朝日は、21日付けの記事のなかで、法人減税政策の断行による効果を主張する安倍首相と菅官房長官、米倉経団連の思想を、以下のように紹介しています。
「経済成長が企業収益の改善をもたらし、賃金上昇や雇用拡大につながるというアベノミクスの基本思想」(安倍首相)、「企業業績が上がる。賃金が上がる。下請け代金も上がる。消費も増える。生産が拡大する。企業業績がさらに上がる。その好循環がつくれないとアベノミクスは失敗だ」(甘利経済再生相)、「企業が力をフルに発揮できる環境が整備できれば、雇用も上がるし賃金も上がっていく」(米倉弘昌経団連会長)
この思想は逆に言えば、「法人減税がなければ賃金が上がらないぞ、雇用も確保できないぞ」ということを言っているようなものです。ふざけるな!です。散々法人減税の恩恵を受けてきたくせに、何を言うか!です。ここに現局面の最大の課題があるように思います。
朝日は、この思想を紹介するという形をとりながら、真っ向から対峙している思想と運動を紹介することはしないのです。実は、彼らの思惑をこうした手法で振りまくのです。ここが最大のポイントです。しかし、消費税増税と法人減税による「懸念」が払拭されたわけではありません。だから、法人減税に難色を示し、消費税増税に反対ではない麻生副総理・財務大臣を「正義の味方」のように描くという手法を使うのです。
こうした麻生氏のような発言が注目されるのは「国民に増税、企業に減税」の理不尽性が浸透してきたからでしょう。増税派勢力の方法をめぐる内部対立が起こっているのです。国民と離反している証拠です。運動の成果といえます。大義は国民の側にあります。
日経 財務相、法人減税「投資、人件費に回る保証ないと」 2013/9/20 11:54
読売 麻生氏、法人税の実効税率引き下げに否定的 2013年9月19日09時24分
朝日 賃上げ·雇用増で法人税減税拡充 政府、消費増税で検討 2013年9月18日6時53分
朝日 法人減税、政府を二分 甘利氏検討明言、麻生氏は反対 - 2013年9月13日23時40分
それにしても、法人税減税が賃金値上げに効果的というウソと消費税による経済対策にとって不可欠というスリカエを言えないような状況、国民的合意をつくりだしていく必要があるように思います。
そこで、法人減税に反対ではないけれども米倉経団連などが主張する、口実とする「日本の法人税が諸外国と比べて高い」論について、反対主張をしている人のブログがありましたので掲載しておきますので、以下をご覧ください
<form>日本企業の法人税等の負担は本当に重いのか?
http://kitanotabibito.blog.ocn.ne.jp/kinyuu/2013/08/post_ef13.html
…私は法人税の引き下げに反対するものではないが、「日本の法人税は国際的に見て高い」という意見は余りに表面的過ぎると考えている。企業はモノやサービスを生み出し、従業員に給料を払い、国や自治体に税金と社会保険料を払うことで国民の福祉に貢献している。消費税の引き上げと同時に法人税の減税を行うなら、企業はそのメリットを社会に対してどのように還元するのか示していく必要があるだろう。(引用ここまで)
また共産党の佐々木憲昭さんの主張がマスコミに取り上げられれば、もっと違った展開になることは明らかです。ここでも成熟した民主主義国ニッポンの最大の欠点が見えてきます。
【13.09.21】安倍総理はどこまで日本経団連の言いなりなのか!
