つづきです。
4.最後に、五輪東京招致の場で、現代日本の最大の問題である厳しい現実を隠蔽して、美辞麗句・無味乾燥な日本語を並べ立て大ウソの公約を発表したにも拘らず、それを批判せず、決まったことだからということで、東京五輪について、様々な美辞麗句を書き立てる全国紙の不道徳ぶりについて、コメントしておきます。
1.まず東京招致のために使った方便です。これは繰り返して指摘しますが、鳩山元首相の公約違反正当化の際の方便と同じだということです。極めて重大な政治責任問題です。
2.しかも政治家の政治的責任を曖昧にしたまま、水に流しながら、今後を語る手法は、以下の点で大問題です。
(1)大東亜戦争の戦争責任、すなわち天皇の責任、マスコミの責任などを曖昧にしてきたことと同じで、このツケは、今後ジャブとなって日本と国民にヒタヒタと効いてくることでしょう。
(2)学校の体罰やいじめの責任追及を曖昧にしてきた教育委員会に対して、また柔道界のセクハラや暴力問題を曖昧にしてきた日本柔道連盟に対して(まだあります。相撲協会もあります)徹底した批判を展開してきたマスコミは、何故安倍首相の大ウソを徹底して批判しないのでしょうか。
(3)東京招致に勝利するためには手段を選ばず、ドーピングに等しい「不正」まがいの「公約」発表は五輪憲章に違反する行為であるにもかかわらず、批判せず、むしろ、以下のような美辞麗句を書きたてているのです。
朝日 21世紀の新しい五輪の姿を示す成熟国家の力量やいかに。世界へ発信する真のプレゼンテーションはこれから始まる。
毎日 近代オリンピックの創始者クーベルタンの思想(オリンピズム)に基づき、スポーツを通じた教育と平和の運動が推進される場だ。
読売 五輪決定の報は、多くの国民に希望をもたらしただろう。五輪開催を東京だけでなく、東日本大震災の被災地、さらに日本全体の活性化につなげたい。
産経 首都中枢部の、大規模で新たな街づくり大震災の直後には、外国からのボランティアが被災者から食物を分けてもらい、恐縮しているといった話も聞かれた。誇るべき日本人の美徳である。そうしたもてなしの心を7年後の日本人も、すさませることなく、持ち続けていられるだろうか。そうでありたい。これは国民一人ひとりの課題でもある。
日経 五輪は単なるスポーツの祭典にとどまらない。その国の歴史のひとつの転換点になる巨大なイベントだ。7年後の五輪の開催をこの国、そして都市の未来を考える契機にしたい。
東京・中日 五輪の開催にはさまざまな面で大きな期待が寄せられている。二〇年までの経済波及効果は三兆円近くに上り、十五万人を上回る雇用が生み出される。昨年六月に東京都が公表した試算だ。十五年に及ぶデフレの克服と景気の上昇に弾みがつくかもしれない。トップアスリートの勇姿は閉塞感が漂う日本の社会に夢と希望を与えてくれるだろう。激しい競争と貧困、残酷なまでの就職難、少子高齢化に伴う負担の増大。先行き不透明な時代を生き抜く元気と勇気が湧くに違いない。…選手が落ち着いて競技に集中でき、観衆が安心して泣き笑いできる環境は被災地の復興抜きには成り立たない。立ち直った東北と首都東京の健在ぶりを示すことこそが最善のおもてなしになる。
(4)こうしたマスコミや安倍首相をはじめとした政界の姿勢は、子どもや若者にどのような影響を与えていくか、考えてみたことはないようです。不思議です。むしろ、以下のような日本語を書きたてることで、安倍首相の方便をゴマカシ、スリカエているのです。
まず、産経です。産経は正直です。産経自身が書いている諸政策について、以下のように述べているように、「五輪だから」ということではなく、五輪に関しての産経自身の目的は別のところにあるようです。当然です。このことについては、ここでは書きません。ではご覧ください。
産経
五輪を開催しなくても、やらなくてはならないことばかりだが、招致を好機にスピードアップを図ることはできる。
では、「五輪だから」ということで、各紙が並べ立てている諸政策・諸提案をご覧ください。わざわざ、こんなことを書き並べなべなくてはならない各紙の「苦悩」が浮かんできます。「五輪でなくてもやらねばならないことだらけ」です。大爆笑もんです。
その点、安倍首相の大ウソ=方便発言を中心に展開した東京・中日は、ズバリ!です。不十分ですが、他紙と違っています。少しのアッパレをあげておきます!
