愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

偽りの政権枠組み論垂れ流しで日米軍事同盟深化派と財界安泰を画策する大手マスコミの犯罪性を見破る!

2012-11-16 | 日記

いよいよ総選挙となりました。マスコミは、国会議員の「生き残りレース」を垂れ流し、政治不信を煽っています。このような政治家を温存・擁護してきた責任をこそ、と問われなければなりませんが、そうした視点をみることはできません。すべてのマスコミが、自分の立ち居地の正当性を前提にした記事を書いているのです。 

今回の解散について、各紙の社説はどのような評価を下したか、以下みてみます。積極的に評価する「産経」「日経」「毎日」と、野田首相の手法を批判しつつ積極的に評価する「読売」、批判しながらも「理解」を示した「朝日」、違和感を表明した「東京」という構図です。 

朝日 衆院16日解散へ 「異常な選挙」の自覚をもて 2012.11.15

私たちは首相の決断はやむを得ないものと考える。…ぎりぎりまで追い込まれる前に、解散に打って出る。そのことで政治を前に進める契機をつくりたい。そんな首相の思いは理解できる。

 

毎日社説:「16日解散」表明 首相の決断を評価する 2012年11月15日 02時30分

http://mainichi.jp/opinion/news/20121115k0000m070111000c.html

民主党内には依然、早期解散に反対する声が渦巻いているが、首相は年内総選挙に突き進む覚悟とみられる。私たちは首相の決断をまず高く評価したい。

民主党政権が発足して3年余。首相が何かを決めようとしても足元の民主党内からすぐさま反対論が噴出してまとまらない光景を私たちは何度も見てきた。政権運営は限界に近づいており、ここは有権者の選択によって政治を立て直すのが「動く政治」実現への近道と考えるからだ。 

衆院解散表明 首相の重い決断を支持する(11月15日付・読売社説)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121114-OYT1T01521.htm

 突然の衆院解散の表明だった。民主党内で早期解散への反対論が噴出する中、乾坤一擲(けんこんいってき)、中央突破を図ったのだろう。…内閣支持率が低迷しており、次期衆院選では、民主党の大敗も予想される。首相があえて解散・総選挙を断行することは、見識ある、重い決断と評価できる。

…年内解散を前提にすれば、解散日程が遅れるほど、来年度予算の編成や成立もずれ込むことが懸念されていた。景気への悪影響を抑える意味でも、最も早い「16日解散」は悪くない選択と言える。…党首討論の場で、野党に「踏み絵」を踏ませるかのように、解散条件の受け入れを迫る手法の是非はともかく、野田首相が党内の反対論にひるまず、解散権を行使することは支持したい。 

きょう衆院解散 民自公協調が「条件」を整えた(11月16日付・読売社説)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121115-OYT1T01403.htm 

日経 国民に信を問うときが来た 2012/11/15付

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO48440120V11C12A1EA1000/ 

【産経主張】野田首相 年内総選挙を早く決めよ2012.11.13 03:16

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121113/stt12111303170000-n1.htm 

産経主張 16日解散 国難打破する新体制を 野田首相がやっと決断した2012.11.15 03:19

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121115/stt12111503200004-n1.htm

民主党政権による「政策停滞」は顕著で、閉塞(へいそく)感が列島全体を覆っていた。遅きに失したものの首相の決断を率直に評価したい。 

違憲状態で総選挙とは 首相あす衆院解散 2012年11月15

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012111502000124.html

国民との約束に反して消費税増税を決めた野田内閣は総辞職するか衆院を解散するのが筋だが、違憲状態のままでの選挙強行には違和感を禁じ得ない。(引用ここまで) 

 

各紙が一応に主張しているなかで特徴的なことは、「違憲状態」問題です。民主主義の国であるならば当然のことです。しかし、これも野田首相の解散表明支持を前提にした「やむなし」論にたった現実追随記事に終始しているのです。このことは「朝日」「毎日」に示されています。 

「まずは人口に比例して議席を割り振る小選挙区の選挙権の平等を、どう確保するか」(朝日)などと述べていますが、小選挙区制そのものが不平等であることを何故言わないのか不思議です。 

「言うまでもないことだが、定数の大幅削減や、それに伴う選挙制度の変更は民主、自民、公明3党だけで決めるべきではない。次の通常国会では衆院だけでなく、参院のあり方も含めて、全党で具体的な協議を直ちに始めるべきだろう。…仮に法改正が間に合わないとすれば、あすの解散を1週間程度遅らせてでも実現させるべきだ。それは強く指摘しておく」として大見得を切って批判しておきながら、「政権運営は限界に近づいており、ここは有権者の選択によって政治を立て直すのが『動く政治』実現への近道と考えるから」と「目的のためなら手段は選ばない」いう意味の「理由」を使って、今回の解散表明を支持しているので。矛盾しています。(毎日) 

