「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         落梅  MOTTAINAI世代

2008-06-09 05:58:00 | Weblog
梅雨の合間をみて、昨日、わが家では庭の梅の実の収穫をした。15年前家を新築
したさい植えた梅の木だが、こんなに取れたのは今年が初めてだ。なんと18キロも
あった。でも、老妻にとっては、これでも十分ではないらしい。高台の隣家の木から
落ちて舗装道路に散らばっている実まで拾ってきた。そして”これは梅干用””これ
はジュース用”と選別に忙しい。

僕ら老夫婦は二人とも後期高齢者で、二つ違い。あの物のなかった時代の共通体
験がある。しかし都会育ちの僕と田舎育ちの老妻との間には”MOTTEINAI"につい
て温度差があるようだ。僕はとても道に落ちている梅の実などみっともなくて拾えな
い。家でもたくさん取れたし、店へ行きおカネを出せばいくらでも買える。

島崎藤村の歌集に「落梅」集がある。”小諸なる古城のほとり・・・”などの歌を収めた
歌集である。なぜ藤村が「落梅」という名を冠したのか寡聞にして知らない。しかし藤
村と同郷の老妻が道に落ちていた梅の実を拾ってくる気持ちはわかる。

近くの農家の無人スタンドでは1キロ500円、スーパーでは980円で梅の実を売ってい
た。わが家で収穫した梅の実は18キロ。スーパー価格で計算すると17640円の収入
ということになる。さらに老妻は僕に鑑賞させようというつもりか、40粒ほど実がつい
た梅の小枝を部屋に運んできた。僕は夜、泡盛に梅干をいれて陶酔となったが、藤村
のような詩情は浮かばなかった。