朝日
①少子高齢化に財政難の時代である。高度成長期と同じ夢を追いかけることはできない。 都市も社会も成熟期を迎えた今、インフラではなく、人に資産を残す五輪を提唱したい
②投資を注ぐ対象は、若者たちの心にこそある。
③人も文化も混じり合う世界の息吹を体験し、記憶に刻み、思考を広げる機会となろう。 参加者は選手だけではない。語学を磨いてボランティアになってもいい。観客としてでもいい。話題の選手を育んだ異文化に思いをはせる場を、家庭で、学校で、地域で、広げたい。
④五輪は「平和の祭典」でもある。外交関係が揺れる中国や韓国ともわだかまりなく交流できる雰囲気作りは欠かせない。一緒に夢を紡ぐ若者らの輪に国境の壁があってはならない。
⑤国内に目を向ければ、東京の一極集中ではいけない。国際オリンピック委員会(IOC)では、大震災からの復興という理念に共感し、票を投じた委員も多かった。東北地方の再興はもちろん、日本全土で五輪の恩恵を分け合う工夫が必要だ.
⑥高齢化時代のスポーツの意義を先取りする社会像をめざすのも、これからの五輪ホストの使命と考えるべき
⑦お年寄りや障害者も幅広く息長くスポーツと親しめる環境作りが求められる。パラリンピックにふさわしい街のバリアフリー化も急務
⑧人種も国籍も関係なく気軽に街で助けあえる心の余裕を育てたい
毎日
①少子超高齢化が避けられない社会においてどんな役割を果たせるのか。
②アジアの隣人である中国、韓国との関係改善に貢献できないか。
③東京招致決定を契機に国民一人一人が未来の社会、世界との関係について考えてほしい。
④景気の回復が実感できない中、経済波及効果に期待する人は多い。オリンピックは景気刺激の手段ではない。
⑤中学と高校の保健体育の体育理論でオリンピックなどの国際競技大会について学習するよう規定されたが、時間が少なく、教材開発も遅れている。日本オリンピック委員会はオリンピック運動の推進に向け、動画などの教材をホームページからダウンロードできるようにしてほしい
⑥オリンピック教育はフェアプレーの精神などポジティブな面を学ぶだけでなく、過度の商業主義や勝利至上主義、ドーピングなど負の部分を学ぶことを通してバランスのとれた判断力を子どもたちに身につけさせることが重要
⑦「国民の教養」という無形のレガシーにしたい。
⑧パラリンピックの開催に向け、障害者や高齢者に配慮したバリアフリーの都市づくりも進めたい。段差などのハード面だけでなく、偏見など心のバリアーも取り除くことができれば東京は世界のモデルになる。
読売
①安倍首相が、経済政策であるアベノミクスの「第4の矢」と言うほど、五輪への期待は極めて大きい。施設整備を担う建設業をはじめ、観光や不動産業など、様々な分野に効果が波及しよう。②五輪開催を東京だけでなく、東日本大震災の被災地、さらに日本全体の活性化につなげたい。
③主要競技場の電力に再生可能エネルギーを使用することや、湾岸部などの大規模な緑化事業など、環境に配慮した整備計画も着実に進める必要がある。
④パラリンピックの開催に備え、街のバリアフリー化を一層、推進することも大切だ。自国での五輪出場を夢見て、スポーツに打ち込む子供たちがますます増えるに違いない。
⑤文部科学省や日本オリンピック委員会(JOC)は、中高生を中心とした選手の強化に、戦略的に取り組むことが必要だ
日経
①くしくも、当時建設した首都高速道路が更新期に入るなど、インフラの老朽化が目立っている。加えて、東京は23区の主要な道路でさえ、電柱が多数残るなど、様々な課題を抱えている。 インフラの安全性を維持しながら、公園や街路樹を増やし、景観面でも誇れる都市に変えたい。
