋下・安倍氏のような輩は恥ずかしくてメディアに登場することはできないはずです。
このことは、決して「威勢のいいスローガン」でも何でもありません。戦後の日本とアジア、世界の歴史が経験してきた「試され済み」のことです。武力で紛争を解決するという手法は、アメリカの歴史も、旧ソ連東欧など「社会主義圏」の歴史も破綻したことは、歴史の最大の教訓です。
以下、各紙の要約を掲載しておきます。
琉球新報社説 米将校の住居侵入 基地を限りなくゼロに 2012年11月20日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-199424-storytopic-11.html
在沖米兵による事件が後を絶たない中、今度は指導的立場にある将校が捕まった。事は重大である。米軍の再発防止策、綱紀粛正には一片の信頼も置けない。…米軍と県民の摩擦は強まり、米兵事件の根絶に向け恒久的外出禁止を掲げたり、在沖米軍基地の撤去に言及する首長や議員が増えている。…沖縄に米兵が駐留し続ける限り、事件は続発する。その被害はもう甘受できない。米兵と基地を大幅に削減し、ゼロに近づけることしか有効な再発防止策はなかろう。
沖縄タイムス社説 [米兵また住居侵入]再発防止策は失敗した 2012年11月20日 09時32分
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-11-20_41753
沖縄の人たちの激しい怒りやかつてない反発は、金網の向こうの米兵にどれだけ届いているだろうか。米軍の隊員指導は、四軍の末端兵士に十分に浸透しているだろうか。「綱紀粛正」「再発防止」という言葉がむなしい。夜間外出禁止令が立て続けに破られ、不法行為が行われたということは、再発防止策が失敗したことを意味する。…県民の生命・財産が日常的に脅かされている現状を放置することは、許されない。…玄葉光一郎外相は「言語道断」と指摘し、森本敏防衛相は「許し難い」と語ったが、強い口調の割に、通り一遍の発言という印象はぬぐえず、やる気が少しも伝わってこなかった。 従来のような再発防止策ではもはや事件を防ぐことができないと言うべきである。…政府が沖縄の民意を無視し続けるのであれば、非暴力抵抗の取り組みをもっと強化すべきだ、との声が県内で急速に広がっている。 米兵に対して沖縄の現状を知ってもらうための働きかけを行い、米軍内部に「沖縄への共感」の声を生み出す。 米議会への要請行動や、再選されたオバマ米大統領へのレター作戦、国際機関への訴え、米国メディアへの働きかけ、国内行脚…。 「敵意に囲まれた基地は機能しない」という言葉がリアルに響くようになった。
東京・中日社説 相次ぐ米兵犯罪 地位協定改定も争点に 2012年11月20日
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2012112002000094.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012112002000149.html
日米安全保障体制を続けるのなら、基地を減らし、治外法権的な地位協定の改定が必要だ。 在日米軍による「綱紀粛正」は結局、掛け声倒れに終わった。…相次ぐ米兵の事件、事故の背景に植民地の支配者のような意識があるのなら言語道断だが、少なくとも軍紀の乱れは否定できない。 もはや在日米軍の軍人・軍属に特権的な法的立場を認めている、治外法権的な日米地位協定を抜本改定しなければ、軍紀の乱れをただすことなどできまい。 在日米軍基地を全廃すれば、米兵の事件、事故はなくなるのだろう。日米安保体制が日本の平和と安全に不可欠で、米軍への基地提供が引き続き必要だというなら、在日米軍基地の74%が集中する沖縄県内の基地を減らし、地位協定を抜本改定すべきではないか。…民主党は…地位協定の…「運用改善努力」に後退…自民党は地位協定の運用を不断に改善する…と主張してきた…国民の生活が第一と公明党は地位協定改定を主張し、共産党は協定改定に加え、在日米軍基地の撤去を掲げる。各党間の活発な論戦を期待したい。
毎日社説 衆院選・外交 海洋国家の戦略を語れ 2012年11月20日 02時30分(最終更新 11月20日 18時01分)
http://mainichi.jp/opinion/news/20121120k0000m070142000c.html
領土をめぐる近隣諸国との対立が国民の不安をかきたて、平和や安全への意識がかつてなく高まっている。なのに日本の政治は政局優先の目先の権力争いばかりで、目指すべき国の針路も国家戦略もあいまいなままだ。 危機が深いのに日本の首相は毎年のように交代し、世界から相手にされない。国際社会における存在感はますます低下している。どうやって歯止めをかけるか。衆院選はそれを問う機会にすべきである。…これからも短命首相が続くようなら、日本の首相と長期的な視野でアジア太平洋地域の将来の秩序をじっくり話しあおうとする外国の首脳などは出てこないだろう。 どんなにすぐれた外交構想があろうが、首脳が1年で辞任していては絵に描いた餅である。主要国と対等に議論し国益に沿った外交をするには、まず安定した日本の政治の仕組みが欠かせないのである。…重要な国際会議や首脳会談より国会日程が優先され、外交が政局の人質になるのは永田町の長年の悪癖だ。その責任は民主党にも自民党にもある。…特例公債法案を政局の道具にしないことで合意できるのなら、党運営や国会運営も変えられるはずだ。どこが政権を握ろうが、政党や国会が外交の足を引っ張る政治は卒業してもらいたい。…今回の衆院選は日本がそのような他人任せ外交から脱却し、自分の頭で考え、国家の目指す方向性、国益を明確にする作業を始める機会と位置づけるべきだろう。国家戦略を練り上げていくためには、何が国際社会における日本の国益かを改めて定義する必要があるからだ。…威勢のいいスローガンだけの外交は空疎である。…近隣諸国との対立をあおるだけの外交はオバマ米政権との摩擦を強め、日米同盟を損なうだろう。 衆院選ではこうした点を明確にしたうえで、大きな外交構想を地に足をつけて議論してほしい。
【産経主張】 日米首脳会談 対話だけで領土守れるか 2012.11.21 03:38
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121121/plc12112103390001-n1.htm
首相はこの厳しい現実を踏まえ、尖閣防衛と実効統治の強化策や米軍再編など日米同盟強化の具体的行動で結果を出すべきだ。 会談の冒頭、オバマ氏は「日米同盟は地域の繁栄と安全の基礎」と強調した。これに対し、首相は「東アジアの安保環境は厳しくなり、同盟の重要性が増している」と応じ、オバマ政権のアジア太平洋重視外交を歓迎した。…問われているのは、尖閣をどう守るかだ。…胆力や度量は必要だが、中国の強まる攻勢に対して、領土や主権の侵害をいかに抑止するかの具体策こそ提示すべきだ。 冷静な対話も強い外交力も、同盟の確かな抑止力や防衛費の増額などの裏づけがあってこそ発揮できる。米側が普天間飛行場移設など在日米軍再編の早期履行や、防衛協力指針見直し協議の進展を強く期待するのもそのためだ。…同盟強化もTPP問題も、行動が伴わなければ、国益につながる結果は生まれない。