そのなかで「東京」だけが正しいことを言っています。以下みてみます。 

「さらに、首相が党首討論で、年内解散と引き換えに、自公両党に対して衆院定数の削減を迫ったことは、理解に苦しむ。 行政や国会の無駄削減は大賛成だが、それに努力すれば増税が許される話にはならないはずだ。 議員定数の適正水準は衆参両院の選挙制度全体を見直す中で導き出されるべきであり、減らせばいいものではない。政府の役職に就く与党議員も増えた。むやみに減らせば国会運営に支障が出る。 衆院定数を民主党の主張通り四十削減しても最大で年間四十億円程度の経費削減にしかならない。年間三百二十億円に上る政党交付金を削減する方が効果的だ」(引用ここまで) 

特に石原「太陽の党」は「たちあがれ」の政党助成金を得られるように画策しているのですから、呆れますが、こうした事実をもっと強調してして然るべきです。 

次の問題は、選挙戦についてです。まず政策論抜きの枠組み論を先行させ耳目を引いていることです。 

「次の政権の使命は何か、メリハリのついた争点を示すことだ。…民主党はこの3年の反省をふまえ、財源をふくめ現実的で説得力のある工程表を今度こそ示さねばならない。 その責任は野党も同じだ。…衆参の『ねじれ』をどう克服し、政治を前に動かすかの具体策もぜひ聞きたい。 『第三極』を名乗る各党もふくめ、活発な政策の競い合いに期待する」(朝日)と日米軍事同盟の是非、財界擁護か否か、憲法擁護か否か、について語ろうとはしていません。 

「前回の衆院選で民主党が掲げたマニフェストは財源の手当てをおろそかにした結果、破綻した。民主党はこの点をさらに厳しく検証し、マニフェストを再構築すべきだ。無論、各党とも公約作りを急ぐべきだ…TPPに関しては自民党も意見がまとまっておらず、主張はあいまいだ。これまで、ともかく早期解散を要求してきた自民党だが、今後は早急に党内議論をまとめる必要がある。他党や新党も同様である。…ブームや風に流されず、政策が具体的にきっちりと語られる。そんな衆院選になるよう、各党準備を急ピッチで進めてほしい」(毎日)と述べていますが、「ブーム」を垂れ流し「風」を吹かせてきたのは誰か、責任を明らかにしなければなりません。それぞれの政党が何を主張しているか、もっと具体的に明確にすべきでしょう。それがマスコミの責任です。まして多党化の中で、だからです。 

「衆参ねじれ国会の下、『決められない政治』が続いたが、民主、自民の2大政党が引き続き主導するのか、あるいは、第3極が勢力を大きく伸ばすのかも焦点となろう。…社会保障と税の一体改革や、原発・エネルギー、外交・安全保障政策についても、各政党は政権公約(マニフェスト)を通じて、立場を明確にしてもらいたい」(読売)とありますが、こうした枠組み論こそ、有権者を戸惑わせていると言えます。「読売」の掲げる分野における政策について真っ向対立軸をどのように有権者に報せていくか、そのことが「読売」に試されているのです。 

きょう衆院解散 民自公協調が「条件」を整えた(11月16日付・読売社説)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121115-OYT1T01403.htm

「衆院選後も、参院の会派構成が基本的に変わらない以上、政治を前に動かすには、民自公協力の枠組みの維持が重要となる。 各党の消長がかかる衆院選は、激しい“非難合戦”に陥りがちだが、民自公3党は、そのことを十分念頭に置いて、選挙戦に臨まねばならない」(読売)とあるように、政策論争を実現するためには、マスコミの真実を尊重した報道は欠かせないと思います。 

「衆院選は2009年8月以来、3年4カ月ぶりだ。前回選での政権交代を経て、有権者は自身の選択の重みを改めて自覚したはずだ。与野党は重要政策への態度を明確にし、分かりやすい争点づくりに努めてほしい」(日経)の主張も同じです。「分かりやすい争点」は、実はハッキリしているのです。ハッキリさせていないのは、「日経」自身なのです。 

「国民が知りたいのは「景気をどう浮揚させるのか」「財政再建はできるのか」「エネルギー政策、なかんずく原発の是非」「環太平洋経済連携協定(TPP)に参加するのかしないのか」などだ。…国民にこうした選択肢を示し、その実現に向けて政党同士が切磋琢磨(せっさたくま)する。これこそが政治の目指すべき姿だ。次の選挙を政治立て直しの場にしよう」(日経)というのであれば、公平な報道に終始すべきでしょう。 

