今日は新聞休刊日でした。しかし沖縄二紙は社説を発表しました。その社説を読んで、やっぱりな、と思いました。その理由を述べてみます。
1.今回の東京五輪招致の最大の焦点は、アベノミクス成長戦略断行です。その裏には日米軍事同盟深化論と大東亜戦争正当化論と憲法平和主義の否定、自民党の憲法改悪改憲論の具体化でした。
2.そのような位置づけの下で展開された招致運動が成功したわけですが、その視点で今日の沖縄二紙の社説を検証してみたということです。明日は全国紙をはじめ地方紙が社説を発表するでしょう。検証してみます。
3.この間沖縄二紙が発表してきた社説を読むと、そのスタンスは、沖縄にとって諸悪の根源である日米軍事同盟廃棄ではなく容認です。
4.問題は、容認する思想もそうですが、そこからくる論理について、検証することです。この日米軍事同盟容認思想と論理が、今回の東京五輪にあたってどのように現れているか、です。
5.その際の最大の問題は、安倍首相の「ウソ」について、沖縄二紙はどのような日本語で表現したか、そこに注目して読んでみました。このような評価は、実は米軍基地の弊害を告発する際の腰砕け表現と、相通ずるものでした。この奥深いところにあるのは、日米軍事同盟容認思想があることは明瞭です。あれだけ「沖縄差別」を説きながら、その差別の権化である軍事同盟には手をつけないのです。「沖縄差別」論を容認するとして、それならば「フクシマ差別」はどうするのか、です。
6.更に言えば、日米軍事同盟容認派をつくるために推進されてきた沖縄復興予算というアメがどのように沖縄県民にとって有益だったかです。沖縄振興費と基地のつくりだす経済効果と基地のない沖縄がつくりだす経済効果を天秤にかけてみるということです。
7、その視点は、実はゲンパツ立地地域にばら撒かれたゲンパツ容認資金=原発交付金の経済効果とゲンパツに頼らないで地域の活性化と地域循環型経済づくりを天秤にかけて検証するという視点です。
8.こうした視点が、実は、今回の五輪開催の経済効果と連動しているのです。
9.何故か。基地についても、ゲンパツについても、五輪についても、皆、一見すると庶民の生活を豊かにするものというフレコミで、庶民の納得をつくりだしているからです。しかし、実際のところは、現実を見れば明瞭です。
10.今回の五輪についても、経済効果は3兆円、雇用は15万人というフレコミです。東京都が積み立てたと言われている4000億円、これは税金です。このカネは、誰が出したのでしょうか。都民です。この税金が、都民にどのように還元されていくか。全く不明です。更に言えば経済効果と言われている3兆円が、どのように庶民に分配されるか、15万人の雇用がどのような賃金効果をもたらすのか、全く不明です。そこが、ゴマカシとスリカエとトリックです。
11.何故か。沖縄を見れば、ゲンパツを見れば明瞭です。これらの地域にばら撒かれたカネは、誰が出したか、そうです。国民です。そのカネを出した国民に、どのような恩恵がもたらされたか、政府は、或いは吹聴した勢力は検証したでしょうか。
12.更に言えば、前回の東京五輪の際の経済効果が、庶民にどのような効果をもたらしたか、企業にどのような効果をもたらしたか。その検証を踏まえて、今回の東京五輪の経済効果を明らかにしていかなければなりません。
13.愛国者の邪論の主張は、ズバリ、一言です。経済効果は平等に還元しろ!ということです。何故か。その理由は、以下のとおりです。
株式会社の出資者である株主がその恩恵を受けると同じように、納税者である庶民を出資者として意味づけるのであれば、その見返りは庶民にもたらされなければなりません。しかも、「財産権」は「これを侵してはならない」とあると同時に、「公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」とあるのです。「私有財産」は単に「私有」ではなく、きわめて「公共」的なものだということです。
ここが最大のポイントです。法人企業である株式会社の財産である「剰余金」=「内部留保」は単なる「私有財産」ではないことは明らかです。それは、各会社のガバナンスにも明記されているようにステークホルダーに還元されなければならないのです。
14.では、今回の東京五輪はどうでしょうか。前回の五輪後の高度経済成長路線の延長線上であることは、アベノミクス成長戦略路線という位置づけをみれば、その方向性は明らかです。ここに最大のゴマカシとトリックがあります。庶民にとってどのような五輪にするか、そこが最大の争点と言えます。