【13.09.15】減税で賃金が引き上がるのか?(facebookより) (facebookページより、奮戦記)
</form><form></form>【13.09.12】誰のための消費税増税か(twitterより)
ところで、法人減税は、90年代から行なわれていました。その効果は、賃金が上がったなどというものでは、さらさらなく、巨大な内部留保の蓄積と現金の蓄えにまわされていたのです。いろいろな口実をつけて。しかし、今、財界・政府・マスコミはそのことを覆い隠しているのです。こうした大ウソを撒き散らしているからこそ、安倍首相や米倉経団連会長などの大ウソ発言を許しているのです。このことは財務省のHPを見れば明瞭です。ご覧ください。
一般会計税収の推移と法人税収、消費税収入の推移一覧
http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei/04.htm
所得税収入 S61 16.8兆円 H03 26.7兆円 H23 13.5兆円
法人税収入 S60 12.0兆円 H01 19.0兆円 H23 7.8兆円
法人税率 H01 40% H02 37.5% H09 34.5% H10 30.0%
消費税収入 H01 3.3兆円 H09 9.3兆円 H23 10.2兆円
消費税率 H01 3% H08 5%(引用ここまで)
政府の「減税政策」を批判する 憲法の原則に逆行する危険な流れ-日本大学法学部教授 北野 弘久
内部留保を雇用になぜ活用しないのか。 駒深大学小栗崇資教授
大手30社の「内部留保」ため込み加速! 1年で6兆円増 - 経済·マネー ...
大企業の内部留保 1年で10兆円超増/トヨタ8300億・三菱UFJ6000億・ソフトバンク4000億/月1万円賃上げ 数%で可能 [2013.6.5]
大企業の内部留保の一部活用で/月1万円賃上げ可能 [2013.1.7]
法人減税が企業の、しかも大企業・多国籍企業の内部留保と株主の配当金に回されていることは明らかな事実です。しかし、このことは自己責任論を撒き散らすことで、回避されています。防災や社会保障について、自助・共助・公助がキーワードとなっていることも、国家や行政の責任回避の典型です。このイデオロギーが日本国中に撒き散らされていることに、安倍首相や米倉経団連の言いたい放題、やりたい放題の最大の背景と責任があります。
労働者や国民が必死になって働き、生産し、つくりだしてきた「価値」カネを特定の団体や個人が囲い込むことで、還流できなくなってしまっている社会が、現在の日本です。溜め込んだものは吐き出し、全国民が使うことで、企業に還流されるのです。
まさにカネは天下の回り物です。企業の証券報告書や株主総会提出文書などに書かれているガバナンスに、必ず書かれているステイクホルダーの利益尊重主義です。お客様は神様主義です。この思想が欠けているのが、日本の財界・多国籍企業といえます。勿論安倍首相も、です。そういう意味では極めて不道徳的といえます。以下の記事をご覧ください。
消費税増税を煽る全国紙が絶対にメスを入れない内部留保!共産党だけではないぞ!目を開けろ!その2(2013-08-13 19:29:58 )
消費税増税を煽る全国紙が絶対にメスを入れない内部留保!これでは財政危機の荒療治はできません!その1(2013-08-13 19:25:33)
安倍首相が消費税増税を「決定」するに至った経過について、朝日が記事にしていますので、ご覧ください。最大のポイントは、以下の言葉にあります。「ただ、企業減税を突破口に賃金引き上げにつなげる「好循環」を狙う首相のシナリオが、本当に実現するかはこれからだ」と書く朝日のスタンスは明確です。
「首相のシナリオ」とは「消費税増税」に他なりません、それが「本当に実現するかはこれからだ」と激励するのです。しかも「企業減税を突破口に賃金引き上げにつなげる」と「賃金値上げ」のための「企業減税」というのです。この関係を「好循環」とするのです。呆れます。事実も歯車も違っています。消費税増税のための「本丸」は「法人実効税率の引き下げ」と「企業向け減税」によって「将来の賃金増や雇用拡大を促す」という訳です。