この枠組み論も同じです。「石原慎太郎前東京都知事らの太陽の党、橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会など第三極と呼ばれる勢力は、既成政党を批判して支持を広げようとしている。…財政規律の確保は当然だが、「決められる政治」に向かう重要な合意だ。総選挙後も枠組みを維持し、国家や国民の利益となる政策実現の推進力とすべきだ」(産経)とあるように、石原氏らの動きが「既成政党批判」ともてはやすのは、事実を反映していません。理由は、「第三極には、衆院選後の保守勢力の結集を含めた政界再編の先導役も期待される」(産経)とあるように、石原氏は既成の枠組み、既成の体制復活勢力そのものだからです。 

その点で「国家の基本となる政策を曖昧にしてはなるまい。維新の会やみんなの党にも、より明確な国家観の提示を重ねて求めたい」(産経)のいうことは正しいと思います。国民に一切の偏見や誤解をなくした報道をお願いしたいものです。 

その点では、「東京」も同じです。 

東京 石原新党旗揚げ 「中道路線」の増す重み 2012年11月14日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012111402000118.html

「これら第三極勢力が一定の支持を集める背景には既成政党への失望感があるのだろうが、理念・基本政策の一致なき結集は、選挙目当ての野合との批判を免れない」とありますが、「第三極勢力が戦後体制の見直しや憲法九条改正などに重きを置くのなら、それに歯止めをかける中道路線は意味を増すのではないか」「もちろん中道が、党内融和を取り繕う方便であってはならず、路線実現のために理念・政策を具体化することが欠かせない。与野党の関心は解散時期ばかりに集まっているようだが、重要なのは選挙で何を国民に問うかだ。 国民の生活に直結する社会保障の在り方や消費税増税の是非はもちろん、憲法、外交・安全保障、原発の是非を含むエネルギー政策など国の基本政策についても各党は立場を明らかにすべきである」などと述べているように中身のない「中道」「中庸」論を展開するのは止めるべきです。「極右」「右翼」「中道」「左翼」「極左」などという曖昧な枠組み論で国民を誘導するのは止めるべきです。日米軍事同盟廃棄派・財界への課税派についての政治的動きをどのように報道しているか、ポイントです。 

「各党、候補者は消費税増税の是非や原発を含むエネルギー政策、社会保障制度改革など、国民の関心を集める分野については特に、分かりやすく公約を提示してほしい。 それらを吟味し、有権者の選択に資する判断材料を提供する。それは新聞の役目だと、この機にあらためて肝に銘じたい」(東京)というのであれば、事実を公平に報道してほしいものです。このことは、以下の記事にも言えることです。 

「なぜ政党が分裂し、新党が生まれ、離合集散を続けるのか。混乱を招いたのは、野田佳彦首相の解散表明が突然だったこともあるが、二大政党の民主、自民両党の統治能力が劣化しているのが最大の要因だ」とありますが、「劣化」を招いてきたのは、二大政党以外の政党を無視してきたこと、「野党」と言えば、「自民」「公明」「みんな」までであったことなど、その不公平さが、二大政党政治の政策に基づく論戦の軽視につながっていたのではないでしょうか? 

「現在の衆院の選挙制度の小選挙区比例代表並立制は、二大政党を軸とする政治の実現を目指して導入された。大政党に有利で少数意見は反映されにくい。 だが、現在の政治状況はそれに逆行し、小党を次々と生んでいる。この皮肉な現実は、民主、自民の二大政党が政党としての機能を果たしていないことを物語っている」(東京)ことそのものが、マスコミがつくりあげてきた二大政党政治の破綻を示しています。 

しかも「民主、自民の2大政党に対抗する第3極の新党設立が相次ぐ中、政権の枠組みの選択が最大の焦点となる」(読売)とか、「財政規律の確保は当然だが、『決められる政治』に向かう重要な合意だ。総選挙後も枠組みを維持し、国家や国民の利益となる政策実現の推進力とすべきだ」とあるように、二大政党政治の破綻を3党合意という枠組みで誤魔化していくのです。それでも化けの皮がは剥がれたときは、第三極か、それ以外の「政界再編」か、ということになるのでしょう。いずれにしても、ゴマカシです。 

以上のように、偽りと架空の枠組み論ではなく、日本の現実と政策にもとづく政権の枠組み論で選挙をたたかうべきです。

 衆院きょう解散…政権枠組み選択が最大の焦点(2012年11月16日07時06分  読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2012/news1/20121115-OYT1T01448.htm