15.同時に、今回の五輪が、IOC委員が求めたように、平和の下で行われるかどうか、ここにも最大の争点の一つが見えてきます。日米軍事同盟に基づく「原子力の平和利用」の破綻をどうするのか、平和主義を掲げる日本国憲法下において、集団的自衛権行使をどうするのか、憲法の平和主義をより具体化するのか、否定するのか、そのことが鋭く問われているのです。
16.しかし、安倍首相の思惑と、これが国際公約として発言されたゲンパツの安全・安心と首都直下型・東南巨大地震への備えなどに対して、安倍首相の推進するアベノミクシ成長戦略からくる「ウソ」は、実はトンデモナイ発言であったのです。IOC委員の投票行動には通用したかもしれませんが、今後起こるであろう諸事実は、冷厳です。マスコミのヨイショと。現実の乖離がどれだけ顧みられるかです。
17.今回の東京五輪決定後の、アベノミクス成長戦略推進派の動向をみると、イケイケドンドンですが、最大の問題は、庶民への経済効果が、いっさい不明で、強行されようとしているのです。
18.以上の視点で、沖縄二紙の社説を検証してみました。結果は、これでは沖縄から米軍基地を撤去させ、沖縄独自の地域経済循環型経済の構築、琉球王国時代に中継貿易地として果たしてきた役割、繁栄を構築することは難しいだろうな、ということです。沖縄が、その地政学的位置づけと歴史を教訓とするのであれば、軍事的安全保障論から脱却し、人間的・非暴力の安全保障論にもとづく、沖縄の役割の再認識と再構築以外に、沖縄の繁栄は有り得ないということです。それは日米軍事同盟容認の立場ではなく、日米軍事同盟を廃棄し日米平和友好条約への道です。これは万国津梁之鐘銘にも明記されていることです。
19.同時にゲンパツ立地地域がゲンパツに依存しない道の模索と具体化です。ゲンパツ立地地域の利益という狭い枠から脱却し、その再生再構築を図るためには再生可能エネルギーの具体化と地産地消経済の構築です。そのためにも現場からの声をどのように国家や他地域の住民に発信していくか、文字どおり自治と国民間の連帯を具体化していくかです。
それでは、沖縄二紙の社説をご覧ください。
五輪開催地に東京 夢と感動 世界と共に 被災地復興を忘れるな2013年9月9日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-212228-storytopic-11.html
国際オリンピック委員会(IOC)は、2020年の夏季五輪とパラリンピックの開催都市に東京を選んだ。56年ぶり2度目となる。東日本大震災の復興は道半ばで、政治、経済、外交に閉塞(へいそく)感が漂い、将来に不安を抱く国民は多い。平和の祭典の開催は、国民に希望を抱かせる朗報だ。夢と感動を世界と共に分かち合い、スポーツ文化を一層高める礎にしたい。
経済効果は3兆円とされ、景気回復の足取りが強まることが期待される。その恩恵は幅広い国民が享受せねばならない。一方で、国威発揚ムードが先走り、被災地復興や社会的弱者の救済を置き去りにしてはならない。
■選手が押し上げ
東京は、スペインのマドリード、トルコのイスタンブールとの激しい招致合戦を制した。東京の高度な都市機能は「安全で確実な五輪」を印象付け、基金4千億円を積み立てた財政基盤の強さも評価された。安倍晋三首相が開催地決定の総会に乗り込むなど、政財官民を挙げた招致活動を印象付けたことも奏功した。IOCの有力委員を巧みに取り込んだロビー活動も2009年の敗退の教訓を生かした。多くの勝因の中でも、選手たちの五輪開催に懸ける情熱が活路を開いたのではないか。IOCが実施した支持率調査で、2012年5月時点の東京は47%にとどまり、低い支持率が弱点とされた。その年のロンドン夏季五輪で日本選手団は過去最多の計38個のメダルを獲得した。全てを懸けて打ち込むアスリートの努力の尊さ、困難を克服する精神力とチームワークの強さ-。選手団の活躍は国民にスポーツの魅力を再認識させてくれた。50万人が繰り出して選手と感激を共有した東京・銀座での凱旋(がいせん)パレードは、五輪招致ムードを盛り上げる大きな転機となった。ことし3月の支持率は70%にはね上がり、懸念を拭い去った。五輪開催の波及効果は大きい。幼いころから競技を始め、五輪選手を目指す中高校生から現役の成人選手、その指導者は、自国開催の五輪出場の夢を描き、情熱を高めるだろう。それは着実に競技力向上に結び付くはずだ。日本のスポーツ界は、お家芸の柔道などで勝利至上主義に陥った暴力的な指導が明るみに出て、国際的に厳しい視線を浴びている。東京五輪に向け、競技力向上やスポーツ振興の望ましい在り方をめぐる本質的議論を深めてほしい。
■首相発言に危うさ
