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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

明治150年の色彩藝術。

2019-01-24 18:26:25 | 浮世見聞記
東京都北区王子にあるお札と切手の博物館で開催中の、「お札の色 切手の色~偽造を防ぐ技と美~」展を見る。


私のやうな弱小庶民はいつも泣かされてゐるお金、

ヒラヒラと、見へない翼が生へてゐるらしい紙幣──


“カネは仇”と叫びたくなる紙幣だが、それら一枚一枚は明治以来150年にわたる高度な印刷技術の結晶であることが、よくわかる特別展。


紙幣の印刷技術を高水準たらしめたのは、天敵“偽造紙幣”の存在だ。

明治150年の紙幣の歴史は、すなはち偽造紙幣との戦ひの歴史でもある。


機械でつくられたものは、その機械と同じものを作ることにより、簡単に偽物がつくれる。

しかし、その職人にしか出来ない技で編み出されたものは、なんぴとたりともそれと同じものを編み出すことは、不可能である。


そこに、偽造を防ぐ極意がある。


そしてその極意を強化したのが、インキだった。


偽物では決して作り出せないインキの開発は、そのまま他に真似手のいない美しい色を生み出すことへとつながっていった。


そのインキを繊細に用ひて刷られた紙幣は、絵画作品とはまた違った色彩美を放ち、天敵とは常に一線を画してきた。



『インキ製造にあたっては、色彩の美しさはもちろんのこと、当該部門の第一の使命は偽造防止の技術を尽くし、堅牢不滅のインキを製造することである。

第二は、最良の色彩を究めることである。常にこれらを留意すべし』──



これらを踏まへ、改めて手許にある現在の紙幣を見てみると、紙幣は隠れた高級な“藝術品”であることに気が付く。


それが、身近すぎるがゆゑに、私たちはその素晴らしさに気が付かないでゐる……。


「お金は大事にしなければ……!」

意外な方向から、そのことを教へられた特別展だった。
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