 異例の多党選挙 現時点で15党乱立 2012年11月16日 朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012111602000095.html

 

「朝日」「日経」は検索できませんので、全文を掲載しておきます。

朝日 衆院16日解散へ 「異常な選挙」の自覚をもて 2012.11.15

 あす16日に衆院を解散する。 野田首相が、自民党の安倍総裁、公明党の山口代表との党首討論で表明した。総選挙は来月4日公示、16日投開票の日程で行われる。 私たちは首相の決断はやむを得ないものと考える。 社会保障と税の一体改革関違法をめぐり、自民、公明両党の党首と「近いうち」の解散の約束を交わしてから3ヵ月。首相がその約束をなかなか果たさないことで野党の不信を招き、政治の動きはほとんど止まったままだった。 ぎりぎりまで追い込まれる前に、解散に打って出る。そのことで政治を前に進める契機をつくりたい。そんな首相の思いは理解できる。 首相は党首討論で、「16日解散」の条件として、赤字国債発行法案と衆院の選挙制度改革法案を、今週中に成立させることを求めた。

違憲状態下の選択

民主党がきのう国会に提出した選挙制度の法案は、最高裁に違憲状態と指摘された「一票の格差」是正のための小選挙区の「0増5減」と、国会議員が身を切る姿勢を示す比例定数の40削減が盛られている。 「0増5減」については自公両党も異存がない。 一方で、比例区の削減には野党各党の足並みがそろう見通しはない。 ならば、定数削減は来年の通常国会で実現する。それまでの間は議員歳費をカットして身を切る覚悟を示す。そのふたつを確約してほしい。首相は安倍氏と山口氏にそう迫った。 自公両党は、この提案を受け入れた。赤字国債発行法案とあわせ、今国会では最低限、「0増5減」法案を成立させる必要がある。そのうえで、各党にしっかりと自覚しておいてもらわねばならないことがある。違憲状態下のきわめて異常な選挙を、有権者に強いるということである。解散までに「O増5減」法案が成立したとしても、次の総選挙はいまの定数配分のまま行われることになる。具体的な選挙区割りと周知期間に、少なくとも数力月はかかるからだ。 このまま次の総選挙が行われる結果、裁判になれば「違憲判断」が下る可能性がある。選挙の一部無効が宣言され、やり直し選挙が迫られるという見方も出ている。

つまり、新たに選ばれる議員一は、民意を正しく反映しない選挙で選ばれるのだ。さらにいえば、次の政権はそうした議員たちによってつくられるということでもある。 そんな政権は正統性を欠く。そう批判されても仕方がないのである。「違憲状態の選挙に投票はできない」と投票をボイコットする有権者が出ても、不思議はない。この事態の深刻さを、各党はかみしめるべきだ。

公約抜本改革盛れ

 野田政権がすでに政治を前に進める力を失って久しい。 今の政権に、格差を是正した新制度での選挙が可能になるまでの数ヵ月間、仕事をせよというのは現実的ではない。事実上の「政治空白」を続けることになるからだ。 違憲状態の選挙は、今回で最後にする。次からはきちんと正統性の担保された選挙をする。 悩ましいが、今回はそうした次善の選択もやむを得まい。

 各党に求めたいのは、マニフェスト(政権公約)に、選挙の正常化に向けた具体策を盛り込むことだ。 まずは人口に比例して議席を割り振る小選挙区の選挙権の平等を、どう確保するか。 衆参両院の役割分担を踏まえた抜本的な制度改革は、首相の諮問機関の選挙制度審議会に議論をゆだね、その結論に従うことも明記すべきだ。

 次の政権の使命問え

 総選挙が一気に間近に迫ったことで、各党はマニフェストづくりを急ぐことになる。 項目の羅列だけでは困る。次の政権の使命は何か、メリハリのついた争点を示すことだ。 首相は党首討論で、自民党政権時代の原子力政策や膨れあがった財政赤字を「負の遺産」と批判した。 「2030年代の原発ゼロ」を掲げた脱原発や、公共事業のあり方の改革を争点に訴えていくということだろう。 ならば民主党はこの3年の反省をふまえ、財源をふくめ現実的で説得力のある工程表を今度こそ示さねばならない。 その責任は野党も同じだ。 たとえば「民間投資をふくめ10年間で200兆円」の国土強靭化を公約の柱に掲げる自民党も、財源を具体的に示してもらわねばならない。 衆参の「ねじれ」をどう克服し、政治を前に動かすかの具体策もぜひ聞きたい。 「第三極」を名乗る各党もふくめ、活発な政策の競い合いに期待する。(引用ここまで)