②五輪には多様な言語の観光客が来る。…街なかの外国語表示や案内所を増やすのと並行し、こうした新たな観光案内にも力を入れたい。同時開催のパラリンピックを機に「障害者が移動しやすい街」であることを世界に訴えるのもいい。空港やホテルなどで、これまで不足していた富裕客向けの施設やサービスも充実させたい。
③日本文化を伝え、外国人も満足する質の高い土産の充実は次の「地方観光」にもつながる。
④ソフト面に力を入れることこそ、外国人をひき付けるカギだ五輪の開催が決まったことは、日本経済のデフレからの脱却や、持続的な成長に向けた好材料になるだろう。
⑤しかし、五輪が公共事業の大盤振る舞いにお墨付きを与えたわけでは決してない。関係予算の使い道の透明性を高めて、あくまで身の丈に合わせた大会にしたい。それこそが、成熟した国における五輪に違いない。
どうだったでしょうか。以上の諸政策は、五輪でなくてもやらねばまらないことだらけです。五輪にかこつけてやらねばならないことを、わざわざ、いちいちあげて説明するのです。これこそ安倍自公政権を応援するキーワードです。ここが最大のポイントです。
しかし、このことは裏を返せば、五輪がなければ、アベノミクス成長戦略には想定外のことだらけの諸政策です。安倍自公政権が実行しないことだらけということです。だからこそ、わざわざ、ドーピング行為によって獲得した東京五輪を正当化するための方便として、誰もが否定できないことを並べ立てて安倍自公政権に「東京五輪成功」「国際公約」という枠を課して、激励して、ドーピング行為を免罪しようとしているのです。
全国紙が、そうした手法に立つのは何故か。それは、細川政権以後の「不安定」な政権が続いてきたことの裏返しという事です。その「不安定」政権が続いたのは、選挙制度と二大政党政治を煽ってきたこと、その破綻が明らかになったにもかからず、煽ってきたマスコミ自身がその責任を免罪し、一強他弱を良いことに成立した安倍政権に不安を持ちながらも期待を寄せ、長期政権化しようとしているのです。そのためにも、安倍自公政権に、ある時はブレーキをかけ、ある時は励ますというマスコミの戦略があるのです。
このマスコミの戦略は、マスコミ自身の戦略ではなく、日米軍事同盟深化派の戦略そのものです。このことは方便発言をしたにもかかわらず鳩山政権と安倍政権とでは、その対応が違っていることに、象徴的です。
(5)しかし、こうした日本社会の思惑、日米軍事同盟深化派の思惑が国際社会のなかで名誉ある地位を占めることができないことは明らかです。安倍首相のドーピング行為、方便は、今後大いなる禍根となって跳ね返ってくることでしょう。
何故ならば、今回の3都市の中で東京が選ばれた背景に、平和主義を掲げる日本の戦後政治があったこと、ゲンパツや基地、消費税など「ともすると日常の風景に埋没しがちだが」、国民の平和を求める地下水脈、すなわち平和的生存権思想が脈々と根付いていること、このことが奥深いところにあることを注目しなければならないことを強調しておきます。
何故国民は「日常の風景に埋没しがちか」、それは、今回の社説に観るように、日常的にテレビや新聞、雑誌、書物などマスメディアを通して日米軍事同盟深化派の容赦のないイデオロギー攻勢があるからです。
しかし、それでも、です。そのことは、愛国者の邪論が書いてきましたので、ご検討いただければと思います。
つづく