迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

一炊無限。

2023-02-20 19:05:00 | 浮世見聞記


薬罐の水が沸くまで間、二つに折った座布團を枕にして、軽く目をつむる。



誰かが私に、ちっとも締まらない帯で衣裳を着せやうとしてゐる。

とても古典物向きではない鬘をもって来て、今は亡き脇役の名を出してその人の指導によるものですと、私の頭にのせる床山(鬘師)がゐる。

遠い昔に同じ釜の飯を食ったと云ふだけの出世魚が、なにかブツブツ言ひながら御手洗へと入って行く。

間もなく出番だと云ふのに、段取りも呑み込めてゐなければ、聲も出ないでゐる。

誰かが向ふで、「そんな踊りはないよ」と抗議してゐる。



薬罐の笛が鳴って、目が覺める。

とんだ一炊の夢。


沸いたお湯でつくったラーメンは、

もちろんおいしかった。


當り前だ。

つくったのは私だ。








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