日経 国民に信を問うときが来た 2012/11/15付

 野田佳彦首相が16日に衆院を解散する意向を表明した。解散反対論が多かった与党の民主党も最終的にはこれを受け入れ、次の衆院選は12月4日公示―同16日投開票の日程での実施が固まった。国民に信を問うときがついに来た。

 衆院選は2009年8月以来、3年4カ月ぶりだ。前回選での政権交代を経て、有権者は自身の選択の重みを改めて自覚したはずだ。与野党は重要政策への態度を明確にし、分かりやすい争点づくりに努めてほしい。

0増5減の実現急げ

 「16日に解散してもよい」。首相は党首討論で初めて解散の日取りを明示した。民主、自民、公明3党が8月に社会保障と税の一体改革をめぐる合意を締結した際に述べた「近いうち」との言い回しから大きく踏み込んだ。

 解散の前提としてきた3条件のうち(1)赤字国債発行法案の成立(2)社会保障と税の一体改革に関する国民会議の立ち上げ――は与野党が今週前半に合意した。

 残るは選挙制度改革。首相は討論の場で衆院の1票の格差是正のための小選挙区0増5減に加え、消費増税前の「身を切る改革」として比例定数を40議席削減したいと力説した。16日という期限を切って安倍晋三自民党総裁や山口那津男公明党代表に協力を迫った。

 自民党はこれまで0増5減の先行実施を主張し、比例定数の削減に反対してきた。しかし「年内選挙」を優先すべきだと判断。安倍総裁は討論後、比例削減は来年の通常国会で実現させると応じた。

 衆院の1票の格差は昨年、最高裁が違憲状態との判決を下した。現行の区割りのままでの選挙実施は好ましくないが、次の次の選挙での0増5減の実施を担保することは最低限の改革にはなる。与野党は詰めの議論を急ぐべきだ。

民主党は混乱が続いている。野田内閣の支持率はどの世論調査でも発足以来の最低水準にあり、来月に衆院選が投開票されれば苦戦は免れない見通しだ。党内には年内選挙を歓迎する声はほとんど聞かれない。

 生き残りをかけて日本維新の会などになだれ込もうとする動きがある。離党者が相次ぎ、党がばらばらになる可能性もある。

 だが、政治の現状をみると、政権にしがみつく民主党と、対決姿勢を強める自公両党など野党とのあつれきが深まり、すっかり膠着状態だ。このまま「動かない政治」を続けていても政治空白が長引くだけで、国家国民のためにはならない。

 自公両党が繰り返す「近いうちと言って3カ月たっても解散しない嘘つき」との攻撃は、首相には相当こたえていたようだ。民主党全体としても、選挙をこれ以上先延ばししても今よりも明るい展望は開けまい。ここが潮時だ。

 党首討論で首相は「自民党の負の遺産が大きすぎた」、安倍総裁は「民主党はポピュリスト」と批判し合った。ただ、ほとんどの時間は「解散せよ」「定数削減に協力してほしい」との言い争いに費やされ、「選挙でまみえるのを楽しみにしている」(安倍総裁)にしては政策的な論戦はなかった。

 国民が知りたいのは「景気をどう浮揚させるのか」「財政再建はできるのか」「エネルギー政策、なかんずく原発の是非」「環太平洋経済連携協定(TPP)に参加するのかしないのか」などだ。

政策本位の選挙戦を

 前回選で民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)は年金、医療、子育てなどいずれの項目も財源の裏付けのない机上の空論で、実現できないままに終わった。永田町では「マニフェストは嘘の代名詞」とまでいわれている。

 だからといって、選挙の公約が昔ながらの「明るい住みやすい日本をつくります」といった抽象論に戻ってよいわけではない。各党が現実に即した地味でも実効ある対策をきちんとつくり上げ、その善しあしを国民に問う。今度こそ本当の政策本位の政治を実現しなくてはならない。

 自民党はすでに衆院選の公約をまとめたが、民主党はマニフェストづくりの途中だ。これではまともな選挙戦にならない。一刻も早く政策目標を決めてもらいたい。

 自民党の安倍総裁は「自民らしさ」を掲げ、保守志向を鮮明にしている。民主党内には中道リベラル路線を打ち出すことで対立軸をつくり出す構想もある。

 国民にこうした選択肢を示し、その実現に向けて政党同士が切磋琢磨(せっさたくま)する。これこそが政治の目指すべき姿だ。次の選挙を政治立て直しの場にしよう。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO48440120V11C12A1EA1000/

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