逆に言えば、「法律どおり」実行する消費税増税は、企業のための「減税」ができなければ、賃上げも雇用も不可能とい思想です。この「好循環」ができなければ政権も危ぶまれるという思想です。だからこそ、「首相は1ミリもぶれなかった」というのです。
「消費税率の引き上げはデフレ脱却と財政再建の両立という道筋が確かなものかをしっかりと見極め、判断したい」と言いながら、すでに結論は出ているのです。だからこそ、付則18条を自分の都合の良いように解釈して、そのツジツマを合わせるために企業減税の断行を1ミリもぶれ」ずに断行するのです。しかし、消費税増税は、家計の懐を冷やし、購買力を低下させます。しかも減税で増税分を賄うのです。或いは国債を発行するのです。財政再建などできるはずはありません。矛盾だらけです。支離滅裂です。
朝日21日付 2面 法人減税に首相固執
安倍晋三首相が来春の消費増税を決断した。アべノミクスで好転した経済の腰折れを防ぎ、さらに上向かせようと、首相は最後まで法人実効税率引き下げへの道筋づくりを譲らなかった。ただ、企業減税を突破口に賃金引き上げにつなげる「好循環」を狙う首相のシナリオが、本当に実現するかはこれからだ。▼1面参照
「賃金波及」好循環狙う
「民主、自民、公明の3党合意のころの経済状況で本当に増税できたのか。だれがここまで環境を整備したというのか」
20日、首相官邸で昼食をともにした首相と菅義偉官房長官はこんな話題で盛り上がった。3党合意に基づき消費増税法が成立した昨年8月、日経平均株価は約8900円。いまや1万5千円台に届こうとする状況に、首相は「長引くデフレ脱却に道筋をつけられるのはアベノミクスしかない」と自信を深めてきた。消費増税に備えた経済対策の策定にあわせ、アべノミクスの成長軌道を確かにするための「矢」を仕掛ける。それが首相と菅氏の狙いだった。首相は家計を下支えする財政出動だけでなく、「アベノミクス税制」(政権幹部)実現を目指した。その「本丸」が法人実効税率の引き下げだった。企業を優遇して家計支援を後回しにすると批判されても企業向け減税に踏み切り、将来の賃金増や雇用拡大を促すことにこだわった。
首相は今月9日、4~6月期の国内総生産(GDP)2次速報値の上方修正を受け、経済指標面で増税の環境が整ったと判断。
翌10日、麻生太郎財務相と甘利明経済再生相に経済対策のとりまとめを指示し、こう強調した。「消費税率の引き上げはデフレ脱却と財政再建の両立という道筋が確かなものかをしっかりと見極め、判断したい」
これに対し、財務省は一時的な財政出動でしのごうと、早い段階で「補正予算と減税策を組み合わせて5兆円規模」のカードを切ったが首相は規模感に見向きもせず、財務省側は真意を見誤った。ここから焦点は、法人税の扱いに絞られた。
首相は18日、麻生氏との協議で企業への復興増税を来春に1年前倒しで終了すると確認。法人実効税率に切り込む端緒が開かれた。2015年度以降、さらに深掘りできるか。首相は菅氏との昼食から3時間後、最後の攻防に臨んだ。
木下康司事務次官ら財務省幹部はその直前、官邸内の麻生氏の部屋で作戦会議を開催。麻生氏は、復興法人増税の1年間の税収9千億円分を譲歩するところまでは幹部らを説得した。ただ、麻生氏と財務省幹部も、15年度以降の法人実効税率の一段の引き下げについては、「検討」の線を譲らなかった。財政健全化目標の達成が難しくなるため、この秋に減税幅や開始時期を明示するのは無理との立場からだ。財務省幹部は「この一線を越えたら国際公約を果たせなくなる。首相も理解してくれる」と期待をつないだ。
午後4時18分、首相は麻生、甘利両閣僚を執務室に呼び入れた。財務省幹部から説明を受けた後、首相はこの場で財務省幹部や麻生氏に言質を与えなかったものの、ただちに確定できない法人税の減税時期や幅については来年末の税制改正大綱に向け議論を深めることで折り合う意向を固めた。「検討」どまりとは言え、法人税引き下げが盛り込まれることに、政権幹部は「財務省の言いなりにはならない。首相は1ミリもぶれなかった」とみる。復興増税終了で実効税率引き下げに切り込み、さらなる引き下げへの道筋もつけられた―。首相はこう判断し、消費増税を決断した。(引用ここまで)
つづく