開催地決定の際、福島第1原発の汚染水漏れがIOCや各国メディアの関心を集めたが、安倍首相の説明には事実と異なる部分があり、危うさが否めない。首相は最後のプレゼンテーションで、「私が安全を保証する。状況はコントロールされている」「影響は港湾内で完全にブロックされている」などと断言した。しかし、政府が総合的な対策を決めたのは今月3日で、汚染水流出を完全に食い止めるめどは立っていない。汚染水は、港湾内にとどまらず、外洋にも流れている。安倍首相が「安全」を宣言したことで、汚染水問題の解決など、原発事故の収束は国際公約となった。安倍首相は、重い責任を抱え込んだ。福島の被災者は「『汚染水は大した問題じゃない。東京は安全だ』と聞くと、置いてきぼりのような感じで寂しい」と胸中を吐露している。政府は、五輪招致に注いだのと同等以上の情熱で、復興への取り組みを加速すべきだ。五輪開催国に選ばれた日本は、2010年代中盤以降、国家間の利害を超えて、国際協調を導く重要な役割を担うことになる。歴史認識などで内向き志向が強まっているとして、日本は、国際社会から右傾化を警戒されつつある。それを自覚し、五輪開催を機に領土問題などの諸課題で、国際協調を重んじ、平和的解決に尽くす国家像を紡ぎだしてほしい。
社説[20年東京五輪決定]真の「復興」世界に示せ 2013年9月9日 09時17分
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-09-09_53862
2020年の夏季五輪・パラリンピックの開催都市が東京に決まった。1964年の第18回東京大会以来、56年ぶり、アジアでは初の2度目の開催となる。世界の注目が集まるオリンピックの開催が多くのメリットをもたらすことは言うまでもないだろう。スポーツを通した青少年への教育効果をはじめ、インフラなどの整備による経済効果、国民に夢と希望を与えるビッグイベントである。約半世紀前に開かれた東京五輪は、戦後の高度成長を象徴するインフラ整備を加速させ、日本選手の活躍は、今につながるスポーツ文化の基盤をつくった。20年東京五輪が、青少年の新たな目標となり、国民のマインドや社会の雰囲気を明るい方向に導くきっかけになることを期待したい。今回の五輪招致は、東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)3都市の争いだった。マドリードが経済危機、イスタンブールがシリア情勢の影響、東京は東京電力福島第1原発の汚染水問題などそれぞれ懸念材料を抱えていた。国際オリンピック委員会(IOC)の総会に出席した安倍晋三首相は汚染水問題について「まったく問題はない。状況はコントロールされており、東京にダメージは与えない」と安全性を強調した。IOC委員からの質問には「影響は第1原発の港湾内で完全にブロックされている」などと説明。モニタリングの数値なども示し、委員らを納得させた。
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しかし、福島第1原発の汚染水漏れは、いまだ収束のめどが見えないのが現状ではないか。政府は今月3日、汚染水対策の基本方針を公表し、470億円の国費投入を決めた。安倍首相は「政府が前面に立ち、解決に当たる」と強調したが、遅きに失した感は否めない。東電任せの汚染水処理は破綻に近い状態だ。地上タンクから漏れた汚染水が排水溝を通じて外洋に流れ出た可能性が濃厚になっている。このため福島県の漁業者らは、試験操業中断に追い込まれている。汚染水が地下水に到達した可能性など新たな問題も浮上している。IOC総会の場で安倍首相が安全性を強調したことは、抜本的な汚染水対策を早急に実行することを世界に向けてアピールしたと、受け止めたい。政権の最優先事案と位置付け、全力で当たるべきだ。
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7年後の東京五輪開催は、被災地の人々にも希望を与えるだろう。しかし、福島県は今も約15万人が避難生活を余儀なくされている。「福島とは離れている。東京は安全だ」など招致活動の場での説明に対し、被災地の人々は複雑な思いも抱く。被災者が本来の生活を取り戻し、心から五輪開催を喜べる状況を一日も早く実現しなければならない。同時に安倍首相が述べたように「震災からの復興を成し遂げた日本の姿を世界中に向けて発信していく」という真の復興五輪を望みたい。(引用ここまで)
安倍首相の言動に批判的でありながら、しかし、実際は事実を容認し、規制事実化を容認しているのです。これこそが、ナチスの手口論の典型です。この思考の枠内でしか、国民の思考を展開させないというトリックにはまっているのです。土俵はアベノミクス論の枠内なのです。二紙が自覚しているかどうか、それは不明ですが、一つ一つの事実に対してどのように社説を書いているか、検証が必要です。