問題アリの消費増税を「中止しろ」とは主張しない朝日は、「安倍晋三首相が来春の消費増税を決断した。アべノミクスで好転した経済の腰折れを防ぎ、さらに上向かせようと、首相は最後まで法人実効税率引き下げへの道筋づくりを譲らなかった」と、増税に対する「懸念」「不安」をサラッと書いています。ここに大ウソが隠されています。
これは、GDP上方修正によって好転したはずのアベノミクスは、実は極めて不安定だからこそ「経済の腰折れ」という「懸念」「不安」と法人減税という大盤振る舞い・ばら撒き政策を言わざるを得ない自己矛盾を覆い隠すのです。しかし、ここに、ウソの上塗りに終始する無能ぶりがますます浮き彫りになってくるのです。この無能ぶりは、あの大東亜戦争における南洋諸島の攻防にあたって東條政権が行なったその場しのぎのツギハギ対応と同じです。
消費税増税を決断する条件としてあげている以下の経済指標についても、安倍自公政権やマスコミが正当化すればするほど、化けの皮が剥がれてきます。
GDP上方修正 消費増税、条件はクリア 1年半ぶり設備投資増 個人消費 ...
朝日新聞デジタル:安倍首相、増税指標クリアと判断 GDP上方修正で ...
マスコミは内閣府の発表したGDPを増税の追い風として煽っていますが、これは「大捷」と大ウソ発表をして帝国臣民を扇動していた大本営発表と同じです。国民にしても、配給制度や高齢者が戦場に送られる実態をみていて、心の底から大本営発表を信用していなかったことと、どこかで似ています。
世論調査で増税反対派が多いこと、アベノミクスの効果が感じられていないことをみれば、明瞭なのです。増税で盛り上がっているのは、大本営発表を鵜呑みに報道するマスコミだけでしょう。以下ご覧ください。
増税に読売が慎重になっているのは、安倍自公政権擁護の立場からです。ここに国民生活と安倍自公政権の矛盾が象徴的に現れています。これに失敗すれば、政権交代の嵐が起こる可能性、というよりも、自公政権と二大政党政治勢力を木っ端微塵に倒していく暫定救国国民連合政権の樹立の可能性が浮き彫りになってくるという「懸念」「不安」があるのだと思います。
五輪決定とGDP上方修正、消費増税の決め手にはならず| Reuters
…一方、甘利経済財政相は安倍首相が予定通り消費増税の決断をする場合は、経済の悪影響への対応策をまったく指示しないことはないと指摘。その規模について、財務省が駆け込み需要の反動減と試算する2兆円弱では「(反動減の)埋め戻しにしかならない」とし、日本経済を成長軌道に復帰させる方策も合わせて2兆円を超す対策が必要になるとの見方を示した。自民党の野田毅税調会長も、消費増税によるGDP抑制効果が2兆円程度との試算があると指摘した上で、その一部は補正予算も含めて対応する、との考えを示している。(引用ここまで)
読売社説 GDP改定値 肝心なのは成長の持続力だ 9月11日付
成長率は1~3月期の4・1%に続き、4%前後の高水準を維持した。日銀の「量的・質的金融緩和」や政府の緊急経済対策など、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が奏功したのだろう。 4~6月期のGDPは、消費税率を来春に5%から8%に引き上げるかどうか、安倍首相が判断する大きな材料となる。甘利経済財政相は消費増税に向けて「好材料が一つ追加された」と述べたが、油断は禁物だ。設備投資は増加したとはいえ、小幅にとどまっている。足元の高成長は経済対策などで底上げされており、政策効果が出尽くせば急ブレーキがかかりかねない。重要なのは民間主導の力強い成長を実現することだ。首相は10月1日にも消費増税の判断を示すという。日本経済が増税に耐える体力を回復したかどうかは、まだ不透明だ。デフレ脱却を最優先し、来春の消費増税は見送るべきである。(引用ここまで)
もう一つ大ウソを強調しておかなければなりません。それは消費税増税の前提である「付則第18条」に明記された「経済状況」の大ウソを黙殺して、「法律どおり」と繰り返す大ウソです。しかし、その枕詞も大ウソであるたことが判ります。以下ご覧ください。
消費税増税を法律に従ってとごまかすマスコミに大喝!消費税増税は憲法違反だということをもっと叫ぼう!(2013-09-11 23:40:48)
焦点となった景気条項「消費税引き上げ法案付則第18条」に仕掛けられ ...
そこで政府は「目標達成に必要な措置を講じさえすれば、経済状況をみて引き上げを実施できますよ」という解釈が成り立つ。つまり、もっともらしい成長政策を掲げて予算化すれば、目標成長率を達成しなくても「必要な措置は講じた」のだから、それで十分という話だ。玉虫色なのだが、あれだけ数字を明記することに反対していた野田と財務省にしてみれば、やはり妥協に追い込まれたとみていい。この景気条項をどう読むかという論点は、いずれにせよ国会で与野党論議の火種になるのは間違いない。…実際に引き上げるのは野田政権ではない可能性が高いので、この部分をどう解釈するかは今国会以降も引き継がれるはずだ。つまり、この法案が仮に原案通り可決成立したとしても、引き上げ実施にハードルが残った形になった。反増税派がとりあえず反撃のとっかかりを残したと考えれば、今回の決着はそう悪くもない。(引用ここまで)
以上の指摘が、今日の「攻防」「混迷」「大ウソ」を作り出しているのでしょう。しかも、朝日の「今後は、増税による景気落ち込みを防ぐことができるか」という「懸念」、大ウソは、アベノミクス成長戦略断行のためにつくりだしたマネーゲーム主導による、「実体経済」という点からみても問題アリの、「バブル効果」が背景にあります。こうした状況をうけて読売が慎重になっているのです。以下ご覧ください。
長谷川幸洋「ニュースの深層」 消費増税+経済対策という財政政策の矛盾を、「声なき国民」はどう評価するか (2013.09.20)
…官邸と財務省の攻防は、それほど激しくなっている。 関係者によれば、財務省の田中一穂主税局長はこれまでの調整で、官邸に対して減税に実質ゼロ回答を提示した。これに対して、安倍首相が「ふざけるな! 顔を洗って、もう一度出直せ」と一喝した場面もあった。官邸と財務省の攻防は、それほど激しくなっている。安倍が怒ったのには、わけがある。実は、財務省が手にする新たな財源は消費税引き上げによる8兆円だけではないのだ。昨年11月以来の円安株高効果があって、ことしの税収が前年実績より、もう4兆円も増えている。景気が良くなると、赤字企業が黒字に転換したりして、法人税などはすぐ増えるからだ。いわゆる自然増収である。つまり、いま現在で計12兆円もの増収効果を計算できるのだ。年度末になったら、もっと増えるのは確実である。この増収分を財務省はまったく手放そうとしない。安倍からみれば「4兆円の自然増収はいったい、だれのおかげか。アベノミクス効果だろう。財務省は増税を言うだけで、自分たちが自然増収を目指す政策を考えたことがあるのか」という思いであるに違いない。5兆円の減税論には、増税抜きでも4兆円の増収という根拠があるのだ。(引用ここまで)
安倍自公政権の致命的欠点は、国民生活向上、国民に飯を喰わせているかどうか、なのです。そのことは朝日自身が述べていることです。しかし、朝日は増税中止を言わないのです。アベノミクスに批判的なことを言いながら、実は応援記事を書くのです。ここに朝日の姑息があります。
つづく