「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

インドネシアの海難事故と興安丸

2007-01-05 07:07:42 | Weblog
カリマンタン(ボルネオ)とジャワを結ぶ定期フェリーが旧冬29日深夜
悪天候の中ジャワ海で沈没、いまなお400人以上行方不明だという。
一方、1月2日、ジャワのスラバヤからスラウェシのマナドに向かったア
ダム航空575便が、これまた悪天候の中で墜落、依然、乗客乗員10
5人が行方不明だ。

沈没したフェリー(2,178㌧)は1990年に日本で建造された中古船だと
いう。就航してから17年経っているが、インドネシアではまだ新しい部類
である。人の住む島だけで1万8千の他島国家では、船舶は住民の生活
にとって不可欠な交通手段である。

僕がインドネシアに勤務していた40年前は、今よりも船舶事情は悪かった。
インドネシア政府は新規に建造する資金がなく、日本の船会社から興安丸
(7,130㌧)をチャーターしてスマトラ航路に就航させていた。あの”岸壁の母”
で有名なかっての引揚船である。興安丸は昭和11年関釜連絡船として建
造され、戦中は病院船として、また戦後は引揚船として大車輪の活躍して
いた老朽船である。当時すでに船齢は30歳を越えていた。

僕もスマトラのメダンからジャカルタの外港、タンジュン・プリオクまで興安丸の
お世話になりマラッカ海峡を渡った。船長はじめ船員はすべて日本人、規律
正しく運航されていた。

インドネシアでの海難事故は珍しくない。ジャワ海の事故の前日にもスマトラ島
沖で小型フェリーが沈み、10数人が行方不明になったままだ。原因はなんだか
わからない。小さな事故は新聞にも載らない。人命の価値は、この国ではわが
国と違うのだろうかー。